幻獣エルド・ヴェルデ
驚いたソフィアは思わず後ろに飛びのいて剣に手を掛けて身構えた。
一気にソフィアの魔力が全開でこの草庵前の広場に満ちた。
その拡散した魔力を見切るようにエルド・ヴェルデはソフィアを見つめると元の大きさへと戻った。
そして驚くソフィアに突然飛びついた。
「ソフィア~~!」
と可愛い声を発しながら。
驚きながらソフィアは幻獣を抱き留めたが
「なんなのぉ? でも、やっぱり可愛い!! モフモフするぅ」
とソフィアは奇声を上げながら頬ずりした。さっき身構えた事など忘れたように。
その様子をシバとアキトは呆れたような表情で眺めていた。
暫く幻獣とのモフモフを満喫したソフィアは、幻獣を抱きかかえたまま腕を前に伸ばし、自分の顔の前に持ってくると
「エルちゃん可愛い!! なんなのさっきの変身は?」
と更に奇声を発しながら聞いた。
「エルちゃん??」
とシバとアキトは同時に叫んで顔を見合わせた。
常識知らずとはよく言われた二人であったが、流石に幻獣をちゃん付け呼ばわりした事は無かった。
それを一国の皇女殿下があっさりとやってしまった。
しかし幻獣『エルド・ヴェルデ』は怒った素振りも何も見せず、明らかにそれを喜んで受け入れているようだった。
「まぁ……気に入られたようだね」
とシバは呆れながらも安堵した様な表情でソフィアに声を掛けた。
「そうなんですか? それなら嬉しい」
とソフィアは満面の笑みを浮かべて改めて幻獣を抱きかかえた。
「因みにその幻獣『エルド・ヴェルデ』には姫巫女様から『翡翠』と名を授けられているよ」
とシバは教えた。
「え? そうなの? ひいちゃんね」
とまたもやソフィアはちゃん付け呼ばわりした。
しかし『翡翠』はそれを気にする素振りを見せずに
「うん。そうだよ」
と心地よさそうな表情を見せて言った。そしてソフィアの肩越しにシバに
「ソフィアには姫巫女様と同じ魔力の波動を感じるよ」
と言った。
「同じ波動? どういう事だ?」
とアキトがその言葉を聞き留めて『翡翠』に尋ねた。
「うん。この世界の人間の魔力の流れとは違う。どちらかと言えばシバやアキトに近い……でも、それとも違う……姫巫女様と全く同じ流れを感じるよ」
「そうか……魔力の波長が違うのか……なるほど……そういう事か。で、それはそうと何故お前がここに居る?」
とシバは『翡翠』の言葉に何かに気が付いたようだが、それには触れずに詰め寄るように聞いた。
「へ?」
と反応した『翡翠』は明らかに焦りが見えた。
「この聖域の結界を護るお前が、『何故ここに居る?』 と俺は聞いている。今の時期は『白銀九尾』がこの草庵に居るはずだろう? 奴はどこへ行った? それにお前はいつもは神殿で姫巫女様のそばを片時も離れる事がないはずではないか?」
とシバは『翡翠』に詰め寄った。




