天からの声
「あんたら師匠に『精霊と遊んで来い』って言われたんだろ?」
とメリッサは自分を落ち着かせるように、敢えてゆっくりと二人に話しかけた。
「そうだよ」
「精霊はあんたたちを試したんだよ」
「はぁ? どういう事?」
まだ二人は状況が全く見えていなかったし理解していなかった。
「あぁ!! もう、頭の悪い奴等だね。いいかい、要するに精霊はフェンリルの姿を借りてあんたらに悪戯したんだよ。それをあんな本気な魔法で攻撃するなんて……」
それを聞いてシバが
「おい、アキト。お前本気で攻撃したのか?」
と詰め寄るように聞いた。
「いや、挨拶替わりのつもりで軽く打ち込んだだけだけど」
と意外そうな表情でアキトは答えた。
「はぁ? あれで挨拶代わりかい?」
――どこぞの世界に挨拶代わりにエクスプローションをぶちかます奴がいる?――
と内心そう呆れながらメリッサは聞いた。
「ああ、あれは本気でないのは確かだ。それは俺でも分かる」
とシバは表情も変えずに言った。
「あんたらどんだけ強いんだい? 相手はフェンリルではなかったが水の精霊王ウンディーネだぞぉ」
「ウンディーネがフェンリルに化けていたのか?」
「そうじゃなくて、ウンディーネの眷属がフェンリルの姿に化けたんだよ」
「そうなんだ。でも精霊王の眷属ならあの程度の攻撃は大丈夫じゃないの?」
とシバが全く深く考えずに軽く言った。
「そもそも、どこの世界に精霊王やその眷属にエクスプローションを、挨拶代わりにお見舞いする冒険者がいる?」
とメリッサは完全に呆れ果てていた。
――こいつらに常識的な行動を期待した私がバカだった――
とこの二人を試した事を後悔しながら、師匠のアガサの言葉も思い出していた。
『あの二人は異世界から来た人間じゃ。この世界の人間の物差しで測ってはならない。何故、創造神が彼らをこの世界に送り込んだのかは分からぬが、彼らからお主は離れてはならん。もし彼らに出会う事があったら、しばらくの間だけでもお前がしっかりと見てやれ』
その時は適当に聞き流していたメリッサであったが、もっとちゃんと聞いていれば良かったと深く後悔し始めていた。しかし当の本人たちを見て俄然興味が湧いたのも事実だった。
「本当にあんたたちはこの世界の事を知らないんだね」
「うん。自慢じゃないが全く知らない」
と自信ありげにシバは言った。
――何故、こいつはこんなに偉そうなんだ?――
と半ば呆れかえりながら
「胸を張って言う事でもないと思うんだけど……」
とメリッサは呟いた。
――それにしてもここに来て私は、何回呆れただろうか?――
と案外冷静に呆れかえっているメリッサだった。
その時
「この者たちはいったい何者でしょうか?」
とアキトがエクスプローションをぶち込んだ跡から声がした。その声はこの現場にふさわしくない天から降りそそぐような優しげな声であった。




