現れたモノ
「え? どういう事?」
とシバは突然聞かれたので驚きながらも、それを悟られないように聞き返した。
「その半端じゃない魔力。一応隠しているようだけど、洩れまくっているわ。下手くそね。しかしこの魔力量……よく見たらとてもじゃないけど私も太刀打ちできないとんでもない量だわ……もしかしてあんた達、うちの師匠の言っていた人かぁ? って思ったんだけど」
とメリッサは聞いた。
「師匠って?」
「私の師匠はアガサ・ヴァイスリッターよ」
「ああ、アガサ婆さんか……」
「あんた! 師匠の前で、婆さん呼ばわりしたら火の玉喰らわされるわよ。気をつけなさい」
とメリッサは笑いながら言った。
「おっと。今のは内緒ね」
とシバは慌てて口を押えた。
「ところでお姉さんの名前は?」
とアキトが聞いた。
「私はメリッサ・グラデス。魔導士で魔術師のアガサ・ヴァイスリッターの弟子よ。将来の大魔導士よ」
とメリッサは胸を張った。
――自分で自分の事を大魔導士なんて言っているよ。もしかして面倒くさい奴かもしれん――
とシバとアキトは同じ事を感じていた。しかし場の空気を読んだ二人は敢えてそこには触れずに
「へぇ、そうなんだ。俺はシバ。こっちがアキトね」
とシバは軽く自己紹介で流した。
さらに
「ところでその師匠から一体何を聞いたか教えて欲しいところだけど……まぁいいや。あの村ではアガサ婆さんに色々世話になったし……ここに来たのもあの婆さんの指示だよ」
と話題もさりげなく変えた。
「師匠からなんて言われたの?」
「え~となんだっけ? あ、そうだ『ここの精霊と遊んで来い』って言われたんだっけ」
とシバは答えた。
「はぁ? また師匠もいい加減な事を……はぁ……」
とメリッサは呆れたようにため息をついた。
「え? どうかした?」
とアキトがその溜息の理由を聞いた。
「あんた達にここの妖精たちがちょっかいを掛けたらどうなるか……なんて想像したくもないわ」
「それって? この人みたいになるって事?」
「違うわよ。その逆よ。ここの妖精はとんでもない目に遭うという事よ」
「俺たちはそんな事はしないぞぉ。妖精は大事にするよ」
とシバが答えた。
――なんで俺たちが妖精を虐めなければならないんだ! そんな事するか!――
とシバは内心憤っていた。彼らは妖精の悪戯がどんなものか全く分かっていなかった。その上、フレデリックを諫めていた割には、彼らも事前にこの森の事を何も調べてはいなかった……というか妖精がこの森にいる事さえも知らなかった。
それを察したメリッサは説明する事を諦めた。
「はぁ……口で言っても分からんかぁ……それならやってみたら分かるわよ。ちょっとあの泉の水をすくってみなさいよ」
とメリッサは、百聞は一見に如かずとばかりに二人を突き放した。
「なんなんだ一体?」
とシバとアキトは首を傾げながら目の前の泉に向かった。
すると泉の中から唐突に巨大な白い狼のような魔獣が現れた。
「なんだ? こりゃ? アキトよ。ここは精霊の泉だよな」
とシバはその魔獣から目を離さずに隣にいるアキトに確認した。
「ああ、そうだ」
とアキトもその魔獣を見つめたまま返事をした。
「じゃあ、あれは精霊で良いんだな?」
とシバは魔獣のようなモノを指さして確認するように聞いた。




