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その夜。
ご先祖様たちと相談した作戦を、僕は、ルクスとアルテミシアに報告した。
「二重の結界?」
ルクスは目を丸くした。
「ほう。
それは、いい。」
アルテミシアは嬉しそうに頷いた。
「村をどう護るか、は、あたしたちも、考えていたんだ。」
「あんまりいい案がなくてさ。
いっそ、全員、避難させておくか?って。
そのくらいしか、思い付かなかった。」
アルテミシアは、とびっきりの笑顔で言った。
「君はやっぱり、すばらしいな。」
ルクスは昔みたいに、僕の髪くしゃくしゃにをかき混ぜた。
「いつの間にかどこかへ行ったかと思えば、あれこれ、相談まとめてくるとはな。」
「霊体との交渉は、君にしかできないからな。」
「その作戦は、俺たちには、思い付けないな。」
ふたりに褒められて、僕も役に立てたみたいで、嬉しかった。
「しかし。
そうか。」
アルテミシアは少し何か考えてから、思い付いたみたいに言った。
「なら、いっそ、外側のエエルを、思い切りブーストしたらどうだ?」
「ぶー、すと?」
アルテミシアは、またいったい、なにを言い出すつもりだろう?
「とことん結界を強化する。
村には決して累を及ばさないように。
それに、強力な魔法も可能になる。
時間差で発動する紋章を描いておけばいい。
攻撃魔法には、有効な属性が分からないけれど。
治癒や防御の陣を作っておくだけでも、効果は大きいだろう。」
次々とアイデアが浮かぶらしい。
奔流のように溢れ出すアイデアを、アルテミシアは語り続けた。
「それにだ。
大量のエエルがあれば、もしかしたら、要の木も、救えるかもしれん。」
それは。
うまくいけば、嬉しい。
いや、なんとしても、うまくいかせたい。
アニマの木の寿命は、半永久的だ、っていう。
今ここで救えたら、あの木は、ずっとずっと長く生きられるだろう。
「そうか。
そうだ。
いっそ、アニマの森を、ここに作ったらどうだ?
この一件の片付いた後も、ここに棲む者はあるわけだし。
だとしたら、これは、有効なんじゃないか?」
アルテミシアは、なにやら、ひとり言のように、ぶつぶつ言い始めた。
「この近辺は、そもそもアニマの木が少なく、エエル量も少ない。
エエルは細かく制御することで、畑の収穫量を増やしたり、気候を安定させたりできる、というのは、ここの実例を見てよく分かった
しかし、今現在は、それも、この村の近辺に限られている。
ここに至る土地は、ただの荒れ地だ。
そこもまた、人の棲める土地にするには、ここに大きなエエルの発生源を作っておくのもいいかもしれない。
それに、ここには、エエルの流れを細かく制御できる達人たちも揃ってるんじゃないか。
おう。
すばらしいぞ!」
???
「なんか、思い付いたらしいな?」
ルクスは僕に耳打ちしてにやっと笑った。
「さあて。
そろそろくるぞ?
下僕たちは、姫の命令で働くとすっか?」
なんか、それ、久しぶりだね?
僕も笑ってうなずいた。
「ブブも、ブブも~。」
ブブも嬉しそうに加わってくる。
その僕らを見て、姫は早速、のたまった。
「ブブ、君の疑似アマンに、今、アニマの木は何本くらいいる?」
「わかりません!」
お、っと。
元気よく答えたブブに、ルクスと僕が苦笑する。
アルテミシアはすかさず僕に視線を移した。
「じゃあ、君、ちょっと行って、どのくらいいるか、見てきてくれないか。」
「了解。」
僕は大きく頷いた。
姫は満足気にうなずくと、お次はルクスに言った。
「ルクス!
君は、この地に発生させたいエエル量を計算して、アニマの木を何本植えるか、どの配置で植えるかを、考えてくれないか?」
うわー、それ、大変そう…
僕にはそんな計算、無理だよ。絶対。
だけど、ルクスは、にやっと笑って、大袈裟なお辞儀をした。
「承知いたしました、姫君。」
あ。
あれ、いいな?
僕も、やればよかった。
次、真似しようっと。
僕はさっそく、ブブに疑似アマンを開いてもらった。
中に入ってびっくり。
なんだ?ここは?
ここには、闇の壁や闇の怪物に力を吸い取られて、うんと小さく細くなってしまったアニマの苗木が、たくさん、保管されていた。
みんな弱ってしまっていて、主も、木の中で眠ったまま、出てこれなくなっていたんだけど。
い、いつの間に?
大勢の幼児が、甲高い奇声を発して、倒けつ転びつ、こっちに駆け寄ってきた。
「あるじさま~。」
「あるじさまっ!」
「あ、る、じ、さ、まっ!!!」
口々に、叫ぶ。
その迫力に圧されて、一歩後退した僕は、そのままそこに尻もちをついた。
すると、その僕の胸目掛けて、一斉に、幼児たちは跳んだ。
ぼすっ。がすっ。かはっ。
一番乗りを目指す子どもの勢いは大したもので、その後ろにも次々と、子どもたちが跳んでくる。
仲間の上に飛び乗り。手だの足だのを踏みしめ。踏みしめられ。
重量はないから、実害ってのはないんだけど。
あったかくて、やわらかくて、甘い香りのする生き物に、僕はもみくちゃにされる。
苦しいんだか、幸せなんだか、もう、全然、分からない。
いやもう、とんでもない混乱だった。
ぴぴーーーっ!
僕の後ろから、けたたましい笛の音が鳴り響く。
すると、大騒ぎしていた幼児たちは、一斉に跳ね起きて、ずらっと見事に整列した。
振り返ったら、そこに、笛を手に持ったブブがいた。
あれ、さっきの、ぴぴーーーっ、は、この笛か。
ブブは、ちょっとお兄さんぶって、みんなの前に立つ。
「ご挨拶。」
ブブの号令で、幼児たちは、一斉にお辞儀した。
「こんにちはーっ、あるじさま。」
うっ。
なんて、可愛い。
僕は思わず、両腕を広げて、彼らに祝福を送っていた。




