第八話 魔法少女
この章は、視点が主人公ではありません。魔法少女の視点です。少し読みにくいかもしれませんが、よろしくお願いします。
崖の上から、一人の少女が街を見下ろしていた。
眼下には大きな街道が走り、人や馬車が行き交っている。その先には都市や村が点在し、三つの種族が肩を並べて暮らしている。
(私はこれから……この世界を)
少女の目が曇った。風が吹き、長い金髪が静かに揺れる。
「エレメント」
振り返ると、森の向こうから四人の少女が歩いてきた。
「ウンディーネ、サラマンダー、シルフ、ノーム……来てくれてありがとう。こんなことに巻き込んでしまって、ごめんなさい」
「なーに言ってんの! 私たちは仲間でしょ? 仲間が困っていたら助けるなんて、当たり前のことじゃん」
赤みがかったピンク色の髪のスターサラマンダーが、ぐいとエレメントの肩を叩いた。その手の温もりが、肩に残った。
「そうだよ。ずっとそうやってきたじゃない。また、みんなで乗り越えよう」
「エレメント一人で抱え込まないで。悩みを分かち合わせてください」
仲間たちの温かい言葉に、エレメントの目頭が熱くなった。
「でも……今回は、いつもとは違うから。みんな、こんなことやりたくないでしょう……」
「あーもうっ、エレメントの悪い癖ニャ。いつまでも水臭いこと言ってニャいで、さっさと変身してこの世界をぶっ壊すニャ!」
エレメントの肩に乗っていた妖精ねこニャンが、あっけらかんと言った。
あまりにも直球な言葉に、魔法少女たちが噴き出した。空気が少しだけ軽くなる。
「ほんと、ねこニャンの言う通り! みんないくよ‼」
五人が変身アイテムを取り出す。
『スターナイツスピリットチェンジ!』
光が弾ける。五つの輝きが、崖の上に踊る。
「未来を夢見る希望の光! スターエレメント!」
「燃え上がる灼熱の炎! スターサラマンダー!」
「英知にゆらめく癒しの水! スターウンディーネ!」
「勇気の翼で切り開く風! スターシルフ!」
「芽生えた命を守護する大地! スターノーム!」
かつて彼女たちは、レインボーランドを助けるために魔法少女になった。
だが今、その使命は逆だった。
「シャイニングクリスタルラッシュ!」
「フレアバースト!」
「アクアブレス!」
「フェザートルネード!」
「アースウォール!」
五人の必殺技が、街を襲った。
炎と水が押し寄せ、竜巻が大地を削る。
逃げ惑う人々の姿が見えた瞬間、エレメントの手が止まった。
「立ち止まったらダメ! 私たちは絶対にあきらめない。そうでしょ、エレメント‼」
仲間の声が背中に届く。
エレメントは目を閉じた。
魔法少女になったあの日から、守りたいものは変わっていない。
大切な人たちと、その未来。
この世界がある限り、その未来は永遠に奪われ続ける。
「ごめんね、みんな。私、もう迷わない」
ゆっくり目を開く。
「絶対に取り戻そう。——輝く未来を」
「今ニャ! みんなの力を合わせるニャ!」
五人は手をつなぎ、目を閉じる。背中から羽が生え、足が地面を離れた。空へ——。もっと高く、もっと遠く。
突如、巨大な虹が世界を覆った。
「闇夜を切り裂き、輝く一番星でみんなを守る——」
「スターナイツ・レインボー・フィナーレ」
魔法少女たちの力を合わせた必殺技で、世界が壊された。
***
目を覚ますと、異世界の宿屋の天井があった。
(……夢、だったのか)
夢にしては、あまりにも鮮明だった。
少女たちの表情も、光の色も、エレメントの声も——全部、はっきり覚えている。
それに、あの場所は——。
(レインボーランドだった……)




