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FLOOAT(フロート)  作者: Jake
第2章 2050年、世界大会TOP16

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第3話(8/8)

 速いってやばい、と思う。


 ステージを囲う水に落ちれば、失点する。でも得点したあと、着水までに1秒以上かかるならセーフ。まぁ理屈ではそうだ。でもほとんどの場合、場外=失点でしかない。


(人間は飛べない)


 だから、ストッパーをかける。どれほど速く相手に近づいても、進行方向を曲げ、減速しなくてはならない。バイクのブレーキターンみたいなものだ。人もバイクも急には止まれないんだから当然だ。


 結局、この減速がモーゼス選手の弱点だった。あれやこれやと策を弄したのも、その弱点だけを突いて、対策されたくなかったからだ。足を止めた時や、目を逸らしたときは少し焦った。


 ぶっちゃけた話、点を取ったあとダッシュで逃げる、という対策が一番怖かったからだ。


(あんまりカウンターを決めるものだから、格闘戦でも勝てないと判断したんだろう。助かった……)


 しかしここにきて、うちのコーチ顔負けのギャンブルをかましてきた。


 めちゃめちゃ速く走って最後に端っこで踏み切れば、1秒ぐらいは飛んでるんじゃね? というギャンブルである。


(飛んでたなぁ……)


 落ちろ、と祈ることしかできなかった。平面的な思考はこっちだった、いや空間だけじゃなくて時間まで考えたんだから、相手は二枚分上手、高次元なのかな。そもそも人間性能、特に身体能力では雲泥の差がある。


 彼がこれから経験を重ねていったら、私なんか相手にならなくなるだろう。


 野石研人……3セット、1点。マッチポイント。対するモーゼス・K・O……1セット。カウンターを決め、また追い詰めることに成功した。あの後、ビッグプレーは続かなかった。


 案外どんな試合も、あっさり終わるものだ。


 カウントゼロ。


 そして、放たれた矢のようにモーゼスが走り出す。0.1秒以内に判断する。最速で走り出している。まっすぐに、もう人の手を離れ、運否天賦に任せるといわんばかりの姿勢である。


(いや)


 運命に任せるはずがない。彼はどうしようもなく勝とうとしてる。付け焼刃よりもここまで勝ってきたやり方を選んだ。最後に水の上を飛ぶのは、後付けじゃない。ただ全力で走るとそうなるというだけ。本来の彼に戻ったに過ぎない。


(だから強い)


 カウンターの姿勢で待ち構える。どれだけ奇策を練っても、拠りどころはコレだった。あきらめの悪い私にぴったりだ。たった1秒で天国と地獄が別れる戦い方。これまでのすべての価値が問われる。だが、それでいい。


 この1秒で判断してもらって構わないから、ここに来た。


 ──ガラスが割れる音が響く。


 野石研人……4セット獲得。勝ち。ウィナーズ2回戦へ。


 モーゼス・K・O……1セット獲得。負け。ルーザーズへ。

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