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FLOOAT(フロート)  作者: Jake
第2章 2050年、世界大会TOP16

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第5話(7/8)

(来た! 先制点や!)


 自分のアバターを透過する透明人間(スケルトン)戦術を見破り、野石君は第5セットを取った。そして動揺からか、カマル選手は第6セットを落としたばかりか、続く最終セットでも失点までした。


 そして今、野石君が3セット1点でマッチポイント。カマル選手は3セット0点……明確なチャンスがようやくきた。


(互いにネタ切れやろうな)


 取って取られてのシーソーゲームは、実力が拮抗していることを示す。切り札と呼べるような、奇策と呼べるような手はないのだろう。あるいは、あるにはある。しかし今使っても意味がない、といった類パターンだ(例えば、射手対策の戦術を野石君相手にしても意味がない)。


『指示はありますか?』


『いや──』


 ここまで来たら地力の勝負だ。というか、変にじたばたして点を落とす方がよほど怖い。ノってる時の野石君の集中力はなかなかのもので、その分、カウンター精度に露骨に響く(メンタルに難があるとも言える。いや本人には言わへんけどね? 落ち込むと長いねんなぁ……)。


『集中切らさず、きっちり勝ち切ろう。奇策もあるやろうけど、その場合でも戦い方を崩したらあかんで。一応、大穴でごりごりの射撃型になるかもしれんから気をつけや』


『了解です』


 そしてラウンドが始まった。


 カマル選手の牽制──回転するこぶしを避けて、距離を詰める。足元を掬われることもなく、重複距離(オーバーラップ)まで近づく。オーケー、いい調子だ。 


 そして例によって、互いのアバターをすり抜けたまま、低い姿勢で睨み合いになる。


 と、思ったら、尻もちをつくみたいにカマル選手の足が飛び上がる。


 一歩に踏み込んで回避する。野石君の背中から、カマル選手の足が生えてる(サメの背びれみたいだ)。彼女の胴を通って、掬い上げるように拳がコアに向かう。


(はぁ?)


 整理しよう。


 カマル選手は両手を背中の後ろに置いていた。手のひらが地面についているから、それで地面を押して、彼女が少し浮いた。浮いたことにより、野石君のグローブが、カマル選手の背中からは(・)み(・)出(・)た(・)。オーマイガー、さっきまでは彼女自身の体で攻撃は保護されていたのに。


 そして、野石君のグローブは、背中と地面の間で、カマル選手の手に当たった。必定、インパクトが発生する。全力のパンチと、ほぼ停止状態の手のひら、パワーの差がありすぎる。


 弾き飛ばしてしまう!


 カマル選手の体が吹っ飛ぶ。コアも動くから、こちらの攻撃はスカった。それだけじゃない。彼女のコアが動いたことにより、軌道上のグローブも動いた。後ろから、引っ掛かるみたいに野石君のコアを破壊した。


 攻防一体の動きだった。


(なんやろうな……老獪さを感じる)


 キャリアの短さを思えばおかしなことだった。ここ2年ほどの経験しかないと聞いている(そりゃまだ10歳やからなぁ!)。それに頭の中から引っ張り出したという感じがしない。反射的に対応できるようになっている感じ、慣れてるみたいな動きだった。


(ラスト1点)


 双方マッチポイント、次に点を取った方が勝つ。どれだけ白熱しようとも、事ここに至っては、だ。そういう意味では、最後の問題だけ100ポイント! みたいなめちゃめちゃ古いクイズ番組と変わらない。


 この世界はまったく劇的じゃない。


 ごく自然に、風が吹くように勝敗が決まり、選手の行く末が決まる。

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