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俺が勇者カナタだが、何か用か?  作者: 鳥辺野 九


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68/69

68-ワールドエンド・1kb


 どうやら俺は再生されたようだな。


 目の前にはすべてを破壊し消してしまう破壊の神が立っている。どこか慈悲を感じさせながらも絶対許さねえって怒った観音様みたいな顔して俺を睨んでいる。


 すぐ背後にはこの世界を創り上げた創造主、俺を再び創造してくれたイングリットさんが縋り付いている。イングリットさんは泣き顔と笑い顔がごちゃまぜになった不思議な表情をしていた。


 そして、俺。ブラック・カナタの消滅に引っ張られてあの世に片足突っ込んでいたようだが、イングリットさんが創ってくれたから、こうしてまた彼女のそばに立っていられる。


 このふざけた世界の閉ざされた空間に三人きりだ。


「イングリットさん、ちょっと離れてて。今すぐこいつを仕留めてやるから」


「うん。任せた」


 イングリットさんは素直に俺の背中から手を離した。


 ぼろぼろにひび割れた壁面からわずかに陽の光がこぼれて、それでもまだ薄っすらと暗闇が降り積もってるような魔王の部屋に、俺と神様とが超至近距離で対峙する。


「もう一度消し去ってやろう。安心しろ。創造主もともに消す」


 俺と破壊の神はギリギリに接近し、お互いの射程距離にがっつり入り込み、睨み合う。


「やってみろ」


『荷重力偏移能力レベルアップ。物理ダメージ完全無効』


 力が無限に湧いてくる。俺は掴んでいた神の左手を強く握り締めた。初めて破壊の神が眉をしかめた、ように見えた。


『耐熱属性レベルアップ。あらゆる熱光学ダメージ完全無効』


 ばきっと音を立て、光の粒を撒き散らして砕け潰れる神の左手。驚いたような顔をして破壊の神はよろめき、一歩だけ後ずさった。でもどうせ平気なんだろ。あと腕は999本残っているんだから。


『メタ認知再構築能力レベルアップ。言霊再現能力レベルアップ。イングリットワールド完全同期』


「来なよ、神様」


「行くぞ、ヒーローとやら」


 破壊の神はすべての破壊の腕を発現させた。後光が差すように神様の背後に大小長短ノーマル異形とさまざまな腕が伸び、奴の姿がふた回りも大きく、さらに偉大に見えた。


『ツヨイココロスキルレベルアップ。異世界最強設定完了』


 神が後ろに退いた分だけ、俺は前に踏み込んだ。


 最強って何だろう?


 今更ながら、ふと思った。


 まあいいや。こいつに勝てば、その答えも自ずとわかるだろう。


 破壊の神がノーモーションで破壊の拳を撃ち込んできた。その攻撃スタイルはまさしく怒り狂った千手観音像だ。いや、今さっき一本壊してやったから999手観音か。


 一発対一発なら俺は絶対に負けない。しかし999発同時攻撃はやば過ぎる。さすがに捌ききれない。ならどうする? 俺も一千発以上同時攻撃すればいいだけだ。


 俺、召喚! 俺と重なるようにもう一人の勇者カナタが現れた。同地点同時刻の俺自身を同世界召喚した。これでシンプルに攻撃回数が2倍、攻撃力は最強×2=超最強だ。でも、まだだ。まだ足りない。


 俺と、もう一人の勇者カナタと、もう一度同世界召喚。これでイングリットワールドでの俺が四人になった。無論、まだまだ足りない。


 さらに同地点同時刻同世界同時召喚。8人、16人、32人。増殖する俺を前にして絶望的な顔した神が見えた。まだまだだぜ。


 64人、128人、256人、512人。俺、絶賛無限増殖中。神なる破壊の腕が俺に、俺たちに、無限の俺に迫る。


 そして、ついに俺は神をも超えた。1,024人の勇者カナタが同位空間に折り重なり、破壊の神に全力攻撃。


「カナタ・インパクト・リブート!」


 神の拳対勇者の拳。999本の破壊の拳と1,024発の絶対最強パンチが激突する。


「ワールドエンド・1kb!」


 最強ってのは、勝ち続けるってことだ。


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