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皇女殿下の飛空艇~皇女殿下は鬼畜な艇長にしごかれています~  作者: うにおいくら
第11章 参道の少女

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炎杜家

 トウイの国では年の暮れを迎えてから、大寒波に見舞われていた。


「今日も雪か……やはりこの大寒波には、何か邪気を感じるのぉ……」

雪が舞う空を見上げながら炎杜(えんず) 伊織(いおり)は呟いた。ここ数日、一時(いっとき)も止む事なく雪は降り続いていた。


 その絶え間なく降りそそぐ雪を仰ぎ見る彼の短く刈った髪のほとんどは白く、目じりの皺はこの男のこれまでの人生の歴史を刻んでいた。


 炎杜家とは『火の精霊の血を引く家系』と伝わっており、代々の家長は『忌火(いみび)の職人の長(おさ)を継ぐ家系であった。


 彼は暫く格子の窓から外を眺めていたが


「今日はまだ吹雪かなくて良かった……か」

と半ば諦め気味に再び呟いた。


 そこへ孫娘の千灯(ちひろ)がやって来て


「おじい様、シバ殿がおみえになりました」

と告げた。


「うむ」

と炎杜伊織は頷くと窓から離れ、客間へと向かった。


 和室の客間の障子を開けると、そこにシバが一人胡坐をかいて座っていた。


「ご無沙汰しております」

とシバは座ったまま両手を畳に付けて頭を下げた。


「いえいえ。こちらこそご無沙汰致しております」

と炎杜伊織は上座に座りながら頭を下げた。

そして


「この前は西側諸国の産物を届けて頂きかたじけない」

と礼を述べた。


 シバは今回のトウイの国を訪問してすぐに、長に手土産を送り届けていた。表向きはその返礼の手紙を受けての訪問であった。


「いえいえ。つまらないものですが、久方ぶりにこの国へ参ったので……。ところで今の方は?」

とシバは今しがたシバを客間まで案内してくれた千灯の事を聞いた。


「ああ、あれは儂の孫娘の千灯です」

と伊織は孫娘が閉じた障子を目にして言った。


「迦焔(かえん)殿の?……」


「うむ。あれの娘です。十歳になりますかな……」

と言って伊織は目を細めた。シバ達がこの国を出た後、千灯は生まれた。シバは彼女に会うのは今回が初めてだった。


「やはり、そうでしたか……それにしても本当に残念でなりません」

とシバは辛そうな表情を見せた。


「ありがとうございます。でもこの件だけは、仕方ありますまい」

と伊織は表情も変えずに首を振った。


 三年前の事であった。このトウイの国を護る守護神獣迦具土(かぐつち)が突如暴走した。

原因はこの地方を襲った巨大地震だった。その被害は甚大で、この国の建物のほとんどが倒壊するような状況だった。勿論聖樹海・霊峰サザンも無事では済まなかった。樹海の森は地割れを起こし、霊峰もいたるところで崩れ落ちていた。

その上、結界も破れた。それらの影響を受けて霊峰サザンに眠っていたこの神獣が呼び起こされてしまった。眠りを妨げられて怒り狂った神獣は、暴れまくり手当たり次第に燃やしまくった。


 それをこの忌火(いみび)の職人の長である炎杜伊織は、後継ぎである一人息子の迦焔(かえん)と共に収拾に向かい、『忌火』の妖力を用いその怒りを収めたが、それは己の血と寿命と息子の命を代償に支払う事となった。


 勿論シバはその当時この災害を知る由もなく、今回のトウイの国への来訪で初めて知ったのであった。


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