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最終話 レアカードコレクター令嬢大勝利! 希望の未来へレディ・ゴーッ!!

 最終話 レアカードコレクター令嬢大勝利! 希望の未来へレディ・ゴーッ!!


 それから数年の月日が流れ、エリシア・フォン・ローゼンベルクはかつて病弱で没落寸前の侯爵家に生まれた少女だったとは誰も思わないほど成長しており、豊穣の奇跡によって復興した領地は王国内でも有数の豊かな土地として知られるようになり、学園へ入学した彼女は優秀な成績と数々の功績によって多くの生徒から尊敬を集め、セリーナ・アークライトやリリアナ・ブラッドローズとも相変わらず賑やかな友情を続けながら日々を過ごしていたのだが、その平穏は長く続かなかった。


 M&D本編最大のイベント。


 魔王軍大侵攻。


 ついに始まったのである。


 空を覆い尽くす魔物。


 各地へ出現する魔王軍。


 燃える城塞。


 崩壊する防衛線。


 本来の歴史なら数十万人が死に、数多くの英雄が命を落とすはずだった戦争が現実となっていた。


 王都では住民たちが不安に震えている。


 騎士団も疲弊していた。


 そしてその最前線には。


 第一王子レオンハルトがいた。


 王家の旗を掲げながら剣を振るう姿はゲームの主人公そのものであり、エリシアの胸を強く締め付ける。


 前世では画面越しに見ていた推しだった。


 だけど今は違う。


 大切な人だった。


 失いたくない人だった。


「絶対に守る」


 エリシアは決意する。


 そのために転生したのだから。


 そのためにカードを持っているのだから。


 戦場の上空には魔王軍最強の将軍が立っていた。


 漆黒の鎧を纏った巨大な悪魔。


 魔王四天王最後の一人。


 その圧倒的な魔力を前に王国軍は押され始める。


 セリーナも戦っている。


 リリアナも戦っている。


 だが押し返せない。


 そこでエリシアはゆっくりと一枚のカードを取り出した。


 ずっと使えなかった。


 ずっと封印されていた。


 世界ランカー皇結衣の最強カード。


 神話レア。


 虹色に輝くそのカードを見た瞬間、リリアナが息を呑む。


「まさかそれ」


 セリーナも目を見開く。


 エリシアは微笑んだ。


「決着をつけるよ」


 そして空へ掲げる。


 眩い光が世界を包む。


「神話レアカード召喚!」


 大気が震える。


 空間が砕ける。


 天地が鳴動する。


 エリシアは高らかに宣言した。


「降臨せよ、《創世の女神アリア》!!」


 世界そのものが輝いた。


 巨大な光の翼。


 黄金の長髪。


 慈愛に満ちた眼差し。


 神そのものとしか言いようのない存在が戦場へ顕現する。


 誰もが言葉を失った。


 膨大な神威が魔王軍を圧倒する。


 エリシアは更に声を上げる。


「創世の女神アリアの特殊能力発動! このカードはフィールド上の全味方ユニットを完全回復! 戦闘不能状態を解除! さらに味方全体へ神聖属性付与と全能力三倍強化を与える!」


 消耗していた騎士たちが立ち上がる。


 傷が癒える。


 魔力が満ちる。


 王国軍に歓声が広がった。


 そして。


 最後の一撃。


「創世終局能力発動!」


 女神が光を集める。


 世界が静まる。


 エリシアは叫んだ。


「グランド・ジェネシス!!」


 天から降り注ぐ神の光。


 魔王軍は浄化される。


 四天王も消滅する。


 そして。


 魔王城すら消し飛んだ。


 完全勝利だった。


 長き戦争は終わった。


 人類は救われたのである。


 その日の夜。


 祝勝会は盛大に行われた。


 セリーナは宰相候補として称賛され。


 リリアナは功績を認められ騎士たちから感謝されていた。


 そしてエリシアは。


 王城の庭園へ呼び出されていた。


 月明かり。


 静かな夜風。


 そこで待っていたのは一人。


 レオンハルトだった。


 昔より背が高い。


 昔より格好良い。


 そして。


 誰よりも大切な人。


「エリシア」


 真剣な声だった。


 それだけで胸が苦しくなる。


 前世では恋愛経験なんてなかった。


 ゲームばかりしていた。


 好きなキャラを眺めて満足していた。


 まさかその推し本人に告白される日が来るなんて思わなかった。


 レオンハルトは一歩近付く。


「君に何度も助けられた」


 優しい声。


「辛い時も」


「苦しい時も」


「迷った時も」


 一つ一つ噛み締めるように語る。


 そして。


 彼は片膝をついた。


「愛している」


 エリシアの心臓が止まりそうになる。


「最初は不思議な令嬢だと思った」


 レオンハルトは微笑む。


「転んだり」


「変なことを言ったり」


「カードの能力説明を大声で叫んだり」


「忘れてください」


 恥ずかしかった。


 消えたい。


 しかしレオンハルトは笑う。


「そういうところも全部好きだ」


 反則だった。


 そんなことを言われて平静でいられる少女などいない。


 涙が溢れる。


 前世のこと。


 今世のこと。


 病弱だった日々。


 努力してきた時間。


 全部。


 報われた気がした。


「私も」


 声が震える。


「私も好きです」


 レオンハルトが目を見開く。


 そして。


 嬉しそうに笑った。


 こんな顔をゲームでは見たことがない。


 現実だけの笑顔だった。


 二人は抱き締め合う。


 月明かりが優しく照らしている。


 少し離れた場所では。


 セリーナとリリアナがこっそり覗いていた。


「とうとうですわね」


「長かったわね」


 二人とも何故か保護者のような顔だった。


 そして。


 その後。


 エリシア・フォン・ローゼンベルクはレオンハルトと婚約し、やがて王妃となった。


 セリーナは王国最高の宰相となり。


 リリアナは王国有数の魔導研究者となった。


 三人の友情は生涯続き。


 時々女子会と称してレオンハルトを追い出しては夜通し語り合った。


 そして。


 王宮の一室には今も大切に飾られている。


 世界最強プレイヤーだった皇結衣のカードコレクションが。


 かつてレアカードコレクター・ユイと呼ばれた少女は。


 二度目の人生で。


 最高の友達と。


 最高の恋人と。


 最高の幸せを手に入れた。


 その笑顔はどんな神話レアよりも輝いていた。


 完。

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