迦炎との思い出
シバとアキトが初めてこの国へ訪れた時に何かと世話を焼いてくれたのが、この炎杜家の人間たちであった。
ずかずかと姫巫女の住まう神殿に上がり込み、『翡翠』とひと悶着起こした時も、とりなしてくれたのがこの炎杜家の家長とその息子であった。
この国の高官に対してシバ達を援護してくれたのが、別当職の副島八雲とこの炎杜伊織親子であった。
ある意味この国の王たちよりも国民から尊敬されている姫巫女である。知らぬとはいえ笑って許せる行為でも無かった。
それを最後まで粘り強くシバ達を擁護してくれたのも彼らであった。
それ以来、亡くなった息子の迦焔とシバたちは同い年というのもあって気が合った。
そもそもシバやアキトが、ミカサの乗組員以外とこれほど気が合う事は珍しい事だった。三人はよく居酒屋で酒を酌み交わしたりもしていた。
炎杜家や忌火の職人達が扱う神の領域の火『御神火』とは、魔導士が生み出す『魔法の火』とは違うものであった。
『魔法の火』は魔導士たちの魔力やマナから生み出されるものであるが、『御神火』は聖樹海や霊峰サザンを通る霊脈を通じて得た神の権能を有した聖なる炎であった。
因みにこの聖樹海の神獣たちが行使する魔力は、この神の霊力を享受する事により発揮する事が出来ていた。
その炎の力はこの土地を潤し慈しみ護るものであった。しかしひとたび神の怒りに触れるとそれは防御不可能な絶対的な力となって襲い掛かる事になる。
ある日、シバとアキトは迦炎から
「お前達ならこの火も扱えるんじゃないのか?」
と『神の領域の火』を教えて貰った。この炎に関しては門外不出と言う前提になっていたが、それは建前だった。そもそもこの『神の領域の火』を扱う事が出来るのは、神獣の妖力を持つ炎杜家にだけ可能な行為であったので、敢えて隠す必要もなかった。
迦炎は自らこの『神の領域の火』の波長が二人の魔力の波長と似ている事に気が付いた。そこで二人に提案してみたという事だった。
炎杜家は霊脈からこの『神の領域の火』を吸い上げるが、迦炎はこの二人にもそれが出来るかもしれないと考えたのであった。
と同時に
――もしかしたらこの二人は、この『神の領域の火』の力をもっと引き出せるかもしれない――
と迦炎は考えていた。
その後、シバとアキトはそれをヒントに、似た力『神之怒』という究極の力を生み出していた。もっともこれは攻撃にしか使えない魔法であったが、その威力は『神の領域の火』の力に匹敵していた。
ちなみに『神之怒』と命名したのはアキトである。勿論、転移前に見たアニメからのパクリであった。
そんな経緯もあり、シバには思い入れの深い炎杜家であった。




