ソフィアとクロードの稽古
朝のひと時をむさ苦しいオッサン二人の与太話で過ごした後、シバは道場へ向かった。
道場に入ると、丁度ソフィアとクロードが地稽古中だった。
主にクロードが攻めてソフィアが受け流すような形で手合わせをしていた。
――まるで上段者が稽古をつけているみたいに見えるな――
とシバは微笑ましい気持ちになってその光景を見ていた。
気が付くと彼の隣にアキトが立っていた。
「お前、視線が保護者目線になってるぞ」
とアキトが二人から目を離さずに小声でシバに話しかけて来た。
「え? そうかぁ?」
とシバも意外な指摘をされて少し焦りながら答えたが、言われてみればそう思えなくもなかった。
「ところで、あの二人を見てどう思う?」
とアキトはすぐに話題を変えるように聞いてきた。
「え? う~ん。あれはソフィアがクロードの面倒を見てくれているんだろう? でも良いのか? ソフィアは自分がチートである事を隠していただろう? もう隠すのは止めたのか?」
とシバは二人の稽古を見ながらアキトに聞き返した。
「チートである事はまだ隠しているよ。ただ剣技については『クロードよりは強い』というレベルまでは見せているようだ」
「ほほぉ。そうなんだ。でもなんで?」
とシバは少し意外そうにアキトに再び聞き返した。
「お前も見て分かるだろう?」
とアキトはシバの問いに直接的には答えずに、視線を二人から離さずに言った。
「ふむ。そういえばクロードも良い感じじゃないか? ソフィアの嫌がりそうなところを攻め込んでいるみたいだし……」
とシバは感想を述べた。
「その通り。クロードはこの道場に来て一気に腕を上げた。もう木刀を使いこなしている」
クロードがこの道場で剣術を教わり出してから既に一ヶ月以上の月日が経とうとしていた。
「みたいだな」
「クロードとソフィアとの実力の差は考えるまでもないが、お前が指摘した通りクロードはソフィアの嫌がりそうなところを攻めている。もっともソフィアはチートだからあれぐらいの攻撃で態勢が崩れる事はないが、あのクロードがソフィアの行動の先読みをしようとしているのは凄いと思わないか?」
とアキトにしては珍しく声が高揚しているようにシバには聞こえた。
「確かに……アキト、お前の言う通りだ。今までソフィアはチートどころか、『それなりに剣も使える』という事すらも悟られないようにと、ほとんどクロード相手に稽古もしていなかったはずだ。今はちゃんと『クロードよりは私の方が強い』と剣先で語っている……なるほどね。ソフィアが剣で語れる程クロードが強くなったという事か……」
「そう言う事だ。クロードの技量が一気にソフィアも認める位には上がったんだよ」
とアキトはシバの言葉に満足そうに頷いた。
そしてそのまま言葉をつづけた。
「まぁ、だからさ……ちょうどいい頃合いと思い、ソフィアに『そろそろ実力の片鱗ぐらいはクロードに見せてもいいだろう』と助言したんだけどな」
とアキトがシバの質問に対する核心的な事実を白状した。




