ウンディーネ
「ああ!! ウンディーネ様、ご無事でしたか?」
とメリッサが爆心地に駆け寄り天を仰いで尋ねた。
「わらわは無事であるが、その二人は何者ですか?」
と姿は見えないが声だけはシバやアキトにも聞こえた。その声に怒りの色を感じなかったので、メリッサは胸をなでおろしていた。
「本当に申し訳ありませんでした。彼らは他の世界から来た者たちらしいです。我が師匠アガサ・ヴァイスリッターがそう申しておりました。そして彼らはこの世界に来て日が浅いので、この世界の事がよく分かっておりません。あれはフェンリルの姿に驚いたもので、決してウンディーネ様を亡きものにしようとしたのではありません」
とメリッサはシバ達に代わって精霊王に謝罪をし、ついでに言い訳もした。
「なんと……異世界人とは……」
とウンディーネの声に驚きの色が混じった。精霊王にとってもメリッサの話は思いがけない内容であった。
「我が師匠は創造神様のお戯れではないかと申しておりましたが……」
「ふむ……なるほど……そうかもしれませんね」
とウンディーネはそう言うと姿を現した。
エメラルドグリーンのドレスを纏った姿は神々しくもあったが、色っぽくもあった。精霊王というだけあって若々しくて非の打ち所がない麗人姿だった。
「はぁ……別嬪さんやなぁ……」
と思わずシバの口から溜息と共に余計な言葉が漏れた。その瞬間、メリッサがシバの耳元で
「それ以上しゃべると殺す。動いても殺す。このままここでメガフレアをぶちかます」
と魔法の杖をシバの頬に押し付けながら脅した。
「うん……分かった……ごめんなさい……」
とシバは両手を挙げて頷いた。
これ以上この二人に好き放題させると、更にとんでもない事が起きるとメリッサは確信した。
「他の世界からやって来たことは理解しましょう。で、あなたがた二人はこの森に何をしに参ったのでしょうか? よもや泉にエクスプローションをぶちかますためだけに来たのではありますまい」
とウンディーネは優しげな声で聞いた。ただそれは答え一つでどうにでも変わる雰囲気も漂わせていた。
しかしそんな空気も何も感じていないシバは
「なに……って言うか、アガサの婆さんに『ここで精霊たちと遊んで来い』って言われて来たんだけど、さっきのあのフェンリルは遊びだったのですかぁ?」
と緊張感の全くない声でウンディーネに聞き返した。
「そうですか……精霊たちの悪ふざけが過ぎましたね。それは私が代わりに謝っておきましょう」
ウンディーネが眷属をそそのかしてフェンリルの姿にさせた訳ではなかったようだ。この精霊王はシバの言葉を素直に納得して謝った。
「いえいえ。こちらこそ済みません。あれが冗談だったなんて、この世界の笑いのツボがまだ理解できていませんでした。その上、まだこの世界での力加減が分かっていません。手加減しているつもりが、全くそうではない事が沢山あります」
とエクスプローションをぶっ放したアキトも、他人事のようにウンディーネに謝罪した。
本当に緊張感の欠片もない二人だった。




