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小説家志望、異世界に転生する ~僕の黒歴史キャラが異世界を救う~  作者: 赤いたぬき
第三章 魔法少女たちの正義と、僕の大切なもの
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第九十四話 視力の問題ではなく、認識力の問題です

 翌朝、六人は再び馬車に乗り込み、街を後にした。

 窓の外に広がる景色は、次第に緑を失い、赤茶けた岩肌が目立つようになっていく。空気も心なしか乾いて感じられ、馬車の中にも、どこか張り詰めたものが漂い始めていた。


「そろそろもう一度、確認しておきたいのですが」


 ストームが、静かに切り出した。


「スターサラマンダーについて、改めてお伝えしておきます」

「うむ、頼む」


 サンダーが、腕を組んだまま頷いた。


「スターサラマンダーは、竹を割ったような性格です。……悩みを一人で抱え込まず、力で解決しようとする傾向があります。物事を深く考えるより先に、体が動くタイプ、と言っても良いでしょう」

「サンダーそっくりじゃな」


 リデルが、茶化すように言った。


「否定はせん……が、そういうお前とも似ているだろうが。我らは似た者同士よ」


 サンダーがあっさりと認め、リデルを見た。


「……似た者同士か。まぁな……我にも自覚はある」

「ですが、決して思慮がないわけではありません。……仲間思いで、情に厚い。以前の戦いでも、味方を庇うような動きが、幾度か見られました。彼女にとって、迷いなく力を振るえる理由は、恐らくその情の深さにあります」


 サンダーが腕を組んだまま、静かに窓の外へと視線を逸らした。


「なるほど……。強さの理由が、優しさというわけか」


 アレクシアが、静かに呟いた。


「はい。……そして恐らく、今回もそうでしょう。エレメントのために迷いなく戦う、その姿勢は、他の誰よりも真っ直ぐなはずです」

「作戦の方は、昨日話し合った通りだな」


 アレクシアが、確認するように言った。


「二重の防御で受け止め、リデルとサンダーが左右から崩し、最後にルティナとストームで仕留める」

「はい。……あとは、タイミングだけです。一つでもずれれば、成立しません」


 その言葉に、馬車の中に、静かな緊張が満ちた。

 しばらくの沈黙のあと、リデルがふと思い出したように、視線を巡らせた。

 馬車の隅、荷物の間に、あの人形がちょこんと座っていた。肩かけ鞄をかけられたまま、ずっとそこに鎮座している。


「……なぁ、そういえば」


 リデルが真剣な顔で、人形の方を向いた。


「シドーよ。我らはこれより、スターサラマンダーとの決戦に赴く」


 誰も、それを止めなかった。


「我らの中で最も辛い役目を、お主に任せることになった。留守を頼むぞ」

「行ってくるからな」


 アレクシアも真顔のまま、人形に向かって軽く頷き、肩に掛かっている鞄をかけなおした。


「無事に、戻ってくる。……武運を祈ってくれ」

「必ず、スターサラマンダーを倒してきます。どうか見守っていてくださいね」


 人形は当然、何も答えなかった。三人は、揃ってどこか満足気な顔をした。


「……感情移入が、少々、行き過ぎているのでは」


 ストームが、抑揚のない声でそう指摘した。


「四堂悠太の敵討ちに行くみたいになっているが、本人は生きているぞ。城で料理人をやっているだけで」


 サンダーも呆れたように突っ込んだ。


「分かっておるわ! じゃがこの人形は、シドーの分身じゃぞ。礼を欠くわけにはいかぬ」

「その人形、四堂悠太に全然似ていないと思うんだけどね」


 ブリザードが、はっきりと呟いた。


「何を言うか、ブリザード。お主の目は節穴か! どこからどう見てもシドーにしか見えぬ。我の目は、人間の五倍良いのじゃぞ」

「視力の問題ではなく、認識力の問題だと思うよ」

「……念のため申し上げますが、その二つは、別の能力です。ブリザードの言う通りです」


 ストームが、静かに補足した。


「そ、そんな……! お主らまで……!」


 その様子を見て、ブリザードが僅かに口の端を上げた。


「まぁ、君たちがそれでいいなら、良いんじゃないかな。……何も喋らない人形に真剣に語りかけているのは、奇妙ではあるが美しくもあるよ」


 馬車の中に、束の間の和やかな空気が流れた。

 しばらくして、ルティナが窓の外を見つめ言った。


「……この先で、決着をつけましょう。シドーさんが一日でも早く、みんなの顔を見られるように」

「うむ。……何としても、勝つ。それが、あやつを待たせぬための、唯一の方法じゃ」


 リデルの言葉に、全員が力強く頷いた。馬車の内には、確かな覚悟が満ちていた。


(……この者たちは、いつも、誰かのために動いている)


 ストームはその様子を、何も言わずに見つめていた。それが、データにはない類の、確かな強さなのだと、今なら分かる気がした。


(自分一人では、到底敵わない相手でも……この者らとなら、勝てるかもしれない)


 そう本気で思っている自分に、ストームは密かに驚いていた。……だが、悪くない、とも思った。


「見えてきました」


 ストームの声に、全員の視線が窓の外へと向いた。

 乾いた岩山の向こうに、赤く染まった空と、そこに揺らめく陽炎のようなものが見えた。

 火の精霊サラマンダーの祠が、目前に迫っていた。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。リアクションも、嬉しいです、ありがとうございます。

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引き続きよろしくお願いいたします。

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