付与訓練
「そうだな」
とアキトも同じように感じていたようだった。
シバもアキトもクロードの魔力量が増大したのは、ソフィアとのこの稽古が原因ではないかと考えていた。
その予想はあながち間違いではなかった。
元々あったクロードの潜在的な魔力が、ソフィアとの稽古によって顕在化したようだった。彼女の魔法が付与された剣を受けている間に、クロードは知らぬ間にその魔素を剣から受け取ってしまっていたようだ。その結果、その魔素がクロードの魔力を広げていったのであろう。
まさに怪我の功名と言うか、瓢箪から駒と言うか、ソフィアのちょっとした行為が思わぬ副産物を生んでいた。
おおよその見当がついたシバは仕切り直すように
「ではクロード。早速魔法付与の稽古を始めよう」
とクロードに声を掛けた。
「はい!」
とクロードは元気よく答えた。ブラウンが冷やかすように
「頑張れよぉ」
と声を掛けた。
「おぅ! で、ブラウンは魔法付与できるのか?」
とクロードは聞いた。
「勿論できるさ」
とブラウンは事も無げに答えた。彼はミカサに乗艦する前から冒険者として活動していた。キャリアだけを見ればクロードよりも経験豊富と言えた。
「ちっ! そうだった。ブラウンはオイラよりも冒険者歴長いんだった。余計な事を聞いてしまったぜ!」
とクロードは悔しそうに言った。
「そういう事。せいぜい、艇長にしごかれるんだな」
と笑いながらブラウンはそう言うと、ソフィアを誘って稽古を始めた。
「では、クロード。始めようか」
と改めてシバは声を掛けた。
「はい」
とクロードは気を取り直したように返事をした。
「まずは剣先に魔力を流し込む訓練を始めようか?」
「はい」
緊張しているのかクロードの返事はどことなくぎこちない上に丁寧だった。
シバはそれに気が付いて
「では、木刀を構えて。もっと肩の力を抜けよ」
と言ってシバも木刀を構えた。
「こうかな?」
クロードは素直にシバと同じように木刀を構えた。
「そうそう。では、その木刀の剣先に流し込むイメージで魔力を送り込んでみようか」
とシバは指示した。
「うん。魔法の属性は何でも良いの?」
クロードも少し緊張がほぐれてきたようだった。
「良いよ。ちなみにクロードは何が出来る?」
「出来るって程ではないけど、炎属性はあると思う」
と答えた。とはいうもののクロード本人も魔法を使う事がほとんどなかったので、自信は全く無かった。
「じゃあ、それで良い。剣先から炎が湧き出るイメージで構えてごらん」
とシバは指示した。
指示されたとおりにクロードは木刀を構えた。ほどなくして木刀が全体的に薄赤く輝きだしたが、すぐにそれは消えた。
それを見てシバは
「ふむ。流し込みは思ったより楽勝だったな。後は維持だな」
とアキトにも聞こえるように言った。
アキトは黙って頷いた。
「今のは?」
とクロードが聞いた。彼には魔力の流し込みという実感がまだ薄かった。
「流し込みは上手くいっていたよ。どんな感じだった?」
とシバは確認するようにクロードに聞いた。
「イメージ通りに魔力が流れ込むのを感じたけど、流し込んでいたら魔力がどんどん剣先から消えていく感じがしたよ。剣に魔力が溜まっていく気が全然しなかった」
とクロードは悔しそうな表情を浮かべて言った。




