聖樹海の森へ
樹海に入って暫く経つと三人は、濃い緑の光と影に包まれていた。その事に気が付いたソフィアが
「なんだか別世界みたい……」
と呟くように言った。
「この聖樹海の事は大陸にも伝わっていて、『忘却の緑海』と呼ばれているんだ。トウイの国ではこの国の古語で『記憶のゆりかご』を意味する名で呼ばれていたし、幼獣が世界の記憶を守っているという伝承があるんだよ。この中を歩いている僕たちは、さっきまで僕たちが居た世界とは全く違う領域を歩いていると言えるだろう。強いて言うなら『異世界の中の異世界』みたいな領域だからね。だからかな? この聖樹海の光と明るさはこの世のモノとは思えないだろう?」
「はい。こんな幻想的な光の中を歩くのは初めてです。でも、とっても癒された様な気分になりますね」
とソフィアは驚きながらも居心地の良さを感じていた。
樹海と言ってもソフィアが驚く様に木々も深い緑の光に照らされて、樹海全体がこの光で輝いているようだった。
「この道も光って綺麗です」
とソフィアは感嘆の声を漏らした。
光の森に感動しながらソフィアは歩いていたが、
「この樹海には勿論何度か来られたことがあるんですよね?」
とシバに尋ねた。
「うん。何度かはね……と言っても僕も久しぶりだけどね。それにもうすぐ冬だからね……丁度この時期あたりから光の道が現れるんだよ。樹海が凍り付く季節になると、もっと道や森が光り輝く様になるよ」
とシバはソフィアに教えた。
「え? そうなんですね」
とソフィアは驚いたような表情を見せた。
「うん。この聖樹海は『季節によってその表情を変える森』とも言われているんだよ。特に冬場は『魂の審判の樹海』と呼ばれていて、『静寂がこの樹海を支配する季節』と言われているんだよ。今はまだこんな感じで光で覆われているけど、更に寒さが厳しくなってくると樹海の全てが凍り付き、この樹海が一番綺麗に光り輝く季節になるんだよ」
とアキトがこの聖樹海の説明をした。
「へぇ……そうなんですね。もっときれいに光り輝くんですね。凍てつく寒さの前でもこの輝き……良い時に来たみたいですね。でも他の季節にも興味が湧きますね。また違う季節の時に来たいです」
「そうだね。また来る機会はあるよ」
とシバは笑った。
暫くは細い曲がりくねった道を三人は歩いていたが、道は徐々に勾配を増して軽い上り坂になって来た。
三人は聖樹海から霊峰サザンへ続く道へと歩みを進めていた。
その時、アキトが何かを見つけたように道から外れて森の中へと入っていった。
シバとソフィアは足を止めてアキトが戻って来るのを待っていた。
暫くするとアキトは手に何か木の実のようなモノを一つ持って帰って来た。
「まだあったよ」
とアキトは嬉しそうに言った。
「へぇ……まだ実がなっていたのか?」
とシバは意外そうな表情で、アキトが手にした実を見つめた。
「ああ」
とアキトは頷くと
「これ、食べてごらん」
と手にした木の実をソフィアに差し出した。




