ダミアンの心配事
ある日の事、いつものように昼から道場に顔を出したシバは、道場内で話し込んでいるクロードとダミアンの姿を見つけた。
「おや? 珍しい。ダミアンがこの道場に足を踏み入れるなんて」
と声を掛けた。
「俺だってたまには稽古で汗を流したい時ぐらいありますよ。ここに来てから身体がなまってしまってますからね」
とダミアンは身体をよじって動かしながら答えた。ダミアンは朝から道場に顔を出し、シバが声を掛けたのはクロード達と一汗流した直後だった。
既にシバ達がここに来て、数ヶ月が経とうとしていた。
その間、飛空艇は整備と改装を行っていたが、ある程度目処が立った頃からダミアンやオージーたちが試験飛行を兼ねたトウイの国での国内配送を始めていた。
飛空艇ミカサの持つ能力からすれば近距離の輸送となり、どちらかと言えば楽な仕事であった。
ここ数ヶ月の間にこの国の王たちの移動に飛空艇ミカサは使われることもあったが、その時ぐらいでしかシバやアキトが同乗する事は無く、シバもブラウンの顔を見るのは久しぶりであった。
「なるほど。じゃあ、朝はクロード達と手合わせでもやっていたということなんだな」
とシバはダミアンと一緒にいたクロードや道場生達の顔を見ながら言った。
「そうですよ。でもしばらく見ないうちにクロードも強くなりましたね。剣筋が読み辛くなりましたよ」
とダミアンは笑った。……とはいうものの、まだまだダミアンの領域まではクロードは及んでいないようだった。それをこの言葉でシバは感じ取っていた。
それでもシバは
「だろう? クロードも見違えるようになったと思うぞ。後は実戦での経験をこれからどれだけ積めるかだな。そこでそれを使えてこそ本物だからな」
とクロードの成長は認めながらも、釘を刺す事は忘れていなかった。
――こいつは褒めるとすぐに図に乗るからな――
と思っていたが、クロードの成長ぶりを頼もしく思っていたのも事実だった。
シバの言葉をクロードも黙って素直に聞いていた。
「ところで、艇長」
とダミアンが改まった表情で話を切り出した。
「どうした?」
「このままここで年を越すなら、今回の『御神火』はうちに『運べ』なんて言われたりしませんかね?」
とダミアンは聞いた。
「ああ、もうそんな時期かぁ……『御神火送り』の件は別に何にも言われていないけどなぁ……長に何かあったのか?」
とシバはそう言うと腕を組んで少し考えだした。
『御神火送り』とは、この国の正月行事の一つで『正月の一番参り』で神様へ捧げる『御神火と呼ばれる霊力を持った火』を姫巫女様の住む神殿に届ける行事である。『御神火』は代々の『忌火の職人』と言われる火の精霊の血を引く一族の長が、龍脈から大地の霊力を元に灯した火の事である。
通常はこの一族の長か、それに近い者が姫巫女様のもとまで届けるのが習わしとなっていた。しかしここ数年その長も寄る年波には勝てず、身体も随分と弱って来たという噂はシバ達の耳にも届いていた。




