第4話(2/2)
実況・解説席でトーナメントの進行に思いを馳せる。
TOP16の試合がすでに8戦終わった。トーナメントでは、およそ30試合が行われることを思うとすでに3分の1近くが終わっているのだ。しかも、それだけではない。
「──以上が、休憩後に行われるルーザーズの4試合の対戦カードでした」
そして、と実況のアナウンサーは言葉を続ける。
「ほとんどの試合が早く終わり、昼休憩まで時間があります。ルーザーズの試合が行われる前ですが、その後に行われるウィナーズ第2ラウンドも見ていきましょう。トーナメント表を再度、ご覧ください」
三日間のトーナメントにも関わらず、初日で過半数の16試合行う。画面に表示されたトーナメント表を見れば、その傾きは明らかだ。
初日にウィナーズ12試合、ルーザーズ4試合。
二日目にウィナーズ2試合、ルーザーズ8試合。
最終日にウィナーズ1試合、ルーザーズ2試合、そしてグランドファイナルが1試合または2試合行われる(リセット、つまりルーザーズ側のファイナリストが勝つかによる)。
すべては最終日の盛り上がりのためである。
「日本勢が二人も残る快挙となっております。そしてそのうちの一人が出るのがウィナーズ第2ラウンドの第1試合です。日台対決! 我らが明星夜雨選手と、METAディビジョンより参戦の台湾勢・葉璟辰選手です」
「二人とも若いながら、実績十分の強豪プレイヤーです」
なんのためにわざわざMETAディビジョンという国や地域を表明しなくていい区分で参加していると……なんて思ったが、璟辰選手はもとよりそういうスタイルだった。声高に訴えることはしないが、隠しもしない。
「本大会でもお二人のレイヤードは評判ですよね」
「はい。……フロートインターナショナルゲームズではレイヤードシステムにより、試合中の選手の疑似的な着せ替えが楽しめます。おしゃれを重視した衣装や民族衣装などを身にした選手たちの華麗なる戦いを、どうぞ、お楽しみください」
コメントですぐに「棒読み」「台本」「義務」といったものが流れていく。悲しいことにすべて事実であるため、特に拾ったりはしない。
「そして、試合についてですが、どのように予想しますか?」
「お互いに射手型ですが、夜雨選手が不動なのに対し、璟辰選手は首を大きく振って、攻撃軌道の中心をダイナミックに変えます」
「となると、夜雨選手は初戦とはまた違う射撃型を相手にすることになりますね」
「対応力が試されるでしょう。それも細かいところまで」
なるほど、とアナウンサーは頷いた。
(ほんとに分かってんのか、こいつ)
「次に、ウィナーズ第2ラウンドの第2試合……パリの英雄に対するはインドネシアの希望! ルイ・ドレ選手とフィールーズ選手の対戦です」
「長くシーンを追っている身としては、うれしいカードですね」
と、つい私情がもれてしまった。
「おじさん対決というコメントもありますが、事実として、本大会最年長の選手と、それに次ぐ選手の試合となっております。足すとちょうど80歳になる組み合わせです」
「ルイ選手は言わずもがなのレジェンド、フィールーズ選手は長らくコミュニティ活動をメインにしてきました。競技への本格的な挑戦はここ数年の話ですが、プレイ歴は負けずとも劣らない年数です。期待しています」
「そしてルイ選手の息子、ノア・ドレ選手は惜しくも1回戦は突破ならずでしたが、お互いに勝ち上がり大舞台での親子対決なるか、という点にも注目です」
ノア選手か。随分気の毒な選手である。偉大な父親とおなじタイトルを選んだがために常に二世という色眼鏡でしか見られない。もっとも、不幸中の幸いなのは本人もその家族も、世情を気にするタイプではないということだ。
俺が黙ったのを見て取ってか、アナウンサーがまた煽りを語る。
「ウィナーズ第2ラウンドの第3試合。極地から来た探検家VS隻腕のボクサー! コルマック・フィネガンとホルヘ・アーレスの試合です」
「……リスク上等で荒らしてくるタイプと、技巧派のプレイヤーという対極的な対戦カードです。トーナメントでの爆発力はコルマック選手が上ですが、安定感ではホルヘ選手に軍配が上がります」
「ホルヘ選手はもともとボクシングチャンピオンでしたが、事故に遭い、黄金とまでいわれた右腕を切断しました。その後、フロートの道へと転身という異色の経歴を持っています」
「別競技で大成しているだけあり、勝負強さを感じますね」
滝のように流れゆくコメントに辟易としながら、ただ純粋な強さを語るに留めた。せめてもの礼儀であろうと思っている。
「そしてウィナーズ第2ラウンドの最終試合は、サウジの天才少女と、電光石火のカウンター使い。カマル・アイマンと野石研人選手の対戦です」
「なかなか興味深いカードですね。両選手には悪いですが、イロモノ対決と言ってもいいと思います」
あまりいないスタイルで戦う選手、というのは見ているだけで面白い。トッププレイヤーとしての力量も伴うとなればなおのことである。解説の腕も鳴るというものだ。
「明星夜雨の再来とも言われる最年少のカマル選手がNCSA1位通過、戦う社長ゼノン・ラングマンを下しました。かたや日本のベテランプレイヤー、研人選手もMETA1位通過、史上最速スプリンター、モーゼス・K・Oをノックアウト! いずれも通過順位からみれば下剋上という結果になりました」
「予選順位だけで見れば、下剋上ですが、もとより世界16傑ですから。誰が勝ってもおかしくありません」
「試合内容に関してですが、研人選手は勝てるでしょうか?」
やってみなきゃ分からんから試合をするんだろうが。
咳払いをし、口を開く。
「お互い五分といったところではないでしょうか。第3試合の構図に少し似ていて、つまり新進気鋭の若手とベテランの戦いです。カマル選手は今年になって初めて表舞台に立ちました。研人選手が初戦で打倒したモーゼス選手と同じですね」
「今年はそういう年なんでしょうか」
「なかなかないことですよ。一口にゲームといってもジャンルが多くあります。VR系に限ってもそうです。タイトルのゲーム世界、いやゲーム宇宙に対する適応が求められますから」
元ボクシングチャンピオン・ホルヘ選手も適応には苦労したと聞く。
「なるほど。……では才能と努力の対決、というわけですね」
なんとも安い物言いだが、まぁ、その通りだ。
「それでは、そろそろお時間です。休憩のあと、また会いましょう」




