ソフィアの付与魔法
「そもそも木刀で打ち合う時は、前もってお互いに防御魔法をかけるだろう?」
とシバはまだ質問を続けた。
「はい……その通りなんですけど……実は『木刀に付与魔法は可能なのかな?』と疑問がふと頭に浮かんでしまったので、どうしても試したくて……聖属性魔法なら良いかな?と思って……で、やっちゃいました」
とソフィアは白状した。
今までロングソードは使いこなしていたが、ソフィアはこの国に来て初めて木刀を握った。刀も持った。なので色々な事を試してみたいという欲望がふつふつと沸き上がってきていた。自分の持つ武器や防具の性能や能力を試したくなるのは魔導剣士なら当たり前の行為だろう。
そこで試しにクロードとの地稽古中に木刀に付与してみたら『上手くいった』と心の中で一人喜んでいたソフィアであった。
「それで聖属性魔法を?」
「はい……」
とソフィアは申し訳なさそうに小声で返事をした。木刀に付与する魔法は何でもいいわけではなかった。例えば炎属性の魔法を付与しそれが機能した場合、クロードが丸焼けになる可能性が無いとも言えなかった。流石にそれは危険すぎて選択肢にはならなかった。そこで安全策としてアンデッド以外には無害な聖属性魔法をソフィアは選んで試してみたという事だった。
「それは上手くいったと?」
「はい」
「で、それ以外には?」
とシバは畳みかけるように聞いた。
「え?」
とソフィアは絶句した。
「聖属性魔法以外には付与しなかった?」
聖属性魔法が上手くいったという事は、それ以外の魔法付与をソフィアが試さないわけがなかった。シバはそれを見抜いていた。
「……しました……」
とソフィアは頷いて申し訳なさそうに俯いた。
「何を付与したのかな?」
相変わらずシバの口調は優しい。決してソフィアを詰めてはいなかった。
「風属性魔法と水属性魔法です」
とソフィアは呟くような小さな声で答えた。
「ふむ、風属性魔法はなんとなく理解できる。適度な風は稽古中には爽やかな風となるからね」
とシバは笑った。
「はい、その通りです」
とソフィアは我が意を得たりと顔を上げて答えた。
「水は?」
「それは……」
と今度は一気に表情を曇らせて言い淀んだが、意を決したように
「クロードが熱くなり過ぎて訳も分からずに打ち込みまくってきた時に、落ち着かせるためにぶっかけました」
と白状した。ソフィアはさりげなくではなく、それ相応にクロードに実力の差を見せつけていた。
「なるほど。それは適切な対応だね」
とシバは納得したように頷くとクロードに視線を移した。同時にアキトもブラウンもクロードを見つめた。
そして皆が納得したように
「なるほど。それはソフィアが正しい」
と言って頷いた。
「なんだよぉ!」
とクロードが憤慨したように食ってかかったが無駄な抵抗だった。
それを冷ややかな目で見ていたブラウンが
「別に……」
と乾いた口調で言った。
その二人の横でシバは
「ソフィアもクロードのお守り、大変だったね」
とソフィアを優しく労った。
「いえ」
とソフィアは申し訳なさそうに返事をしたが、ほっとしたような表情を浮かべていた。
シバはアキトに視線を移して
「なんとなく魔力増大の理由が判った様な気がするわ」
と言った。




