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もう一つの楽園  作者: 村野夜市


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道を歩きながら、いっちゃんは、僕を道案内してくれた。


「次の角を右に曲がります。

 三歩進んだところの扉です。」


助かる~。


見取り図は、よく見てきたけど。

手元の地図見ながら歩いたって、道に迷う僕だもの。


「解錠します。」


僕が何か言う前に、鍵も開けてくれる。

なんか、すごく優秀な相棒だ。


「ヨロコビノオーラヲ、タイリョウニ、カンチシマシタ。

 喜んでますね?」


いや、そういうこと、わざわざ言うところは、ちょっと、あれだけどさ。


次の保管庫には封印箱はなかった。

けど、その次の保管庫で、また大量の封印箱を見つけた。


「コレハ、ダイニセダイノ、アオイトリ、デス。」


「第二世代?」


「サイショニ、ミツケタノハ、ダイゴセダイ。

 ソレイゼンノセダイノ、モンダイテンヲ、カイリョウシテ、ツクラレマシタ。」


ふ~ん。

青い鳥にも、第一世代、とか、第二世代、とかあるんだ。


「第五世代の青い鳥が、個体数としては、一番、多いです。

 第六世代、第七世代となるにつれて、個体数は減らされましたが、機能的には増強されました。」


おう。いきなり話し方が、ちょっと変わった。

何も言わなくても、変えられるときには変えてくれるんだ。


「いっちゃんって、やっぱり、第一世代、なの?」


一号機、だもんね。


「はい。

 ただし、わたしは、すべての世代の作られた後に、最終的に、開発されたすべての機能を追加増強されました。

 ゆえに、第一世代とはいえ、最終世代と同じ機能を備えております。」


すいっと背筋を伸ばし、片方の羽を胸に当てて、気取ってお辞儀をしてみせる。

これも、追加された機能のうちかなあ。


「ちなみに!

 第一世代は、わたし一機のみ!

 二号機からは、すべて、第二世代!」


そっか。

まあ、試しにひとつ作ってみて、まあまあうまくいったから、あと何個か作って、そんで問題が出てきたから、それを解決して、みたいに、増えていったんだろう。


第二世代の青い鳥は、ちょうど、十箱あった。

順番に開けていく。

いっちゃんは、第五世代の子たちにしたように、チチチチチ、と何か会話をした。


「彼らは、人の言葉を話しません。

 端末同士の通信のみ可能です。

 負のオーラの検知と、報告のみに特化して作られました。」


そっか。

最初の青い鳥って、そういうものだったんだ。


十羽きれいに並んだ彼らは、同じ青い鳥の姿なのに、どこか少し、作り物めいて見えた。

代表して話すいっちゃんだけ、なんだか、すごく表情豊かに見える。


多分、いっちゃんも、最初はこんなだったんだろう。

だけど、後の世代になって、言葉を話すようになって、その機能も後から追加されたんだ。

その機能、追加しといてもらって、つくづく、よかった。

だって、いっちゃんがしゃべってくれなかったら、僕も、この青い鳥たちに気付かなかったんだから。


第二世代の銀の箱も、同じように手で丸めて、豆粒くらいに小さくなった。

第二世代の子たちは、羽を広げて壁を作るなんて特技もなかったんだけど。

そこは、開いた箱の内側を並べて、壁を作った。


「テンイサセルバショヲ、ヒョウジシマス。」


いっちゃんは、その壁に、見取り図を出してみせる。


「ヒカリノヨワイ、アオイテンガ、マダ、ハイチサレテイナイバショデス。

 コノ、ジュッカショニ、ジュンバンニ、テンソウヲ、オコナッテクダサイ。」


いっちゃんが口をきいている間は、見取り図は出せない。


「あ。

 ちょっと、待って。

 もう一回、さっきの図を見せて?」


「はいはいはい。

 あー、忙しい、忙しい。」


かぱ。

口を開いて、また図を出してくれる。


僕は、青い点を一か所一か所、指差して確認する。


「ええっと、ここと、ここと、ここと…

 あれ?

 九か所しかないよ?」


「左の端!

 箱の折り目に重なってるとこ!」


「って?え?

 ちょっと。しゃべったら、図、見れないよ…」


「あなたが、見つけられないからでしょう?」


なんだか、半分喧嘩になりながら、なんとか、十か所、確認できた。

はあ~。


「分かった。

 じゃあ、そのまましばらく、口、開けておいてね?」


いっちゃんは、口を開けたまま、ちらっとこっちを見てから、小さく頷いた。


さてと。やりますか。


僕は、一か所、一か所、青い光を確認しながら、箱を転送した。

いっちゃんは、何も言わなかったけど、見取り図の中に青い点が光るたびに、羽で小さく拍手をしてくれた。


なんか、やっぱり、いっちゃんって、ちょっと人っぽいよね。

これも、追加された機能なんだろうな。


そうして、なんとか、十か所に、青い鳥の箱を転送し終えた。

いっちゃんは、ようやく口を閉じると、よくできました、と、羽で僕の頭をぱたぱたとはたいた。

???

それって、頭、よしよししてる感じ?


「すっかり、魔法が、上手になりましたねえ?」


「いやあ、おほめにあずかり、光栄です。」


僕もいっちゃんの気取ったお辞儀を真似して、お辞儀してみせた。


魔法はさ、これまでにも何度か習ったんだけど。

なっかなか、上手、にはなれなくてさ。

まあ、できるやつはできる、って程度で。

だけど、ここに来ていっちゃんに習うようになってから、ずんずん上手になってるよ。


「いっちゃんの教え方がいいのかな?」


「さもありなんや!

 わたくし、ある意味、研究院の叡智を集めた、至高の試作機にございますから!」


鳥に鼻ってないけど。

今のは、まさしく、鼻高々、って感じ。


今なら僕にも、いっちゃんの、喜びのオーラが感じられるなあ、とか思った。












 

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