謁見の間
今、ソフィアの目の前には、このトウイの国の帝王と呼ばれるスサノ帝が玉座に座っている。濃紺の作務衣の上に羽織をまとい、見た目はとても質素な装いの王であった。しかしその姿は座っていても偉丈夫である事がよく分かる程の恰幅の良い身体つきであり、この国の他の三人の王を従える『王の中の王』と言われるだけあって身体からにじみ出る威圧感は隠しようがなかった。
ここはスサノ帝が住まう館であり、ソフィア達はその『謁見の間』に居た。
玉座はソフィアが居る広間より一段高い造りの上座にある。その上座の中心に置かれた質素ではあるがこの国の職人が腕によりをかけて作り上げた神木製の玉座に座り、スサノ帝は今ソフィアと対面していた。
ソフィアにはこの『謁見の間』にある全てが、『質実剛健』というこの国の空気を表しているように思えていた。
この場にいるソフィアはいつもの冒険者のいで立ちでは無く、モルタリア帝国騎士団の礼装である濃紺のマントを着用していた。皇女殿下であり魔導学校を卒業したソフィアは帝国騎士団の礼装をまとう事を許されていた。マントの胸には騎士団の紋章が誇らしげに縫い付けられていた。
彼女は玉座の間から一段下がった床の広間に背筋を伸ばして胡坐をかいて座っていた。すぐ右横には広間に通されるまで被っていた羽根つきの帽子と、真刀斎から贈られた彼女の刀が置かれていた。
彼女の両隣には少し下がってシバとアキトが同じように胡坐をかいて座っていた。彼らはいつもと同じ格好であり、『謁見の間』に居るという緊張感など微塵も感じられなかった。
そしてこの三人から少し離れて、両側から囲むようにこの国の重鎮たちが並んで座っていた。
今回のソフィアへの招へいは『国賓』とは言わないにしても、トウイの国の大王からの正式な招待である。それは冒険者ソフィアへではなくモルタリア帝国の第一皇女殿下ソフィアへの招待を意味する。故にそれなりのふさわしい服装を求められる。ソフィアはそれをちゃんと自覚していた上に、今の冒険者という自分の立場も考えて、ドレスではなく騎士団の礼装を選んだ。
シバはソフィアのその姿を頼もしそうに見つめながら
――別当の八雲さんだけでなく、今日は執権さんも将軍さんも御列席か……本当に仰々しいな。ま、公の場だからな、仕方ないか――
とさりげなく周りの状況を確認していた。
「よくぞ参られた、モルタリアの姫よ」
とスサノ帝が重々しい声でソフィアに声を掛けた。
「本日はお招きいただき、光栄でございます」
とソフィアは堂々と挨拶を返した。
――流石は皇女殿下だな。こういう場は慣れている――
その情景を見ながらシバは数週間前の事を思い出していた。
2026.09.03 誤字修正




