クロードの付与魔法
「そんな事はないさ。要するにお前次第だよ。ところで魔法はイメージだというのは知っているよな?」
とシバは話題を変えた。
「うん。それは知っているよ」
「じゃぁ、精霊系の魔法との違いは分かるか?」
クロードはしばらく考えてから
「精霊系の魔法は精霊の力を借りるので呪文や詠唱が必要だけど、魔導系の魔法は必ずしも詠唱は必要としないという事位しか知らないよ」
と答えた。
「それで正解だ。これからクロードにやってもらうのは魔導系魔法だからな。詠唱がない代わりにイメージが大事だ。その為の魔力の流し込みイメージだよ」
「なぁるほどぉ」
とクロードは全てがやっと理解できたかのように、大仰に何度も頷いた。
「だからさっきのイメージトレーニングは重要なんだよ。幸いこれは思った以上に簡単にクリアしたからな」
確かにこの件に関してはシバもアキトもクロードの物覚えの良さに感心していた。
「うん」
「お前は今まで魔法を使う事は無かったからな。イメージするのにもっと時間が掛かるかと思っていたが、そうでも無かったな。これでこれからは多少は使えるようになるな」
「そうなんだ。出来るかな?」
「できるさ。それ位の魔力はあるさ。それは俺が保証しよう」
とシバはクロードを元気づけるように太鼓判を押した。
「そっかぁ。艇長にそういわれると自信つくなぁ」
とクロードは嬉しそうに言った。単純である。
「では、続きをやろうか?」
「うん」
とクロードは木刀を構えた。
「さっき魔導系魔法には詠唱は要らないと言ったが、付与には呪文が必要になる」
「ええ? そうなの?」
とクロードは驚いたように聞き返した。
「まあ、慣れてくれば要らなくなるけどね」
「え? どういう意味?」
と今度は意外そうに聞き返した。クロードの場合、思った事が表情にすぐに出るので分かりやすい。
「さっきも言っただろう? イメージが大事だって。剣先に魔力を付与したというイメージを自分自身に納得させるために呪文を唱えるんだよ。例えば炎系なら『フレーム・ウェポン・エンチャント』とか唱えるとかね。あるいは『紅蓮の炎よ、この刃に宿れ』とかね。要するに自分に対して言い聞かせるみたいな感じかな。まあ、一種のルーティンワークみたいなもんかな?」
とシバはイチローがバッターボックスに入る時の所作を真似しながら言った。
「なにそれ?」
クロードにルーティンワークは通じなかった。勿論、イチローも知らない。
「いや、判らないんだったら良い……」
とシバはこの話は止めた。そして心の動揺を隠しながら平静を装った。後ろでアキトが笑いを堪えていた。
そんな事はつゆ知らずクロードは
「艇長とかも呪文唱えるの?」
と話を続けた。
少し救われた気持ちになったシバは
「いや、俺とかアキトはもう唱えないな。思うだけで付与できるからね。付与出来て当たり前だと思い込んでいるから、呪文は必要ないんだよ」
と答えた。
「それにな……まあ、余談なんだけど、元々は付与魔法は精霊系魔法だと言われていたんだよ」
とシバは話題を変えた。
「え? 本当に?」
「本当だよ。武器への付与を精霊に頼むという感じで最初は詠唱だったようだ。『我、汝に命ず。闇を払う聖なる光よ、鋼の刃を神の鉄槌へと昇華せよ』みたいな」
「なんかそれ恰好良いなぁ……」
「だったらクロードはそれにしたら?」
「でも本当は精霊魔法では無かったんでしょ?」
「うん。最初から魔法付与に精霊なんか全く関わってなかったよ。後でそれが分かって呪文になり命令口調になったりしたんだよ」
「へぇ~」
と感心したようにクロードは言うと、じっと手に持った木刀を見つめた。
「そっかぁ……オイラにも付与魔法が出来るのかぁ」
「できるさ。イメージさえしっかりと持てればね」
「じゃあ、お願いします」
と言ってクロードは木刀を構えなおした。
因みにクロードが魔法付与をものにしたのは、これから三日後の事だった。




