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FLOOAT(フロート)  作者: Jake
第2章 2050年、世界大会TOP16

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第3話(3/8)

 あり得ねぇ……。


 だが二度あることはまぐれじゃない。あの野郎、俺に勝てるなにかを持ってやがる。


(問題は、それがなんなのか、だ)


 心の声を聞いたかのように、凛とした女性の声が通信に乗ってきた。コーチの声だ。


『カウンターが得意な格闘型(ストライカー)……近づいてくるなら上等ってことかもね。なるべく近くに留まりたくないな』


『ああん? 今までもそういうやつらをノしてきたろうが』


『なにか違う部分があるんだよ。よく観察して。点も欲しいけど、それ以上に情報が欲しい。せめて1点でも取って、ラウンド数を増やして』


 ラウンド数を増やせ。


 つまり、最悪1本取られてもいいってことだ。普段のコーチならまず口にしない言葉だ。一に前向き、二に前向き、俺に向かって来月の大会で優勝しろ、世界大会狙えるから、と言ったときのことを思い出す。


(『あなたには夢を見る才能がある。見失わないで』……だったっけか)


 一攫千金までの黄金の道を、コーチは示した。こんな俺にもゴールはあるのだと示し、今、世界で一番強い16人というところまで来たんだ。


 第二セット、最初のカウントが聞こえる。3、2……。


(俺は、スプリンター)


 走るだけだ。


 カウントゼロと同時にスタートを切る。だがほんの少しだけ速度を低くしている。到達時間が遅れるだけじゃない。相手を観察するための余裕が増える。


(これなら、見えるぞ──)


 ケントは、はっきりとこちらを捉えている。何の遮蔽物(しゃへいぶつ)もないんだから驚きゃしない。右手をへその高さに、左手を胸の高さに構え、頭はまるっきりのノーガード。


 殴ってこい、殴り返すから、というメッセージ。


(上等だ。──カウンター狙いのやつへの対応なら知ってる)


 射程圏内。


 俺は今まで通り、まっすぐこぶしをぶつける、ように見せかける。


 フェイントだ。ケントのコアに触れるぎりぎりで手のひらを開いて、動きを止めた。ケントが俺のコアを壊すから、今度は俺がカウンターを決めればいい。コアが壊れる音がする。俺がコアを壊した音だ──。


(──わざと頭を動かしやがった!)


 普通なら自殺点だが、この距離、この状況ではまったく違う意味を持つ。逃げなくてはならないのはわかっていたが、間に合わない。飛びかかってきた野良犬を追い払うように、ケントが左手を払うと、頭の中でガラスが割れる音がする。

 

 第二セットも先制された。


 膝をついて右手を飛ばした俺を、ケントが見下ろしている。じぃっと、ただ生き物を観察するような目で俺を見ていやがる。


(見下してんじゃねぇぞ)


 でも、負けてるのは俺だ。


 視線を切って、スタート位置に戻るために歩く。放っておいてもゲームシステムの力で転移するが、車酔いみたいな気持ち悪さがあるから嫌いだ。走りにも支障が出るし。


『さすがに経験の差が出たね、駆け引きじゃ相手に分がある』


 コーチが言う。相手のほうが強いと。


『あんたが、俺をここまで連れてきたんだろうが』


『そうだね。だから私が、君より先に諦めることは決してない』


『……作戦は?』


『ここで負けて、初日からルーザーズに行くのはきつい。駆け引きはしない。でも相手を駆け引きの土俵に乗せることはできる』


 ……わけがわからん。コーチってのはみんなこうなのか?

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