↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
FLOOAT(フロート)  作者: Jake
第2章 2050年、世界大会TOP16

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
35/35

第5話(8/8)

『ほな、通信終わり』


『はい』


 小手先でどうこうできる状況じゃないから、早々に通信は終わった。このあたりの気遣いというか、感覚が共有できるのはありがたい。伊達に元プロじゃないってわけだ。


 それはさておき。


 うまいことやられたな、と思った。


(あるにはある動きだけど……)


 実戦でさくっと出されるとさすがにビビる。


 この状況をどうにかできる都合のいい奥の手があればいいが、ないものは仕方ない。地力でなんとか勝つしかない。


 逆に相手が奥の手を出して来たら終わる。私にはさっきのカマル選手のようなとっさの対応力はない。できる限り情報を集め、予習し、カウンターのタイミングを覚え込んできた。


(やるしかない)


 何度も言い聞かせてきたことだ。


 カウントが、ゼロになった。


 前に踏み込み、距離を詰める。重心を低く、すり足みたいに、じりじりと近づいていく。カウンターのタイミングを決して外すことのないように、視界にカマル選手を捉え続ける。


 彼女は相変わらず、地面に張り付くような姿勢だ。


 私が射程内に入るのをじっと待つような目に見える。


 勘違いだった。


 四肢を使って、滑るように突進してきた。思わず体が動きそうになるが、リアクションをこらえる。まだだ。近づいてくるなら好都合。


(来い!)


 こちらの狙いに気づいたか、彼女の初撃は足払いだった。最低限、地面から浮かせることで回避。今度は手を払いに来た。こちらも手首を返し、互いの手が弾かれる。宙を舞う、ふたつのこぶしがコアを直接狙いに来た。


(カウンターで決める──!)


 私は避けなかった。


 頭の中でガラスが割れる音がする。


 1カウントスタート。


 右のこぶしを突き立てるようにして、相手のコアを破壊する。再度、ガラスが割れる音がして──、私は目を見開いた。


(──世界が傾いている)


 左側には、水がある。右側には宇宙をバックに、カマル選手がこちらを見つめている。喜びや安心といった色はなく、倦怠感があるように思えた。


 頭から、着水し、また1カウントが始まるが、水中で姿勢を保つだけでその時間は過ぎた。


 カウンターの成立条件は、相手の得点から1秒以内に得点すること。この1秒間のカウントが連鎖する以上、たとえ互いのコアが破壊されていても、着水さえさせれば点は取れる。


(カウンターに対するカウンターか。普通だったら、まず成立しない。対策してる選手なんて一人もいないだろう。カマル選手も、そんな練習をしてきたとは思わない。アドリブであれができるだけの実力を持っていたってだけ……)


 しかしそうなると、ああ、そうか。


 一連の動きは、これまでとはレベルが違いすぎる。


(人が急に強くなることはない。ただ、そう見えることはある)


 カマル・アイマンは本気じゃなかった。私が、彼女の一回戦の相手よりも善戦できたのは、彼女が手を抜いていたからだ。必要最小限のスペックで勝てばいいと考え、そして見事成し遂げたのだ。


 彼女に、彼女のコーチに、驚きはないだろう。勝てる相手に勝っただけだ。彼女たちの考えていたことは、どれぐらい手を抜けるか、という調整である。


 よろしい、私は負け犬だ。 


 ──勝つのはこれから。




 野石研人、ルーザーズへ。カマル・アイマン、ウィナーズ3回戦へ。


 いずれも、次の試合は翌日である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。