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FLOOAT(フロート)  作者: Jake
第2章 2050年、世界大会TOP16

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第5話(3/8)

 わたしたちは、ナチュラル・デザイナー・チャイルドと呼ばれてるらしい。アンナチュラルな、遺伝子配列のコントロールはしない。代わりに徹底した英才教育を行う。ある程度の遊びを持たせた上で、指向性を持った人生設計を作る。


 あくまでナ(・)チ(・)ュ(・)ラ(・)ル(・)の範囲内で。


 わたしの場合、ブレインマシン・インターフェースからトレーニングが始まった。そして精神的な安定と、状況に応じた判断に優れると評価された。作業ではなく、戦いにこそ発揮される、とも。ドローン操縦士か、ゲームプレイヤーかの二択というのは、なかなか笑えない話だと思う。


 そして2年前、日本の少女(わたしからすればお姉さんだけど)がVRゲームで世界チャンピオンになった。


 病気で寝たきりの子供が、地元の企業が開発したタイトルで勝ったのだ。彼女は人当たりもよく、前向きで明るく、アイコニックな存在になった。タイトルそのものの知名度も上がった。


 わたしの進路は明白になった──、2(・)人(・)目(・)になるのだ。


(チャンピオンと同郷のお兄さん……)


 ケント・ノイシ選手は大した実績を持っていない。でも今年の予選ではカウンターを主体にした戦い方で勝ち上がり、APACの代表のひとりになった。結果だけでも侮れないし、彼のコーチも曲者だと聞いている。


 なにせあのチャンピオンの親戚である。


(……にしては大人しい、か。うちのコーチもやっぱりすごいな)


 予選で手の内を晒さず、TOP16で本命の戦術を使う。


 わたしたちと同じプランを立てた人たち。そう思うと、親近感がある。大会前日(デイ・ゼロ)のイベントで、お話してみてもよかったかもしれない。そのプランにした理由は? どうしても勝たなきゃいけない理由があったから?


 カウントが減っていく。


 地球環境を模した月面で行う、という設定はどこからきたのだろう。重力は六分の一じゃないし、音もよく聞こえる。空気や温度の心配もしなくていい。第二の地球そのものだ。……だったら、たとえ月に来たとしても、わたしたちは地球のルールに縛られるのかな。

 

 カウントがゼロになった。


 互いに前に出る。あたり前だった。確かめなきゃいけないからだ。自分の奥の手は見破られたのか。だとしても、通用するのか。予選敗退のリスクを冒してまで、隠してきた武器が、ここにきて、どれほどの殺傷能力を持っているのか。


(低空姿勢、いや──)


 このままだと全身で、わたしを包むような形になる。当たり判定のないゴーストの体は、ぶつからず、すり抜けるだけ。でもだからこそ、視界不良になってしまう。


 わたしは避けない。


 そのまま、わたしたちの体がすり抜け合う。お互いの手足が交差し、わたしの背中からケント選手の頭が生えてたり、ケント選手の肩からわたしの手が生えてたり、傍目からは、そんな風に見えるはずだ。グロテスクに感じるけど、このゲームは本当に人気なんだろうか。


 ガラスの割れる音がした。


 わたしは首を振る。頭の中心にコアがあり、コアを中心にした軌道上をグローブが回っている。衛星とも呼ばれるそれらは、コアという星に従属して動く。たとえコアが破壊されても、コアがあるはずの場所を基準にする。だから、頭を思いっきり振れば、軌道も衛星も置いて行かれないように動く。


 通常軌道とは違う角度、加速度、そして無視界戦闘での有利を確保したはず、という思い込みから来る警戒不足。


 コアを割られてから0.5秒で、カウンターに成功した。


 野石研人……0セット、0点。カマル・アイマン……1セット、0点。

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