第3話(6/8)
バースト。
一律100ポイントの強化リソースを三倍にすることができるシステム。試合中、自らのコアに自壊命令を出すことで使用できる。命令後、3カウントが始まり、終わった瞬間にリソースが増える。
当然、自分のコアを破壊する以上、相手に得点が入る。
1秒以内にカウンターを決めなければ、ただの自殺点である。
(つまり、閾値の大きい選手にとって、最高の必殺技になる)
まして相手は最速のプレイヤー。不可避の速攻となるのは目に見えている。バーストのカウントが始まった以上、基本的に取れる手は二つしかない。
①なるべく距離を置いて、1秒間逃げたり、攻撃を防いだりする。
②なるべくさっさと距離を詰めて倒す。あるいは相手が攻撃に入れないほど体勢を崩す(妨害の場合は厳密には①と同じく時間稼ぎだ)。
いずれにせよ、私はもう走っている。
ピストルの号砲よろしく駆け出してしまった。こんな時に限っていいスタートがきれるのだから、つくづくうまくいかない人生だ。
カウント1。
モーゼス選手は視界に捉えていれば必ず勝てると思っている。そりゃそうだ。あんだけ速いんだから、私がどこにいようと弾丸のごとく駆け抜けてくるだろう。野球ボールよりは速くない、なんて晩鐘さんは言っていたが、下手すれば匹敵するはずだ(つまり時速160キロとか。うーん、ちょっと考えたくない)。
カウントがゼロになる、ほんの少し前。
モーゼス選手の視界から私が消える。
私の視界からもモーゼス選手が消える。だが、こちらはすぐに相手を見つける。
(つむじは右巻き……)
なんて、くだらないことを考える余裕がある。
私は跳んだ。たっぷり助走して、全力で飛んだ。さすがに場外が怖かったので、垂直方向に跳んだ。走り幅跳びや高跳びの選手からすれば、とても見れたものじゃない。しかし、どうだろう。フロート歴はもちろん、あくまで短距離の選手であったモーゼス選手にすれば。
水平方向に誰よりも速く動く準備をしていた彼からすれば、なかなかのものだろう。もちろん後から彼も跳んだけど、それじゃ遅すぎる。
カウントがゼロになった。ああ、もちろんカウンター可能時間のカウントだ。走って、跳んで、着地するだけで点が取れることは珍しい。とはいえ、殴り合いばかりがフロートじゃない。平面的思考に留まっていては勝てない、とは晩鐘さんの談。
これで、あと2セット。




