姫巫女様
「まぁ、それはいい。それとさっきのソフィアに対する威嚇は、それと何か関係があるんだろう?」
とアキトが気を取り直した様に『翡翠』に聞いた。
「うん。あるよ」
「理由を聞かせて貰っても良いかな?」
とアキトは聞いた。
「実はね。不思議な事にシバもアキトも姫巫女様と魔力の波動が似ていたんだ。でもね……全く同じではないんだ。姫巫女様の魔力とは違う微妙な異物感を感じるんだよ」
「異物感? 人の魔力を何かまがい物呼ばわりされている様で気分が悪いな」
とシバが苦虫を噛み潰したような顔で呟いた。
「ごめんよ。それ以外の言葉が思い浮かばなかったんだよ」
と『翡翠』は謝った。
「まあ、それは良い……だから、ソフィアにもそれを試すために威嚇して魔力を放出させたわけか?」
とシバが聞き返した。
「ご名答! シバとアキトが連れてくる人だからね」
と『翡翠』は嬉しそうに答えた。
「で、どうだったんだ?」
「うん。同じだった。びっくりした。姫巫女様と全く同じ波動だったよ」
と『翡翠』は興奮したように言った。
「なるほど。それはお前にしかわからない波動の違いという訳だ……」
「うん。シバの言う通りだと思う」
「魔力量も同じだと?」
「うん。全く遜色がなかったよ」
「なるほど……そういう事か……」
とひとこと言うとシバは考え込んだ。横目でアキトに視線を送るとアキトは黙って頷いた。
「分かった。じゃあ、今から姫巫女様に会いに行くか? それでいいわけだな?」
と言った。シバには『翡翠』の行動の理由が分かったようだった。同時にそれはアキトにも理解できていた。
「うん」
と『翡翠』が答えた瞬間
「その必要はありません」
と草庵の中から声がして草庵の障子が開いた。
「姫巫女様!」
と『翡翠』と『白銀九尾』は振り向くと同時に頭を垂れた。
シバとアキトも膝を地面に着き同じように頭を垂れた。
それを見て慌てたようにソフィアもシバ達と同じように膝をついた。
「よく参られました。面を上げて下され」
と優しい声でシバ達に声を掛けたのは紛れもなく姫巫女だった。
姫巫女は草庵の中で透き通るような薄緑のレース仕立ての千早を羽織り、『月光花の髪飾り』を付け、長い銀髪を後ろで緩く結んでいた。その結び目を止めるように聖樹の結晶でできた髪留めは淡いエメラルドグリーンの光を放っていた。
その傍ら、障子の影に守護巫女と呼ばれる数人の巫女が、姫巫女様を護るように正座していた。
「わざわざ草庵までお越し頂かなくても、神殿までお伺いしたものを……」
とシバが顔を上げて言った。
「いいえ。まずは『翡翠』が皇女殿下に大変無礼な行いをした事を謝らなければなりません」
と姫巫女はソフィアに向かって優し気な視線を送りながら頭を下げた。
「いえいえ。何も気にしておりません。それよりも、とっても可愛い従者様ですね」
とソフィアは恐縮しながら答えた。
「そう言ってもらえると助かります」
と姫巫女は微笑んだ。




