表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もう一つの楽園  作者: 村野夜市


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
404/474

404

あちこちに散らばっている研究院の人たちも、話しを聞いて、僕らに会いに来てくれた。

久しぶりに知っている人たちと会えたのは嬉しかった。


元々、お城に勤めていた近衛兵のみなさんは、ルクスに会えて、すごく喜んでいた。

彼らはやっぱりまだ、ルクスが王座を下りたことに納得してなくて、もう一度、王様になってほしい、って、口々にルクスに懇願した。


お城を占領していた前の王様も、革命軍の立てた新しい王様も、行方が分からない、ことになっている。

それって、レグルスのお父さんとレグルスのことだけど。

お父さんのほうはやっぱりまだ、どこにいるのか分からないけど、少なくとも、レグルスはこうして見つかっている。


だけど、レグルスを王様にした人たちは、みんなてんでばらばらになってしまった。

そして、ルクスに仕えていた人たちは、レグルスになんか仕えたくない、って言う。


レグルスも、王様にはなりたくなかったみたいだ。

むしろ、研究院に入りたかったのかもしれない。

レグルスには、すごい魔法使いになる才能があるって、アルテミシアも言う。

なら、王様になるより、魔法使いを目指す方が、レグルスにとってもいいかもしれない。


だけど、ルクスは、そのみんなの願いには頑なに首を振った。


「俺はさ、玉座に座りっぱなしな人生なんて、もう真っ平ごめんなんだ。」


あっけらかんとそう言うルクスに、近衛兵のみなさんは驚いていたみたいだけど。

僕はなんだか、ルクスのそう言う気持ちは、よく分かった。


だけど、ルクスを王様にしたいみなさんも、頑固だった。

なんとしても王様になってくれと、懇願し続けた。


中には、床に頭を打ち付けて、なってくれないとやめないとまで言い出す人もいたりして。

とうとう根負けしたのは、ルクスのほうだった。


「だあああっ、もうっ、分かった分かった。

 じゃあ、俺が王様になるっ。

 けど、俺は、玉座に縛り付けられるのはもうごめんだ。

 それに、世界にアニマの木を植えるっていう大仕事を、始めたばかりなんだ。

 これは、中途で放りだせる仕事じゃねえし。誰かに任せるつもりもねえ。

 っと、いうわけで、だ。」


にやっと、笑ったルクスは、小さいころ、悪戯を思い付いたときの顔をしていた。


「よし。お前ら、これは、王様の命令だ。

 ここにいて国の政をするのは、お前らに任せた。

 研究院のやつらとも、しっかり連携すればいい。

 なになに、お前らなら立派にやれるはずだ。

 いっそ、俺がやるより、うまくやれるんじゃないか?」


あっはっは、とルクスは愉快そうに笑った。


「何か、どうしても俺に聞かなくちゃならない、って用があるときには、連絡してくれ。

 お前らの危機だってときには、俺は、世界のどこにいても、きっと駆け付ける。

 安心しろ。俺は、お前らの王様だ。」


………そんな王様って、いる?


近衛兵のみんなも、きょっとーん、としてたけど。

そのうちに、誰からともなく拍手を始めて、それから、歓声があがった。


ルクス王、万歳。

我らがルクス王に、永遠の祝福を。

ルクス王、万歳。


みんなが口々にそう叫ぶ。

中には感極まって泣いている人もいた。


やっぱり、ルクスって、王様なんだなあ。

みんなにこんなに愛されてるんだ。


まあさ。

王都が森に覆われてからこっち、近衛兵のみんなと研究院のみんなは協力して、王都のみんなのために働き続けてきたわけだから。

今さら、王様が命令しなくったって、その機能はうまく果たせるようになってるんだろうけど。


それにしても。

いいのか?それで。

と、思わないことも、ないことも、ないことも、ない?


まあ、ルクスもみんなも、それで納得するなら、それでいいか。


というわけで、ルクスはまたみんなの王様になることになった。

っても、それを決めたのは、この場にいる人たちだけだし、王都のみなさんには、お報せを配っただけだけど。

取り立てて暴動が起きることもなかったから、まあ、王都のみんなも、ルクス王はそれなりに、いい王様だった、とか思ってたのかもしれない。


一応?それらしい儀式、をしなくちゃ、とか誰かが言い出して、慌てて僕ら、戴冠式?の準備をすることになった。


前のときには、戴冠式なんてしなかったらしいんだけど。

それがよくなかった、とか、近衛兵のみんなは言うんだ。

そんなの、関係あるのかな、とか思わないでもないんだけど。

まあ、簡単な儀式なら、やってもいいかな、ってことになったんだ。


確かに、族長の継承のときも、ちゃんと祝福の儀式はするわけだし。

そういうのも、案外大事なのかもしれない。


戴冠式、とか言われても、僕も見たことないんだけど。

ルクスは森の民なわけだし。

森の民の族長の継承の儀式なら、僕も見たことあったから。

それに似せた感じにすることにした。


族長の代替わりのときには、新しい族長に森の木で作った冠を被せて、前の族長が祝福を送るんだ。


ルクスの前の王様は、レグルス?なので、冠を被せる役はレグルスにお願いすることにした。


レグルスには、ルクスに被せる冠を作ってもらわなくちゃなんだけど。

そこは、アルボルが手伝ってくれることになった。


「ふむ。そう、ですね?

 せっかくなので、アニマの木で作りましょう!」


また、とんでもないことを言い出した?


「アニマの木に近付くなんて、そんな危険な…」


「大丈夫。

 僕にとっては、アニマは故郷の木ですから。

 任せてください。」


アルボルは自信たっぷりに言うと、レグルスを連れて、木を取りに行った。

そして、若い枝をたくさん取ってきた。


新芽のたくさんついた若い枝は、蔓のように柔らかくて、それをくるくると束ねて編んで、冠にする。

いい香りのする素敵な冠ができた。

ルクスに相応しい冠だと思った。


祝福のほうは、僕がやることになった。


最初、王様の祝福なんて荷が重いから、断ろうとしたんだけど。

そこもまた、みんなに押し切られてしまった。

みんなさあ、にこにこと優しい人たちなんだけどさあ。

ここぞ、ってときの、押しが強いんだよね。

けど、最後は、アルテミシアの、やってくれるよね?の一言で、僕は折れた。

アルテミシアの命令は、王様の命令より、絶対なのさ。


まあ、いいや。

祝福自体は、大好きなんだ。

わざわざ儀式にはしないけど、実は祝福は、普段からしょっちゅうやってる。

なにかちょっと嬉しいときとか。

誰かにちょっと、元気を送りたいときとか。


祝福を送ると、送った僕も、嬉しい気持ちになれるし。

その嬉しい気持ちが、周りに伝わっていくのも感じられる。

祝福は、そういうものだから。


ルクスの戴冠式は、研究院で執り行われることになった。

研究院は、建物は無事だったし、ルクスも、もうあっちのお城は真っ平だ、こっちがいい、って言い張ったんだ。


「これからは、国の政をするのは、ここになるだろ。

 ならもう、ここが新しい城、ってことにしようや。」


ルクスの一言で、研究院は、新しいお城になった。

ルクスってば、王様になったならなったで、王様の権力、使いまくり、みたい。

まあ、みんなにとってよくないことには、使わないだろうけど。


あちこち打ち壊されていた研究院は、みんなの力で、きれいに片付けられた。

エエルの補給装置等は、無事に残っていたから、魔法の得意な人たちは、あっという間に壊された物の修復も済ませてしまった。


そうして、ぴかぴかになった新しい研究院で、新生ルクス王の戴冠式は執り行われた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ