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FLOOAT(フロート)  作者: Jake
第2章 2050年、世界大会TOP16

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第5話_ROOKIE(1/8)

 初日の試合は次で最後だ。


 ウィナーズ初戦で勝ったおかげで、この試合までしばらく時間があった。おかげ様で予習はばっちりである。通信で晩鐘(ばんしょう)さんとダベる余裕がある。


『10歳やで、10歳。40年生まれってこっちゃ』


『人生2週目って聞いても信じますよ……』


 相手はカマル・アイマン選手。


 EMEA(イミア)の選手で、まだ10歳の女の子だ。暗闇の広がる月面で、彼女の銀髪がきらきらと輝いている。しかし、どうだろう。妖精というよりは亡霊のイメージが先行する。本大会の注目株(私とは大違いだ!)なのに相対すると存在感が薄い。


 小さいからだろうか。肩どころか肘ぐらいまでの背丈しかない。あまり嬉しくない特徴である。


『的が小さくてやりづらいですね』


『毎度のことながら、発言だけ切り抜くと終わっとるよなぁ』


 そればっかりは仕方ない。プレイにおいて、年齢制限等は特にない。強いて言えば一部の大会で「未成年者は親の許可を取ってね」と書いてあるだけだ。例によって万人競技とかいう説教臭い理念に基づく。ま、年齢なんて関係ないからどうでもいいけど。


『最初からガンガンいきますよ』


『当然やな』


 カウントが始まる。


 これまで使ってきたカウンター主体の戦い方は本命じゃない。それでも勝てるという舐めプじゃなく、それでも勝てるぐらいの実力と運がないと、優勝まで至らないという判断があってのことだ。


 ここまで、賭けに勝ってきた。


(もう一枚手札を晒して、賭け金を吊り上げる)


 ──カウント・ゼロ。


 互いに中央に向けて走り出す。

 

 そして両の手のひらで地面に触れる。低い姿勢で、私たちの視線が交差する。コアは高さ1メートル以下にある。すでに距離は50センチほどしかなく、相手の表情がよく見える。動揺の色はない。


(どう動く?)


 低空姿勢同士で戦うことはほとんどなかったはずだ。


(──そのまま来るか!)


 カマルは減速しなかった。私たちの体が、ゴーストの、当たり判定のない体が重なった。1辺が1メートルの正方形の中に、体はすべて収まっているような状態で、相手の姿は部分的にしか見えない。


(つまり私が有利だ)


 音(・)が(・)聞(・)こ(・)え(・)る(・)。


 相手のコアは私の左の肩甲骨より奥、少し下にある──。左足を前に踏み込み、左手で、バトンパスを受け取るようにコアを弾く。そのまま走る。速さに訴え、手の届かないところまで行く強さを、今日知ったばかりである。


 そして、1秒が過ぎた。


 野石研人……0セット、1点。カマル・アイマン……0セット、0点。


 振り返ると、カマル選手がじっとこちらを見つめている。感情は読み取れず、ただぼんやりと夜空でも眺めているかのようだった。


(ここからが、本番だ)


 カマル・アイマン。サウジの天才。切替型(スイッチャー)──。

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