ソフィアの決断
「へ?」
とシバは驚いたように間の抜けた声を挙げた。
「その代わり皇女殿下は、私の眷属になってもらう必要があるんですけどねぇ……」
と姫巫女は言った。
「ソフィアが姫巫女様の眷属になったら『翡翠』との魔力の回路は開くという事ですか?」
と聞いた。
「それは同じ眷属・従魔として私を通して開きますけど……あ!!」
とここで姫巫女にもシバの企みが理解できたようだった。
シバの考えは姫巫女だけでなくソフィアも『翡翠』とつなげて『翡翠』の行使できる魔力の幅を広げようという魂胆だった。ソフィアの魔力はもはや姫巫女に匹敵するぐらいの総量となっていた。『翡翠』がもしソフィアとつながれば魔力が一気に倍になるようなものである。
この回路が出来ればソフィアがどこにいても『翡翠』はその魔力を使う事が出来る。シバはそう考えて姫巫女に相談を持ち掛けていた。
――なるほど……そしてこの二倍になった魔力を使い切るだけの相手は、まずこの異世界に存在する事は無いだろう。ある二人を除いては……――
と姫巫女が考え込んでいた時、シバは唐突に
「ところで、さっきからなんか口調が変わって来てません?」
と指摘した。
姫巫女の口調が先ほどから少し、くだけたようになっていた事にシバが気が付いていた。
「あ! すみません」
と今度は姫巫女は声を上げて謝った。
自分が転生者という事を隠す必要がなくなった気のゆるみと、シバとの会話でシバの口調がうつってしまったようだ。
「いや、謝る必要はありません。僕は全然気にしないですから。でも姫巫女様の立場もありますからね。これは僕とアキトの二人の時だけにして下さいね」
とシバは笑った。
「そうですね。つい……。でも七百年経っても、この身体は昔の事を忘れないように出来ているみたいです」
と姫巫女もしみじみと感慨深く呟いた。
シバは姫巫女の言葉に同意するように頷くと、話題を戻すように
「ソフィアさえ姫巫女様の眷属になれば良いんですよね?」
と確認した。
「はい。その通りです……しかしそんな事をすれば……」
と姫巫女は躊躇するように首を振った。皇女殿下であるソフィアを危険な目に遭わすかもしれないと、姫巫女は危惧していた。
――自分たちの為だけに一国の皇女殿下を利用する事は出来ない――
と姫巫女は思っていた。
シバは
「まぁ、それは本人に聞いてみましょう」
と姫巫女の言葉を遮り襖を開けソフィアとアキトを草庵の中へ招き入れた。
そして今姫巫女と話した内容を二人に伝えた。
姫巫女も実は転生者と聞いたソフィアは驚いたが、同時に自分以外の転生者の存在を知って喜んだ。
「そこで姫巫女様の眷属になるとソフィアは当然の事ながら姫巫女様の力を行使する事も出来るようになる。ただ、姫巫女様と同じように『翡翠』の魔力行使の影響を受ける事になる。どうする?」
とシバはソフィアに結論を迫った。
「ま、即決は無理だと思うから、じっくりと考えてからで良いからね」
と流石にシバもソフィアを気遣ってひとこと添えたが、ソフィアは
「いえ。是非とも姫巫女様の眷属の一人にして下さい。私の魔力が役に立つなら使って下さい」
と即断した。
「え?」
とシバ、アキト、姫巫女の三人が同時に聞き返した。




