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小説家志望、異世界に転生する ~僕の黒歴史キャラが異世界を救う~  作者: 赤いたぬき
第三章 魔法少女たちの正義と、僕の大切なもの
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第百二十話 だっこ‼ と、けっこんしてるの?

 フィーネの街への道は、街道から外れた細い山道だった。馬車は通れないため、三人は歩いて向かうことになった。


「ミアちゃん、疲れてない?」


 四堂悠太が聞くと、ミアは首を横に振った。


「……へいき」


 小さな声で、そう答えた。出会った頃の泣きはらした顔は、少し落ち着いてきている。それでも、時折不安そうに辺りを見渡す様子が、四堂悠太の胸を締め付けた。


「もうすぐお母さんに会えるから、大丈夫だよ」


 ミアは、こくりと頷いた。

 しばらく歩いていると、ミアがアレクシアの腰の剣に気づいた。


「なにそれ‼ ひかってる‼」


 ミアが、目を輝かせながら言った。


「……剣だ。騎士が使う武器だ」

「けんし‼」


 ミアが、嬉しそうに繰り返した。


「おねえさん、けんし?」

「あぁ。……騎士だからな」

「つよい?」

「……まあ、そうだな」


 アレクシアが、照れたように前を向いたまま答えた。


「じゃあ、おかあさんをまもってくれる?」

「……あぁ。この街に魔王軍が来たら、必ず守る」


 アレクシアは、静かにそう言った。ミアは、その言葉をじっと聞いてから、小さく頷いた。


「……ありがとう」


(アレクシア、五歳の子どもにも、真剣に答えるんだな……)


 四堂悠太は、その横顔を見ながら、そっと思った。

 さらに歩き続けると、ミアの足取りが少しずつ遅くなってきた。


「つかれた……」


 ミアが、ぽつりと言った。


「もうすぐだよ。あと少し頑張れる?」

「……まだ?」

「もうすぐだって」

「……まだ?」


(さっきも聞いてたよね……)


 四堂悠太が苦笑していると、ミアがアレクシアに向かって、両手を広げた。


「だっこ‼」

「……え?」


 アレクシアが、珍しく動揺した顔をした。


「わ、私が?」

「うん‼ おねえさん、つよそうだから‼」


 アレクシアは、しばらく困惑した様子で立ち尽くしていた。それから、ゆっくりとミアの前にしゃがみ込んだ。


「……仕方ないな」


 そう言いながら、ミアをそっと抱き上げた。ミアが、嬉しそうにアレクシアの首にしがみついた。


「たかい‼」

「……落ちるなよ」

「おねえさん、あったかい」

「……そうか」


 アレクシアの口元が、わずかに緩んだ。


(アレクシア……意外と、こういうの、得意なんだな)


 四堂悠太は、その光景を見ながら、そっと思った。ミアを抱っこしながら歩くアレクシアの横顔は、普段の騎士団長としての厳しさとは違う、柔らかい表情をしていた。

 そのとき、道端から声がかかった。


「あらあら、若いパパとママだねぇ。かわいいお嬢ちゃんだこと‼」


 通りすがりの老婆が、にこにこしながら言った。


「ち、違います‼」

「そ、そういう関係ではない‼」


 アレクシアと四堂悠太が、同時に声を上げた。老婆は、きょとんとした顔をしてから、またにこにこと笑いながら歩いていった。

 ミアが、アレクシアの腕の中から、二人を交互に見た。


「……けっこんしてるの?」

「「してない‼」」


 二人の声が、またも綺麗に揃った。

 ミアは、少し考えてから、真剣な顔で言った。


「……でも、なかよしだよね?」

「……まあ、そうだな」

「……うん、まあ」


 二人が、顔を見合わせた。それから同時に、視線を逸らした。


(な、なんで顔が熱くなってるんだ……)


 四堂悠太は、こっそり自分の頬を押さえた。

 ミアは、そんな二人の様子など気にもせず、アレクシアの肩から身を乗り出して、遠くを指差した。


「あ‼ ちょうちょ‼」

「……落ちるから、暴れるな」

「つかまえたい‼」

「……駄目だ」

「えー‼」


 アレクシアが、ミアをしっかり抱え直しながら、歩き続けた。その顔は、まだわずかに赤かった。


***


 フィーネの街は、リューベックよりずっと小さな街だった。石造りの家が並ぶ、静かな街並み。大通りには、いくつかの露店が出ていて、穏やかな午後の空気が漂っている。

 街の入り口に差し掛かったとき、ミアが急に身をよじった。


「おかあさん‼」


 大通りの端に、一人の女性が立っていた。ミアと同じ色の髪を持つ、若い女性だった。ミアの声を聞いた瞬間、女性の顔が崩れた。


「ミア‼」


 アレクシアが、ミアをそっと地面に降ろした。ミアが、お母さんに向かって駆けていく。二人が抱き合った。女性は、ミアをぎゅっと抱きしめながら、何度も何度も名前を呼んでいた。ミアも、お母さんの胸に顔を埋めて、声を上げて泣いていた。

 四堂悠太は、その光景を少し離れた場所から見ていた。隣で、アレクシアが静かに目を細めていた。


「……良かった」


 アレクシアが、小さく呟いた。


(……良かった。アレクシアがいてくれて)


 四堂悠太も、そっと思った。


(もし自分一人でミアちゃんを連れて歩いていたら、通りすがりの人から幼女連れ去りの疑いを持たれて、事案になっていたかも……いや、それより先に良かったと思うことがあるだろう)


 女性が顔を上げ、四堂悠太とアレクシアに気づいた。


「あなた方が、ミアを……?」

「たまたま道で見かけたので」


 四堂悠太が答えると、女性は深々と頭を下げた。


「本当に、ありがとうございます。……途中ではぐれてしまって、私も探し回ったんですが、見つからなくて……」

「元気でしたよ、ミアちゃん。……泣きながらも、一人でしっかり立ってました」


 四堂悠太がそう言うと、ミアが母親の腕の中から、こちらをじっと見た。それから、小さく手を振った。


「……またね」

「またね、ミアちゃん」


 四堂悠太も、手を振り返した。アレクシアも、静かに手を振った。

 ミアは、アレクシアをじっと見てから、にっこりと笑った。


「おねえさん、だっこうまかったよ‼」

「……そうか」


 アレクシアの口元が、またわずかに緩んだ。

ここまで小説をお読みくださり、ありがとうございます。


ブクマ登録、評価、リアクションなどしてくださって、とても嬉しいです。ありがとうございます!

皆様のおかげで、続きを頑張って書くことができます。

これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

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