魔法付与
しばらくするとシバの剣は、クロードの体勢を大きく崩しだした。
「おい、クロード。どこへ行くんだぁ? そっちには誰もいないぞぉ」
とシバは思いっ切り斬り込んで来たクロードをかわすと、つんのめりそうになったクロードの背後に回って木刀を背中にチョコンと当てた。やはりシバ相手だと力の差があり過ぎた。シバがギアを上げるとクロードになすすべは無かった。
慌てて体勢を整えたクロードだったが、
「ほら相手から視線を外さない。背中を晒さない」
とシバにまた頭に同じように木刀を軽く当てられた。
「かぁ!! どうやっても艇長を捕まえる事が出来ん!!!」
とクロードは悔しそうに叫んだ。
「当たり前だ。年季が違うわ」
とシバは愉快そうに笑った。
シバが如何に手を抜いているとはいっても、まだまだそのシバの足元にも及ばないクロードであった。
暫くシバはクロードの相手をしていたが、突然持っていた木刀の構えを解き
「クロード、お前は剣先に魔法付与は出来ないのか?」
と聞いた。
「魔法付与?」
とクロードは怪訝な顔で聞き返した。
「ああ、そうだ。魔法付与だ。ソフィアは魔導学校で習って習得しているが、お前はどうなんだ?」
「おいらはいつも魔獣と戦う時はフローラに付与してもらっているし、この頃はマリアにも付けてもらっているから自分で付与した事はないなぁ」
とシバに指摘されて初めて気がついたような表情を見せた。
「剣を持つ者が誰もが付与魔法を使えるわけではないが、一度挑戦してみるか?」
「おいらに出来るかなぁ?」
とクロードは自信無さげな表情を浮かべた。
「やってみないと分からんが……でもお前ならもうそれぐらいできるような気がする。やってみるか?」
とシバが聞くとクロードは首を傾げながら視線をソフィアに移した。
クロードと目が合ったソフィアはにっこりとほほ笑むと軽く頷いた。
クロードにはそれが『大丈夫。クロードならできるわ』と言っているように見えた。
事実その時、ソフィアはそう思っていた。
「うん。やってみるよ。今までそんなこと考えた事も無かったからなぁ。いつもフローラやマリアに助けてもらってばかりだから……でも出来るかな? おいらにそれほどの魔力はあるとは思えないんだけど……」
とクロード自身が自分の魔力量の大きさを知らなかった。
「いや、大丈夫。剣先に付与するぐらいの魔力はあるぞ。そこは安心して良い」
とシバは笑って言った。そしてソフィアに向き直ると
「ところでソフィア」
と声を掛けた。
「はい。なんでしょう?」
と唐突に名前を呼ばれたソフィアは慌てて返事をした。
「もしかして、クロードと稽古をつける時に木刀に魔法を付与したりしなかった?」
とシバは聞いた。
「え?……」
とソフィアは軽く声を上げた。どうやら図星だったようだ。
「……実は聖属性魔法を付与してました……」
ソフィアは誰にも言わずに勝手に魔法付与をしていたようだ。それをシバに咎められたと思って萎縮していた。
「それはクロードが怪我をしないようにという事だね?」
それを察したようにシバは優しく聞いた。
「はい。そうです」
とソフィアは答えながらもシバの質問の意図が見えずに困惑していた。




