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小説家志望、異世界に転生する ~僕の黒歴史キャラが異世界を救う~  作者: 赤いたぬき
第三章 魔法少女たちの正義と、僕の大切なもの
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第百二十四話 秘密の返済と、アレクシアが勝った

 フィーネの街を出て、宿場町へ向かう道を歩きながら、アレクシアが口を開いた。


「……シドー」

「うん」

「この金貨二百枚は、お前に返す」


 アレクシアは、ずっしりと重い金貨袋を差し出した。


「以前、ヴィクター隊長から預かった生活費から借りた百枚。それと、今日お前から渡してもらった百枚だ。これで全部返したことになる」

「あ……うん」


 四堂悠太は受け取りながら、危うく「いや実は……」と言いかけて、口を閉じた。

 ルティナの顔が浮かんだ。

 あの日の、笑顔なのに目が全く笑っていない、あの顔が。

 ——『もしシドーさんでも、あの二人を傷つけるようなことをしたら——私、許しませんよ? ……半分くらいは』


(……あれは半分冗談じゃなかった。絶対に言えない)


「……ありがとう、アレクシア」


 四堂悠太は金貨二百枚を受け取りながら、心の中でルティナに向かって謝った。


(ごめん、ルティナ。本当はヴィクター隊長から預かった生活費だけじゃなくて、ルティナが領地運営して手に入れたお金も入ってたんだよな……)


 アレクシアは、残った二十五枚の金貨を静かに見つめた。


「……ずっと気になっていたんだ」


 ぽつりと、そう言った。


「借りたままにしているのが、騎士として情けなかった。今日、全部返せて良かった」

「うん」


(アレクシアは知らない。本当に返すべき相手が誰なのかを。……でも、それでいい)


 四堂悠太は金貨袋を鞄にしまいながら、そっと思った。


(ルティナが、それを望んでいるから)


***


 宿場町に着いたのは、すっかり日が暮れた頃だった。宿屋の前で、見慣れた顔が待っていた。


「遅かったのぅ‼ 何があったのじゃ‼」


 リデルが、腕を組みながら言った。その腕に、包帯が巻かれている。


「……リデル、その腕」

「気にするな‼ 犬の噛み傷じゃ‼ これは勲章じゃ‼」


 リデルが、胸を張って言った。


「ルティナに治してもらえば良かったのに」

「要らぬ‼ これはあ奴との絆の証じゃ‼」

「絆の証で流血するな……」


 アレクシアが、呆れたように言った。


「ルティナたちは?」

「中で待っておる。早く入れ、腹が減って仕方ない!」


***


 宿屋の食堂に入ると、ルティナが席についていた。四堂悠太とアレクシアの姿を見て、ほっと息を吐いた。


「ご無事で、良かったです。……何かあったのですか? 少し遅かったので」

「色々あって」


 四堂悠太が、曖昧に答えた。アレクシアも、視線を逸らしながら言った。


「……フィーネの街で、少し寄り道をした」

「賭博場ですか?」


 ルティナが、すかさず聞いた。アレクシアが、真っ赤になった。


「そ、それは……」

「まぁ、ご無事なら——」


 そこで、ルティナの視線が、四堂悠太の持つ金貨袋に止まった。明らかに、いつもより膨らんでいる。


「……シドーさん、その袋」

「あ……うん」

「……もしかして」


 ルティナが、アレクシアを見た。


「アレクシアさん、今日の賭けは……」

「あぁ。……少し、勝った」


 ルティナの目が、珍しく丸くなった。


「……アレクシアさんが、勝ったのですか?」

「あぁ」

「……何枚ですか?」

「二百二十五枚だ」

「…………」


 ルティナは、しばらく絶句していた。これまで、どんな状況でも動じることのなかったルティナが、口をぱくぱくさせている。


「……どうやって」

「シドーが、策を考えてくれた」


 アレクシアが、さらりと言った。ルティナの視線が、今度は四堂悠太に向いた。


「……シドーさんが?」

「まぁ……色々あって」


 四堂悠太が、苦笑しながら答えた。

 ルティナは、四堂悠太とアレクシアを交互に見てから、静かに息を吐いた。


「……詳しくは、聞かない方が良さそうですね」

「うん、その方がいいと思う」


 四堂悠太が、すかさず答えた。

 リデルが、肉を頬張りながら言った。


「にしても、アレクシアが賭けで勝つとは‼ 我も驚いたぞ‼」

「……私も、驚いている」


 アレクシアが、真顔で言った。

 食堂に、小さな笑いが起きた。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。


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