朝稽古の後
数日後、いつものようにソフィアは隼人に早朝から稽古をつけてもらっていた。それが終わった直後、稽古場にシバが入って来た。
「おはようございます」
と稽古が終わって隼人と談笑していたソフィアはシバに気が付くと挨拶をした。
「ああ、おはよう。稽古は終わったみたいだね?」
「はい。ちょうど今さっき終わったところです」
とソフィアは元気な声で答えた。
二人のやり取りを聞きながら
「どうした? 今朝は早いな。まだ寝ている時間じゃないのか?」
と隼人がシバに声を掛けた。
「いつもこの時間は起きていますよ。俺を何だと思っているんですか」
とシバは即座に反論した。基本的にシバは早起きするというイメージを誰にも持たれていなかった。
「そうだったな。失礼した。で、なんだソフィアに何か用か?」
と隼人は笑いながら聞いた。
「ええ。ソフィアに姫巫女様を紹介しておこうかなと思いまして……」
「姫巫女様? ふむ……なるほど……それは良いかもしれないな。で、お目通りの許可は頂いたのか?」
と隼人も賛成しながらシバに確認した。
「勿論ですよ。流石に唐突に会いに行く訳にはいきませんからね。ちゃんと八雲の旦那に手配をしてもらいましたよ」
とシバは答えた。姫巫女様と呼ばれるだけあって、誰でも気軽に会う事が出来る人物ではなかった。
「そうか。それなら良い。お前にしては上出来だ」
と隼人は安心したように頷いた。
「当たり前でしょう。俺にだってそれ位の常識は有りますよ」
とシバは憤慨して言った。
隼人はシバやアキトと知り合って十年以上の月日が経っているが、未だに出会った時の型破りな二人のイメージが抜け切れていなかった。
その二人のやり取りを聞いていたソフィアは
「姫巫女様ってこの前シバさんがおっしゃっていたお方ですよね?」
とシバに聞いた。
「そうだよ。この国へ来たら一度は会っておいた方が良いお方だ」
とシバは答えた。
「シバの言う通りだな。特にソフィアは会っておくべきだと思う」
と隼人もシバと同意見だった。
「そうなんですね。その姫巫女様ってどこにいらっしゃるのでしょうか?」
とソフィアは聞いた。
「ここから東へ行ったところに『翠影の聖樹海』と呼ばれる森林があるんだけど、その奥にある霊峰サザンの中腹の神殿に姫巫女様はいらっしゃる。聖樹海の入り口まではミカサで行って、そこからは歩きになるけどね」
とシバは答えた。
「え? 飛空艇で行くほどの距離なんですね」
とソフィアは思ったより距離がありそうなので軽く驚いていた。
「いや、歩いて行ける距離でもあるけど、もののついでだよ。本当は神殿まで飛空艇で行っても良いんだけど、今回は聖樹海を歩いて行ってもらう予定だよ」
「……行ってもらう予定って、もしかして私一人?……ではないですよね?」
とソフィアは少し不安そうに聞いた。
「まさか。俺とアキトも一緒に行くよ」
とシバは笑いながら答えた。
「え? 今回は三人で行くんですか?」
とソフィアは意外そうに聞いた。まさか『一人で行け』とは言われる事はないだろうとは思っていたが、そうでなければパーティーメンバーで行くのだろうと思っていたので、まさかこの異世界転移最強チート持ちの二人と一緒に行くとは想像もしていなかった。
「その通り。今回は三人で行くよ。姫巫女様に会いに行くのはこの三人だ」
とシバはきっぱりと言った。
「……分かりました。ところでシバさんとアキトさんは姫巫女様にお会いした事はあるんですよね?」
とソフィアは聞き返した。
「うん。あるよ。隼人さんも勿論会った事あるよ。ソフィアも会っておいて損はしないと思うよ」
とシバはそれに答えた。隼人もそれを聞きながら同意するように頷いていた。
「分かりました。よろしくお願いします」
とソフィアは頭を下げた。
シバはそれを見て頷くと
「という事で明日からソフィアをお借りします」
と隼人に告げた。
「早速だな……分かった。姫巫女様にお目通りが叶ったら、よろしくお伝えしておいてくれ」
と隼人も快くソフィアの帯同を許した。
「分かりました」
とシバは答えた。




