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配置された青い鳥が増えると、より事細かに、研究院の中の様子が分かるようになった。
「ミギコウホウニ、イドウチュウノネツゲンヲ、ハッケンシマシタ。
ネンノタメ、ウカイシテ、ススミマス。」
いっちゃんは、僕のエエル感知よりずっと広い範囲のエエルの変化を敏感に感知してくれる。
それもこれも、その位置に配置した青い鳥のおかげだった。
「迂回のついでに、少し回り道をしてもよろしいでしょうか。」
「かまわないけど?」
「実は、この先に、とても役に立つモノ、がいるのです。」
この場合の、モノ、ってのは、物、なのかな、者、なのかな、なんて考えているうちに、いっちゃんは話しを進めていた。
「そのモノには、わたしと同じ機能が備わっています。
そうして、わたしとの意思疎通も、どの機体より、速く、ほぼ瞬時に行えます。」
「へえ。いっちゃんの仲良しさんなんだ?」
「ナカヨシサン…?
ケンサクチュウ…ケンサクチュウ…
はい。ナカヨシサン、にあたります。」
そっか。それは、頼もしい。
「そのモノがいれば、わたしが見取り図をお見せする間に、そのモノが、あなたに言葉でご説明することも可能になります。
もしくは、そのモノに見取り図を表示させつつ、わたしがご説明することも可能です。」
「それは、助かる。」
さっきの喧嘩、いっちゃんも、気にしてくれてたのかな。
というか、単純に、不便だもんね。
「じゃあ、早く、そこへ行こう。」
「承知しました。
サイタンルートヲ、ケンサクシマス。
ケンサクチュウ…ケンサクチュウ…
ケンサクカンリョウ。
わたしについてきてください。」
いっちゃんは喜び勇んで、僕の前を案内するみたいに飛び始めた。
いっちゃんについて、いくつかの廊下を進み、いくつかの角を曲がったら、その扉についた。
しっかし、いっちゃんの案内がなかったら、僕、こんなにすらすらと研究院を歩けなかっただろうな。
研究院は、初めてくる場所なわけじゃないんだけど。
自分に関係ある場所以外には、ほとんど行かなかったから、いまだに、地理はよく分からない。
それに、ここは、大昔から、増設に増設を繰り返した建物だそうだから。
こっちじゃ二階なのに、ちょっと廊下を歩いたら、三階になってるとか、そういうのもざらにあって。
扉も、廊下のあっちやらこっちやらに、等間隔じゃなくついてるから。
かなりな、迷宮、だといまだに思う。
それを全部覚えているなんて、って、それって、実は、いっちゃんを作った誰か、のおかげなんだけど、つくづく、助かった。
扉の鍵も、先に開けてくれる。
念のため、恐る恐る扉を開いたら、そこもやっぱり、保管庫だった。
「なんだって、こんなにあっちこっちに、保管庫を分けてあるんだろうね?」
一か所にまとめておいてくれたら、助かるのに。
「チチチチチ…ケンサクチュウ…ケンサクチュウ…
ホカンコノ、ゾウエイハ、ヒツヨウニオウジテ、オコナワレマシタ。
ユエニ、ホカンコノ、バショガ、ハナレテ、イルノハ、ツクラレタ、ジキニ、ヘダタリガ、アルタメデス。」
そうなんだ。
つまりはさ。
この保管庫と前の保管庫の作られた間には、すっごくたくさんの研究があった、ってわけか。
そう思えば、あの長い長い廊下も、何回も何回も曲がった角も、研究を続けた道、みたいに思えてきた。
二階から三階へと繋がる廊下も、その長い研究の間にあるのか。
きっと、この次の保管庫も、またちょっと離れたところにあるんだろうな。
さっきの部屋には封印箱がごそっとまとめて置いてあったから、ここもそういうのを期待したんだけど。
一通り探したけど、ここに封印箱はひとつも見当たらなかった。
「本当に、ここなの?」
「シュウゾウヒンノ、キロクニハ、ソウナッテマス…」
ちょっと、しょんぼりしたように、いっちゃんは答えた。
さっきのあの、うきうきした感じとは、雲泥の差だ。
なんだか、気の毒になってしまった。
「…そっか。
もしかしたら、何かの後ろに隠れてるのかもしれないね。
もう少し、よく探そう。」
さっきの部屋でも、箱の列の奥から、また箱の列が出てきた、なんてこともあったし。
しっかし、この前面の箱の列を全部どかすとなると、なかなかに大変だぞ。
僕は、みっちりと詰め込まれた棚の列を見渡して、思わずため息が出た。
なんだって、こんなに、詰め込む、のが上手なんだろう。
せめて、どこに何があるか、ちゃんと記録しておいてくれれば…
そうだ。
記録だ。
「ねえ、いっちゃん、その記録って、見せてもらえる?」
「残念ながら、この記録は、収蔵場所の見取り図にはなっておりません。
収蔵品の品名を、順番に並べてあるだけのものなので…」
「うん。
順番に並んでるんだよね?」
その、順番?、ってのは、なんの順番?
そりゃあ、収蔵した順、なんじゃない?
「まあまあ、ダメ元だから。
見せてよ。」
僕はさっさとその辺の無地の箱を並べて、壁を作った。
いっちゃんは、しぶしぶ、という感じに口を開いた。
僕の作った壁に映されたのは、ずらりと品目を並べた記録だった。
僕はその記録を順に、目で追っていった。
「ええっと、これかな?
所長代理装置、携帯端末、試作品、九十九号機。」
いっちゃんは、黙って、こくこくと頷いた。
「うーん、わりと、新しいな…
ってことは、もっと、手前か。
多人数型飛行円盤?
あ。これ、どこかで見たぞ。」
探している端末の少し前にあったのは、他のより大きくて目立つ収蔵品だった。
「確か…この辺に…
あ。あった。
ってことは、この辺の棚の奥を探してみるか…」
あたりをつけて、棚の箱を取り出していく。
すると、大当たり!
箱の壁の後ろから、すっかり見覚えのある封印箱が出てきた。
「なんとなんと、素晴らしい。
見かけによらず、知性派だったのですね。」
いっちゃんが感動したみたいに叫んだ。
「ここには、ひとつしか、収められてなかったんだね。」
あの部屋みたいに、まとめてたくさん収蔵してあったら、もっと探しやすかったんだろうけど。
「九十九号機は、特別な機体なんです。
何もかも完璧な、特別な機体だからこそ、たったひとつだけ、作られました。」
いっちゃんは、羽を広げて、封印箱を抱きしめるみたいにした。
本当に、仲良しさん、なんだね。
「じゃあ、開けよう。」
僕は封印箱を取り上げると、さっそく、開いてみた。
箱の中から、箱が、ころりん。
それは、これまでのと変わらない。
けど。
ぴぴぴぴぴ…
いきなり、その銀の箱は、鳴りだした。
「激しい感情の波を感知しました!
これは、いったい、なんなのでしょう?
感動?感激?
いいえ、悪いものではありません!」
そう叫びながら、現れたのは、青い鳥。
「おう!この感情の源は…
あなたなのですね?」
青い鳥は、びしっ、とその嘴を僕にむけた。
「え?僕?」
感動してるのは、いっちゃんじゃないの?
「感動。素晴らしい。
日々心を動かされて、人は生きる。
感動とは、生きること。
生きるとは、感動すること。
ええ、せいぜい、感動なさい。
そうやって、心を動かされながら、生きていくのです。」
………まぁた、なんか、面倒そうなの、出てきたなあ………




