天下布武
「その時は、僕とアキトは全力で協力させてもらうよ」
「ええ??」
とソフィアは更に驚きの表情を見せた。
「だから安心して『天下布武』を旗印にしてくれ給え」
とシバは笑った。
「それって織田信長が掲げた旗印ですよね」
「そうだよ。よく知っているね」
「それって本能寺で明智光秀に討たれちゃうじゃないですか!」
とソフィアは憤りながら反論した。
「あ、そうだった。じゃあ『ルビコン川を渡る』のは?」
「それってローマ帝国のユリウス・カエサルの言葉ですよね……それもブルトゥスに討たれましたよね」
とソフィアはシバを睨んだ。
「本当によく知っているねぇ……」
とシバは笑って誤魔化しながらも感心していた。
「ま、冗談はさておき、僕たち二人はソフィアが選んだ道を応援する事に変わりはないからね。僕もアキトも本気でソフィアの味方になるよ」
とシバは真顔で言った。転生と転移の違いはあれど同じ世界から来た者同士である。シバに知らぬ顔は出来なかった。
「はい。シバさんにそう言ってもらえるとなんだかホッとしました。でも今は冒険者のままで居たいです」
とソフィアの本音はあくまでも一冒険者でいる事だった。
シバやアキトが支えてくれると言っても、この力を戦争には使いたくなかった。
ソフィアのそんな感情を見越したようにシバは
「女帝になったからと言って必ず戦争を仕掛けなければならない訳でもないだろう? もしソフィアのそのチートが公になったとしたら、誰がそんな女帝のいる国に戦争を仕掛けるっていうんだい?」
とソフィアに尋ねた。
「それは……」
とソフィアは考え込んだ。
――ラシール帝国ならありえるかもしれない。けどあそこの皇帝は機を見るに敏な皇帝だわ。負けると分かっている戦争を仕掛けてくる程愚かではないはず……あの帝国以外の国とは我がモルタリア帝国は仲が良い。別に統一国家を私が望まない限りは戦争になる事はない……――
とソフィアは一気に考えを巡らしていた。
その様子を見ていたシバは
「慌てて決める事は無いさ。俺たち二人はソフィアの味方だよ。もしかしたらこの異世界に呼ばれたのはその為かもしれないしな……」
と声を掛けた。そう言いながら同時に
――本当にそうかも――
とも思っていた。
「はい。どんな形になっても、お二人にはそうであって欲しいです。シバさんに話をしてスッキリしました。なんか一気に肩の力が抜けました。ありがとうございます」
とソフィアは笑った。
本当に気分が軽くなったようだった。この世界に転移してきてから徐々に感じだしていた不安が、シバの言葉で救われた様な気がしていた。
「ところでこの頃、クロードと手合わせした?」
とシバは話題を変えるように聞いた。
「はい。昨日、ここに来て初めて手合わせしました」
「どうだった?」
「クロード、本当に強くなりましたよね……というか、この道場に来てたった二日で剣捌きが見違えるように上手くなってました。思った以上に吸収していますね」
「ほほぉ……ソフィアと互角に戦えそうかな?」
「それはあと五百年くらい掛かりそうですね」
とソフィアは笑って言った。シバとの会話で本当に気持ちがスッキリとしたようだった。
「そっかぁ……ソフィアにはまだまだかなわないかぁ……」
「はい……すみません……」
とソフィアは恐縮して頭を下げた。
「いやいや、ソフィアが謝る事は無いよ」
とシバは慌ててフォローした。
「はい。でもクロードの成長ぶりは凄いですよ。魔導学校の生徒相手なら多分、余裕で勝てますよ」
とソフィアは言った。
「ほぉ? それほどには、強くなったのかぁ」
とシバは少し驚いていた。クロードの潜在的な能力は鑑定で認知していたが、ソフィアの言葉はその予想を遥かに超える成長ぶりに思えた。
「はい。まだまだこれから強くなると思います。もう少ししたら魔法付与を教えてもいいかもしれません。彼ならものにできると思います」
とソフィアはクロードの能力はこれからまだまだ伸びると確信していた。
「それは凄い。ここでクロードを学ばせて正解だったな」
とシバは思わぬクロードの成長ぶりを聞かされて驚いた。
――それにしてもたった二日や三日でそんなに成長するもんなのか?――
と驚愕していた。
「はい。一度シバさんも手合わせしてあげてください」
「そうだな。時間を見つけて相手をしてやろうかな」
「はい。私は午前中ならクロード達と一緒に稽古してます」
「そうか。じゃあ、いずれ朝の修練にでも顔を覗かせるよ」
とシバは笑った。
2026.06.09 文章修正




