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皇女殿下の飛空艇~皇女殿下は鬼畜な艇長にしごかれています~  作者: うにおいくら
第8章 ソフィアの縁談

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ゲルオン王国

 

 ゲルオン王国はモルタリア帝国の東隣の王国である。モルタリア帝国と同じくらいの領土を持つ、西側諸国の中でもそれなりの発言力を持つ王国であった。現在モルタリア帝国とは平和条約を結んでいるし西側諸国連合の一員だが、今まで何度か近隣諸国と小競り合い程度の戦争を起こしていた。ラシール帝国ほどではないが、隙あらばこの大陸の覇権を狙いかねない王国である。


「ゲルオンかぁ……」


「お主もあの国の噂ぐらい聞いておるじゃろ?」


「確かに……近頃軍事力の増強を隠していませんからね。もはや軍事大国と言ってもおかしくはないです。だからと言って流石にラシール帝国に喧嘩は売らんでしょう?」

とシバは反論した。確かにゲルオン王国はそれなりの軍事力を持った国ではあるが、だからと言ってラシール帝国に喧嘩を売るとは思えなかった。


「儂もそう思っておるが、ラシール帝国はそう思ってはおらん様だ。ひどくゲルオン王国を警戒しているというのがスミス少佐からの情報だ」


「なるほど。ラシール帝国からしたら、ゲルオン王国を警戒したくなるのも分かりますけどね。しかしそれこそ、防波堤代わりの婚姻関係を結ぶならブリアイル王国連合ではなくそのゲルオン王国とでしょう?」

とシバはこの世界の常識を思い出しながら言った。


 この世界では国家の力……そう軍事力が全てだった。力のある国は無い国を併呑し、力のない国はそうならない為に知恵を絞り、婚姻関係を結び生き延びようとする。隙を見せれば喰われる……そういう世界だった。


「そうじゃ、だがあそこの王子はまだ五歳じゃ。姫は二歳である」


「あ、そうかぁ……そりゃ無理だわ」

とシバはそのひとことで納得した。


「ゲルオンの国王の末弟というのもあるが、そもそもゲルオンはその申し出を受けるとは思えん……そんな必要など微塵もないし、もし本当にラシール帝国に喧嘩を売るつもりなら間違っても婚姻関係など結んだりはしない。

もっともゲルオン王国にとっては、そんな婚姻関係を結んだとしても、後で破棄することは造作もないだと思うがな……で、それに比べ我が国の王子は適齢期である。そして我が国の王妃はゲルオンの王朝とつながりを持つ。遠い親戚みたいなもんじゃ。その上、我が国はモルタリア帝国ともつながりが深い国である。ゲルオン王国だけでなく西側諸国を抑えるために我が国へ姫を送り込むという話は、念には念を入れた、悪くはない算段と言えるとは思わんか?」


「確かに……でも、なんか安直ですな」


「安直だが、婚姻関係はそれなりに強いからの。ゲルオン王国とモルタリア帝国と直接交渉ができないのであれば、そうするしかあるまい」


「確かに……そうなるとモルタリアも手出しは出来なくなりますからね。ラシールが余計な事を仕掛けてこなければしばらくは平穏が保たれますし、後顧の憂いはなくなりますな」


「その通り」

伯爵はシバの言葉を聞くと満足そうに頷いた。


「で、それを受けるのですか?」


「まさか……と言いたいところじゃが、そうとも言えんのだよ」

とカクセール伯爵の表情が曇った。


「なぜ?」


「ラシール帝国は妃候補に第一皇女を送り込む予定らしいのだ」

と伯爵は少し声をひそめて言った。


「ほほぉ。思い切りましたね」


「そうなのじゃ。話が来てから他の王族や貴族に話を振る訳にもいかん。そんな事をして変にラシールに敵視されるのは敵(かな)わんからな」


「まあ、そうなりますよね」

とシバも納得してうなずいた。ラシール帝国はプライドが高い国であった。それをシバは思い出していた。


2026.11.08 文章修正。

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