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小説家志望、異世界に転生する ~僕の黒歴史キャラが異世界を救う~  作者: 赤いたぬき
第三章 魔法少女たちの正義と、僕の大切なもの
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第百十七話 漆黒の闇と、世界を救い隊と、美意識の話

「そういえば、シドーとアレクシアはどうした? 姿が見えんが」

「リューベックの街に来る途中、迷子の女の子に会いました。二人は女の子を、フィーネの街まで送り届けにいきました」

「……そうか。元気ならいい。相変わらず人助けまでやって、感心なことだ」

「二人とも変わりありませんよ。それはそうとヴィクター隊長」


 ルティナが、一歩前に出た。


「この方々は、私たちの仲間です。リューベックの街を守るために、力を貸してくださいます。……信じてもらえるかどうかは、これからの行動で示していただくことになりますが」


 ヴィクターは、しばらくブリザードを睨みつけていた。それから、ゆっくりと息を吐いた。


「……コレット。お前が信じるなら、俺も信じる。だが、もし何かあったら——」

「何もありません」


 コレットが、きっぱりと言った。


「……分かった」


 ヴィクターは、渋々といった様子で頷いた。


「そこまで言うなら、俺も腹をくくろう。おまえたちを、正式に世界を救い隊の隊員として迎え入れる」

「……え?」


 ブリザードが、露骨に嫌そうな顔をした。


「その、センスのかけらもない名前の組織に、私たちが入るのかい?」

「何だと⁉」

「いや、だって『世界を救い隊』だよ? 目的をそのまま名前にしただけじゃないか。もう少し、ひねりというものが欲しいね」


 ブリザードは、大げさにため息をついた。


「それに比べて、ダークキング様が率いる『漆黒の闇』。響きも、字面も、実に美しい。名前を聞いただけで、どんな組織なのか想像が膨らむだろう?」

「真っ黒な組織だってことしか分からんわ‼」


 ヴィクターが怒鳴った。


「……どちらも、もう少し考える余地はあると思いますけど」


 コレットが、小さく呟いた。


「ん? 何か言ったか、コレット?」

「いえ、何も。……ただ、『世界を救い隊』という名前を初めて聞いたとき、私も少し、間がありましたので」

「コレット⁉ お前まで‼」

「でも今は、慣れました」

「慣れたって言い方も、なんか釈然としないな‼ 世界を救い隊の何が悪い⁉ 何をする組織なのか、一発で分かるだろうが‼」

「それが問題なんだよ。名前には、もう少し神秘性が必要なのさ」

「いらん‼ そんなもん‼」

「せめて『救世の暁』とか、『希望を紡ぐ者たち』とか……」

「勝手に改名するな‼ 嫌なら入らんでいい‼」

「……隊長」


 ストームが、口を挟んだ。


「名称に関する議論は、後にしませんか。今は、リューベックの防衛と復興に協力することが先決かと」

「そうだぞ。わしは、強い敵と戦えるなら、名前など何でも構わん」


 サンダーも、腕を組んで頷いた。


「ほら見ろ‼ お前だけだぞ、文句を言ってるのは‼」

「……まったく。美意識というものを理解しない連中ばかりだねぇ」


 ブリザードは肩をすくめた。


「まあ、仕方ない。入隊はしてあげるよ。ただし、私がその名前を気に入ったわけじゃないからね」

「こっちだって、お前に気に入ってもらうためにつけた名前じゃねぇ‼」


 ヴィクターは、深いため息をついた。


「……いいか。正式に迎え入れる以上、俺はお前たちを隊員として扱う。だが、過去のことまで水に流したわけじゃない。信頼できるかどうかは、これからの働きで判断させてもらうぞ」

「承知しました」


 ストームが、頷いた。


「うむ。異存はない」


 サンダーも、それに続く。


「はいはい。分かったよ、隊長」


 ブリザードだけは、最後まで不満そうだった。

 こうして、かつて世界を侵略していた三幹部は、正式に世界を救い隊の隊員となった。

 ——ただし、一名だけは、組織名に納得していなかった。

 ひとしきり騒がしいやり取りが落ち着いたところで、ルティナが口を開いた。


「……あ、それと、ヴィクター隊長。もう一つお願いがあるんです」

「なんだ?」

「私たちが北の山の城で借りた馬車を、返しておいていただきたいんです。場所は、この辺りです」


 そう言って、地図を広げた。


「馬車を返すんだな。分かった。この先はどうするんだ? サランセルゴ共和国に行って、さらに南下してアルブリー王国まで行くんだろう。徒歩じゃ時間がかかるし、移動が大変だ。リューベックの街にある馬車を使ったらどうだ?」

「そうですね……。そうさせて頂きます。良いですか、コレット副隊長?」

「えぇ、もちろん」


 ふと、考え込んでいたヴィクターが呟いた。


「サランセルゴ共和国騎士団に、ヴィンラント連合魔導部隊、アルブリー王側近の用心棒に、世界を救い隊リューベック支部、そこへ魔王軍幹部まで加わって、リューベックの街に十分すぎる戦力が集まったな。これで街の防衛も、復興も、盤石のはずだ」

「……はずだ、という言い方が気になります」


 ルティナが首を傾げた。


「ああ、ありがたい話なんだがな。なんでか知らんが、これだけ戦力が揃うと、逆に不安になってくる。俺の長年の勘が、嫌な予感しかしねえと言ってる」

「……統計的に見ても、戦力の集中と大規模な脅威の到来には、相関があります」


 ストームが淡々と言った。

 ルティナは、しばらく無言でいた。ヴィクターの勘なら、外れることもある。だが、ストームのデータが同じ結論を示しているなら、話は別だった。


「……備えておいた方が、良さそうですね」

本編が100ブクマ・総合評価1000ptを突破しました!

完結済みのヘレナ編も、今でもたくさんの方に読んでいただけていて、本当に嬉しいです。

いつも読んでくださっている皆様、ありがとうございます!

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