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FLOOAT(フロート)  作者: Jake
第2章 2050年、世界大会TOP16

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第4話_INTERLUDE(1/2)

 試合が終わった時、ケントは雄たけびを上げていた。試合中の印象は冷静で、動揺なんてしないヤツ、というものだったから驚いた。


 だから、互いの健闘を称える握手をする際に訊ねてやった。


「そんなに、勝って嬉しいかよ」


「え? はい。だって──あなた、強いじゃないですか」


 意味不明な質問をされた、という顔をしやがった。その目はしっかり俺の顔を捉えていて、反射している俺の表情はけっこうな間抜け面だった。こうも恥を晒したのは初めてだったが、もうどうでもよかった。


「強いやつに勝ちゃ、うれしいってか。そりゃそうか、そうだな……」


 間抜け面になるのも仕方ない。あたり前のことを突きつけられたのだ。俺はバカだから、たまにあたり前のことを忘れる。リンゴは木から落ちる。人はいずれ死ぬ。勝てば嬉しい──相手が強けりゃ、なおさら。


 スポットライトが勝者に光を浴びせるのを尻目に、壇上から離れていく。あの光は強烈で、目玉も皮膚も熱くなるのを知っている。その光や熱は、周囲から奪い取ってるんじゃないか。そう思えるぐらい暗く、冷えた通路に行く。


 コーチが待っていた。


「負けたよ」


 俺は期待を裏切った。てめぇの身銭を切って渡航費を出してくれたコーチにも、賞金を持って帰ると信じていた家族にも申し訳ない。


 でも。


「わりぃんだけどさ、賞金が遠のいたとかよりさ」


 ああ、最悪だ。


「俺は悔しい」


 どんなことよりも、それが重要になっている。悔しいんだ、俺は。


「悔しいんだよな……こんな、たかがゲームでよ……」


 負けたことも悔しいが、それ以上に。


 目が合っていたのに。俺を見ていたのに。どこそこの、誰それ、なんて紙切れじゃなくて、俺を見ていたのに。正面から見つめ返して、ぶつかることができなかった。せめて、本当に強くありたかった。


 こんな風じゃあ、やつの喜びに水を差しかねない。


 こんな風なまま、やつの前に立ってしまったのが悔しくてしょうがない。


「……あなたは十分に強いよ」


 見透かしたように、コーチは言った。


「世の中のくだらなさなんか、相手にならない。そんなのは私がなんとかする。だから、もっと強い相手に挑みなさい。何度でも。何度でも」


「……ああ」


「まだ終わってない。さっさと切り替えて次に備えるの」


 コーチが次の対戦相手について語りだす。


 この大会はダブルエリミネーションだ。負けてもまだ戦える。


(できれば、もう一度)


 すぐにでも、ケントと戦いたい。今度は正面から目を見てやる。もっと早く、もっと自由に戦って、あっと驚かせてやる。勝って、大きな声で吠えてやる。強ぇやつに勝ったんだ、と世界に教えてやる。

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