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皇女殿下の飛空艇~皇女殿下は鬼畜な艇長にしごかれています~  作者: うにおいくら
第10章 姫巫女様の住む聖樹海

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眷属へ

 ソフィアはその杯を両手で支えるように持ち


「神の御稜威(みいず)を戴(いただ)き、我いま姫巫女の『贄(にえ)』にして『牙』とならん。身を焦(こ)がし、影と随(したが)いて、神の御意志(みいし)を執り行わん!」

と宣誓した。


 その言葉を姫巫女は聞き終わると静かに頷き杯を両手で掲げた。同じようにソフィアも杯を掲げると、二人同時にその杯の神酒を飲み干した。

その瞬間ソフィアの右手の甲に姫巫女の御印(みしるし)である神の刻印が浮かび上がった。


 それを確認すると四人目の守護巫女が姫巫女から髪飾りを恭しく受け取り、それを持ってソフィアの前に正座した。無言でソフィアの右手を取ると、光る甲の上にその髪飾りをそっと置いた。


 するとその髪飾りの真ん中に嵌め込まれていた聖樹神那木(カムナギ)の結晶が、強烈なエメラルドグリーンの光を放った。それはすぐに収まり淡い光へと変わった。


「これはわらわの髪飾りと同じものです。この聖樹神那木の結晶の輝きは、そなたがわらわの眷属となった証です」

とソフィアに語り掛けるように言った。


 それを受けてソフィアは


「はい。謹んでお受けいたします」

と頭を下げた。

五人目の守護巫女がその髪飾りを手にすると、ソフィアの長いストロベリーブロンドの髪をそれで束ねた。


 その様子を『翡翠』と『白銀九尾』は草庵の縁の板間で座って見ていた。

『白銀九尾』は『翡翠』に


「これであんたが姫巫女様の御命を心配する事はなくなったね」

と安堵したように声を掛けた。


「うん。でもこの世で、その魔力量を持ってしても倒せないオッサン二人が目の前にいるけどね」

と『翡翠』は諦め顔で言ったが、先ほどまでの思い詰めた表情ではなかった。


「あ、あれは別格だからね。あれらは数に入れたらだめな奴だからね」

と『白銀九尾』もそれに同意するように何度も頷いて言った。


「そうだったね。それは考えない事にしておくよ」

とこの幻獣二匹は儀式を終えた姫巫女とソフィアを見つめながら安堵したように会話を続けていた。


 その二匹の幻獣の背後にいつの間にか近づいてきた黒い影から


「さっきから黙って聞いていたら、『あれ』とか『それ』とか人をバケモノ呼ばわりしていないかい?」

と声が聞こえた。


 黒い影はシバとアキトだった。

あれ呼ばわりされたオッサン二人に見下ろされて慌てる幻獣二匹に


「本当に失礼な奴らだな。ちょっとあちらでゆっくりと話をしようか?」

とアキトが声を掛けた。


「いや……あの……」


「はいはい……悪いようにしないからね。見解の相違は今の内にすり合わせておかないとね」


「そうそう。間違った認識は改めて貰わないとね」

とシバとアキトに首根っこを押さえられた幻獣たちは、為す術もなくいずこへと消え去って行った。


「大丈夫なんでしょうか?」

と心配そうに聞くソフィアに


「大丈夫でしょう。たまにはあの者たちにはいい薬になるかもしれません」

と姫巫女は静かに笑って言った。


 草庵はいつも通りの静かな空気が流れていた。

ソフィアは『この世界に転生してきた事』を初めて実感していた。皇族に生まれ宮殿で過ごし、何の不自由もない代わりに何の自由も無かった人生を送っていたが、シバ達と一緒に行動するようになって、やっとこの世界に転生して来た意味を知った様な気がしていた。


――私の異世界生活は今から始まるような気がする――


と連れ去られる幻獣二匹を目で追いながら、ソフィアは認識を新たにしていた。


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