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あちこちに散らばっている研究院の人たちも、話しを聞いて、僕らに会いに来てくれた。
久しぶりに知っている人たちと会えたのは嬉しかった。
元々、お城に勤めていた近衛兵のみなさんは、ルクスに会えて、すごく喜んでいた。
彼らはやっぱりまだ、ルクスが王座を下りたことに納得してなくて、もう一度、王様になってほしい、って、口々にルクスに懇願した。
お城を占領していた前の王様も、革命軍の立てた新しい王様も、行方が分からない、ことになっている。
それって、レグルスのお父さんとレグルスのことだけど。
お父さんのほうはやっぱりまだ、どこにいるのか分からないけど、少なくとも、レグルスはこうして見つかっている。
だけど、レグルスを王様にした人たちは、みんなてんでばらばらになってしまった。
そして、ルクスに仕えていた人たちは、レグルスになんか仕えたくない、って言う。
レグルスも、王様にはなりたくなかったみたいだ。
むしろ、研究院に入りたかったのかもしれない。
レグルスには、すごい魔法使いになる才能があるって、アルテミシアも言う。
なら、王様になるより、魔法使いを目指す方が、レグルスにとってもいいかもしれない。
だけど、ルクスは、そのみんなの願いには頑なに首を振った。
「俺はさ、玉座に座りっぱなしな人生なんて、もう真っ平ごめんなんだ。」
あっけらかんとそう言うルクスに、近衛兵のみなさんは驚いていたみたいだけど。
僕はなんだか、ルクスのそう言う気持ちは、よく分かった。
だけど、ルクスを王様にしたいみなさんも、頑固だった。
なんとしても王様になってくれと、懇願し続けた。
中には、床に頭を打ち付けて、なってくれないとやめないとまで言い出す人もいたりして。
とうとう根負けしたのは、ルクスのほうだった。
「だあああっ、もうっ、分かった分かった。
じゃあ、俺が王様になるっ。
けど、俺は、玉座に縛り付けられるのはもうごめんだ。
それに、世界にアニマの木を植えるっていう大仕事を、始めたばかりなんだ。
これは、中途で放りだせる仕事じゃねえし。誰かに任せるつもりもねえ。
っと、いうわけで、だ。」
にやっと、笑ったルクスは、小さいころ、悪戯を思い付いたときの顔をしていた。
「よし。お前ら、これは、王様の命令だ。
ここにいて国の政をするのは、お前らに任せた。
研究院のやつらとも、しっかり連携すればいい。
なになに、お前らなら立派にやれるはずだ。
いっそ、俺がやるより、うまくやれるんじゃないか?」
あっはっは、とルクスは愉快そうに笑った。
「何か、どうしても俺に聞かなくちゃならない、って用があるときには、連絡してくれ。
お前らの危機だってときには、俺は、世界のどこにいても、きっと駆け付ける。
安心しろ。俺は、お前らの王様だ。」
………そんな王様って、いる?
近衛兵のみんなも、きょっとーん、としてたけど。
そのうちに、誰からともなく拍手を始めて、それから、歓声があがった。
ルクス王、万歳。
我らがルクス王に、永遠の祝福を。
ルクス王、万歳。
みんなが口々にそう叫ぶ。
中には感極まって泣いている人もいた。
やっぱり、ルクスって、王様なんだなあ。
みんなにこんなに愛されてるんだ。
まあさ。
王都が森に覆われてからこっち、近衛兵のみんなと研究院のみんなは協力して、王都のみんなのために働き続けてきたわけだから。
今さら、王様が命令しなくったって、その機能はうまく果たせるようになってるんだろうけど。
それにしても。
いいのか?それで。
と、思わないことも、ないことも、ないことも、ない?
まあ、ルクスもみんなも、それで納得するなら、それでいいか。
というわけで、ルクスはまたみんなの王様になることになった。
っても、それを決めたのは、この場にいる人たちだけだし、王都のみなさんには、お報せを配っただけだけど。
取り立てて暴動が起きることもなかったから、まあ、王都のみんなも、ルクス王はそれなりに、いい王様だった、とか思ってたのかもしれない。
一応?それらしい儀式、をしなくちゃ、とか誰かが言い出して、慌てて僕ら、戴冠式?の準備をすることになった。
前のときには、戴冠式なんてしなかったらしいんだけど。
それがよくなかった、とか、近衛兵のみんなは言うんだ。
そんなの、関係あるのかな、とか思わないでもないんだけど。
まあ、簡単な儀式なら、やってもいいかな、ってことになったんだ。
確かに、族長の継承のときも、ちゃんと祝福の儀式はするわけだし。
そういうのも、案外大事なのかもしれない。
戴冠式、とか言われても、僕も見たことないんだけど。
ルクスは森の民なわけだし。
森の民の族長の継承の儀式なら、僕も見たことあったから。
それに似せた感じにすることにした。
族長の代替わりのときには、新しい族長に森の木で作った冠を被せて、前の族長が祝福を送るんだ。
ルクスの前の王様は、レグルス?なので、冠を被せる役はレグルスにお願いすることにした。
レグルスには、ルクスに被せる冠を作ってもらわなくちゃなんだけど。
そこは、アルボルが手伝ってくれることになった。
「ふむ。そう、ですね?
せっかくなので、アニマの木で作りましょう!」
また、とんでもないことを言い出した?
「アニマの木に近付くなんて、そんな危険な…」
「大丈夫。
僕にとっては、アニマは故郷の木ですから。
任せてください。」
アルボルは自信たっぷりに言うと、レグルスを連れて、木を取りに行った。
そして、若い枝をたくさん取ってきた。
新芽のたくさんついた若い枝は、蔓のように柔らかくて、それをくるくると束ねて編んで、冠にする。
いい香りのする素敵な冠ができた。
ルクスに相応しい冠だと思った。
祝福のほうは、僕がやることになった。
最初、王様の祝福なんて荷が重いから、断ろうとしたんだけど。
そこもまた、みんなに押し切られてしまった。
みんなさあ、にこにこと優しい人たちなんだけどさあ。
ここぞ、ってときの、押しが強いんだよね。
けど、最後は、アルテミシアの、やってくれるよね?の一言で、僕は折れた。
アルテミシアの命令は、王様の命令より、絶対なのさ。
まあ、いいや。
祝福自体は、大好きなんだ。
わざわざ儀式にはしないけど、実は祝福は、普段からしょっちゅうやってる。
なにかちょっと嬉しいときとか。
誰かにちょっと、元気を送りたいときとか。
祝福を送ると、送った僕も、嬉しい気持ちになれるし。
その嬉しい気持ちが、周りに伝わっていくのも感じられる。
祝福は、そういうものだから。
ルクスの戴冠式は、研究院で執り行われることになった。
研究院は、建物は無事だったし、ルクスも、もうあっちのお城は真っ平だ、こっちがいい、って言い張ったんだ。
「これからは、国の政をするのは、ここになるだろ。
ならもう、ここが新しい城、ってことにしようや。」
ルクスの一言で、研究院は、新しいお城になった。
ルクスってば、王様になったならなったで、王様の権力、使いまくり、みたい。
まあ、みんなにとってよくないことには、使わないだろうけど。
あちこち打ち壊されていた研究院は、みんなの力で、きれいに片付けられた。
エエルの補給装置等は、無事に残っていたから、魔法の得意な人たちは、あっという間に壊された物の修復も済ませてしまった。
そうして、ぴかぴかになった新しい研究院で、新生ルクス王の戴冠式は執り行われた。




