第百十三話 種もみを託された無能、実は最強の米農家でした ~異世界スローライフ農業無双~
二日目の夕方、一行は小さな農村に差し掛かった。
「今夜は、あの村で休みましょう」
ルティナの言葉に、全員が頷いた。村の宿屋に声をかけると、宿屋の主人が話しかけてきた。
「旅の方々は、どちらからおいでで?」
「北の方から来ました。南を目指しています」
四堂悠太が答えると、主人は感心したように頷いた。
「そうですか。……この辺りも、最近は魔王軍の影響で、畑が荒れましてな。なかなか、作物が育たなくて困っているんですよ」
(あ……種もみ)
四堂悠太は、鞄の中の布袋を思い出した。
「あの……これ、受け取ってもらえますか?」
種もみの袋を差し出すと、主人は不思議そうな顔をした。
「これは……見たことのない種ですな。何の種で?」
「稲、というものです。水を張った田んぼで育てる作物で……うまくいけば、美味しいご飯が食べられるようになります」
「水を張った田んぼ……?」
主人が、首を傾げた。
「……少し、説明が難しいですね」
(こういうとき、絵を描いて見せるしかないか)
四堂悠太は、紙を借りて、水田の簡単な絵を描いてみた。だが、主人の顔はますます困惑している。
「……実際に、見てもらった方が早いかもしれません」
翌朝、四堂悠太は村の外れにある空き地へ、主人を連れて行った。
「この辺りに、水が引けそうな場所はありますか?」
「あちらに、小川がありますが……」
(確か、田舎の親戚の家に遊びに行ったとき、田植えを手伝わされたことがあった。あの頃は面倒くさいとしか思わなかったけど……まさかこんなところで役に立つとは)
四堂悠太は、見よう見まねで、小川の水を引き込む溝を掘り始めた。リデルが、「我も手伝うぞ‼」と言いながら、ハンマーで岩を砕いて溝を広げていく。サンダーが、無言のまま重い石を脇にどかし始めた。
「……なぜ、わしがこんなことを」
サンダーが、ぼそりと呟きながらも、手を止めなかった。
(手を止めないなら、なぜって思わなくていいと思うんだけど……)
しばらくして、小川の水が空き地に流れ込み始めた。水が広がり、泥が柔らかくなっていく。
「こんな感じの場所に、苗を育ててから植えると……こういう作物が育ちます。まず種もみを水に浸けて、苗を育てるところから始めてみてください」
四堂悠太が説明すると、主人は目を丸くした。
「水の中で、作物が育つのですか⁉」
「はい。……うまくいくかどうかは、やってみないと分かりませんが。少し一緒にやってみますか?」
「良いんですか? お願いします!」
「こうやって、数日間水に浸けることで、発芽しやすくなるんです」
四堂悠太は、農家の主人と並んで、種もみを桶の水に浸けていった。
「ほほう……」
主人が、感心したように頷いた。四堂悠太も、桶に種もみを丁寧に浸けながら、なんだか不思議な充実感を覚えていた。額から吹き出る汗も気にならないほど、清々しい気分だった。
(ちゃんと芽が出るといいな……)
気づけば、四堂悠太は真剣な顔で桶を覗き込んでいた。
(発芽したら、苗代で苗を育てて……うまく育ったら田植えして……)
脳裏に、青々とした水田が広がっていく。風に揺れる稲穂。黄金色に実った田んぼ。稲刈りをする自分の姿。
(豊作だ‼ この世界に、お米が広まっていく‼ レッド、見てるか‼
……って、異世界スローライフ農業無双が始まってしまう‼ いやいや、他にやることがあるんだった‼)
その夜は、主人の厚意で、家に泊めてもらうことになった。馬も、納屋でゆっくり休ませてもらえた。食卓に並んだ素朴な料理を囲みながら、四堂悠太は、ふと脳裏に浮かんだことを振り払った。
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サブタイトルで遊ぶのが楽しくて、ついやってしまいます(笑)
ギャグばかりやっていないで、しっかりストーリーも書いていきますので、これからもどうぞよろしくお願いします。




