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もう一つの楽園  作者: 村野夜市


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青い鳥作戦?

なにそれ?


目を丸くした僕に、いっちゃんは得意気に羽を開いてポーズをとった。


「万が一、この研究院が、不本意な勢力の支配下に置かれたときに、主導権を取り戻すために仕掛けられた非常用の作戦にございます。」

「きゅうちゃんたちは、本当は、そのために作られたんだ。」


なーんと。

そんなもの、いつの間に?


「平常時には、所長に代わって、研究員たちの健康を見張る。

 しかし、非常時には、この研究院自体を護る、もの。」

「つまり、所長代理、ってわけ。」


なるほど。

所長代理、ってのは、そういう意味もあったのか。


「しかし、あの襲撃は、研究院にとっても予想外でした。」

「まさかさあ、知の集大成を、力技で打っ壊しに来るなんて、誰も想定してなかったんだ。」


「実は、青い鳥作戦は、未完成の作戦です。」

「きゅうちゃんたちも、実は、試作機、で、実際に使われたことは、一度もないんだ。」


確かに。いっちゃんも、試作機、って言ったっけ。


もしかしたら、いっちゃん一機だけ封印を解かれていたのは、襲撃の混乱のなかで、せめて、それだけ、やっておいたのかもしれない。


「いまや、全機の封印が解かれ、配備も完了しました。」

「この研究院は、完全に、きゅうちゃんたちの制御の下に入ったんだよ。」


「侵入者らの気付かないうちにね。」

「こっそり、のっとり、大成功~~~!」


くくくくく、とちょっと悪い顔して笑い合う。

やっぱり、この鳥たちを作った人のセンスって、ちょっと独特。


やたらと得意気なふたりに、僕は思わず拍手を送った。


「ここは知の殿堂。

 ここには、たくさんの知の結晶が集められています。」

「ルクス王の治世の下、異種族間の争いは最少となり、各々の得意分野を活かした発明が数多く成し遂げられました。」


「万にひとつ、それらを悪用されることなどないよう、機密事項は研究院の地下の格納庫に厳重に保管されています。」

「しかるべき継承者が現れるとき、その封印は解かれることになっています。」


しかるべき、継承者、かあ。


いっちゃんときゅうちゃんは互いに顔を見合わせると、それぞれ左右の羽を広げて、ポーズをとってみせた。


「そして、あなたには、その資格があります。」

「ごめんね?きゅうちゃんたち、君と一緒に歩きながら、君のこと、試験してた。」


はい?


「そこそこに賢く、それなりのエエル量があり、何より、暴力的な性質を持たないこと。

 あなたは、それに、ぴったりでした。」

「君の記録は、元々研究院にもあったからね。

 なあに、簡単な試験をしただけさ。」


そこそこ、とか、それなり、とか。それでいいの?

それならまあ、大抵の人は、合格になりそうなもんだけど。


「今こそ、この知の集大成を引き継いでいただきたく存じます。」

「この研究院の所長になってみない?」


いや、えっと、それは…


「それよりさ!」


僕は、大急ぎで話しを変えた。

というか、そもそも僕は、そのために、ここに来たんだ。


「僕は、王のところに行ったきり戻ってこない仲間を探すために、ここにきたんだ。」


「仲間?」


「って言っても、僕はその人の顔も知らないんだけど…」


実は、名前も知らない。


「多分、第四の種族、って呼ばれてる人だと思う。」


「第四の種族?」


「その人のエエルを見つけられないかな?」


「チチチチチ。

 タンサクヲ、カイシシマス。

 …ケンサクチュウ…ケンサクチュウ…」


僕の話しを聞いたいっちゃんは、すぐに、探索に入ってくれた。


「大丈夫。

 きっとすぐに見つかると思うよ。」


きゅうちゃんは励ますように僕を見る。


いっちゃんの検索は、少し時間がかかったけれど、その間に、僕は、無地の箱を並べて壁を作っておいた。


「ニケンノ、ケッカガ、ハッケンサレマシタ。」


しばらくすると、いっちゃんはそう言って、くわっ、と口を開いた。

壁に映し出された見取り図には、二か所、赤く光る点があった。


「第四の種族、らしいエエルは、二か所、感知されたみたいだね。」


きゅうちゃんもそう言った。

それに、僕は思い当たった。


「最初に王のところにお使いに行った人が戻ってこなくて。

 その人を探しに、もうひとり、行ったんだ。

 だけど、そのふたりとも、消息不明なんだよ。」


多分、この二か所は、そのふたりだ。

とにかく、生きていてくれたみたいでよかった。


その二か所はどちらも、ここから少し離れていた。

それに、困ったことに、そのどちらへ行くにも、王の兵士たちの大勢いる場所を通らなければいけなかった。


それでも、僕は、宣言した。


「彼らを助けなくちゃ。」


継承とか、悪いけど、そっちは後回しにさせてもらうよ。


いっちゃんときゅうちゃんはうなずいた。


それから、いっちゃんときゅうちゃんは、少しの間、チチチチチ、と何か会話をしていた。

おそらくは、それは彼らの言語で、僕らに分かる言葉を使うより、何倍も伝達量のある言語だ。


「人命はいついかなるときも、すべての事項に優先されます。」

「きゅうちゃんたちも、お手伝いするよ。」


ふたりは僕を見て、そう言ってくれた。





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