第5話(6/8)
タネが分かればやりようはある。
私のコアとカマル選手のコアの対角線上に障害物を置けばいい(ただし、カマル選手自身の体は数に数えないものとする)。もとよりコアの壊し合いである以上、普段からやっていることだ。
難しいのは、相手の死角を突ける、と思ったときである。この場合、実際に見えていないときと、実は見えているときがある。迂闊に手を出さないように気をつけるしかない。幸いなことに我慢は得意である。
(カウンターの練習でさんざん釣り対策したからな)
勝負のタイミングを決められないのはものすっごいストレスだったが、恩恵は大きかった。カウンターを磨いたことで、防御力と削り能力が上がったのだ。
(カマル選手から見たとき、私の隙は釣りにも見えるはず)
カウンターを決めるために誘ってるんじゃないか。そう思わせるだけで相手のキレと思考が鈍くなる。必要以上にカウンターが上手い選手であるとアピールしたのは、長期戦を見越してのことだ。
試合は、重複距離での遅延戦闘という様相を呈している。
互いに一瞬でコアを破壊できる距離、互いに視界が不十分で状況判断が難しい距離。そしてラウンドの時間ばかりが長く、すでに60秒以上が経っている(平均は30秒ぐらいだ。モーゼス選手は例外。彼は2、3秒ぐらいで終わる)。
互いの体がすり抜けたまま、体勢を小刻みに変えながら、タイミングを待つ。
(動いた!)
軌道上を回る衛星に加え、両手も使った4方向からの多角的攻撃──、仮に釣りだとしても自滅行動で点を取らせ、カウンターを決めればいい。
コアの破壊音が響く。
音の鳴った回数は……もちろん2回だ!
これで私が2セット目を獲得した。カマル選手はすでに3セット。
『ナイス! 取り返した!』
『まぁまぁまぁまぁ』
これでもプロなので。世界16傑なので。
『慌てず、疲れさせてから行くんやで。こればっかりは年の功ってやっちゃ。ベテランの強さ見せたりぃ』
『はい!』
カマル選手にはまだリードされているが、戦い方がわかったのはありがたい。とはいえ油断できないのは、カマル選手にはもうひとつ戦い方──最後のロードアウトがある点だ。
その隠し玉が、私に対してどの程度有効なのかは分からない。ただ、切ってくるなら今だろうなと思う。既存の戦術では大差がつかない以上、ちょっとしたミスで決まってしまう。だったら自らの強みを押しつけにくるのが普通だ。
逆に考えると、もし戦術が変わらないなら、相手にはもう手札がない。こればっかりは経験の長さがものを言う。
日の目を見なかった練習が、その絶対量が、私の強みになっている。




