第2話(7/8)
カウンター。
相手が得点したあと、1秒以内に自分が得点すれば、相手の点は無効になる。だから、自分のコアが破壊されても、すぐに相手のコアを破壊すればいいわけだ。
『綺麗なカウンター読みやったなぁ』
例によってひとしきり爆笑したあと(よく笑う人だ)、晩鐘さんは言った。
『……』
私の狙いは、わざと相手に先制させてカウンターを狙う、というものだった。
接敵して、相手のコアを破壊せず、ぎりぎりで攻撃を止める。相手は、自分のコアが壊されると思っているからすぐに私のコアを破壊する。で、その直後に、今度こそ相手のコアを壊せば、私のカウンター成立である。
『駆け引きでも夜雨が一枚上手やったな』
『……ですね』
だから、夜雨選手はわざと自分のコアを破壊させた。
『足りんかったんは、武道でいうところの残心ってやっちゃな。一本取ったあとも、相手の攻撃を警戒せなあかんっちゅうやつ』
『そんなのわかってますよ! 普段はちゃんとしてます』
意図せず得点させられたのだから、そりゃ隙もある。
『いやいや、カウンターを警戒してない相手を見たら、おや? って思うやろ。ましてキミはカウンター警戒がむしろ強すぎて、攻め気に欠けるタイプや。急にオラついたらなんか狙っとんちゃうんって分かるがな』
『ぐ……』
『賭けに出るんはええけど、ギャンブルにもコツはあるからなぁ。事前に相談してくれたら良かったのに』
そう、カウンター狙いは私が勝手にやったことである。
『でもコーチならともかく、夜雨選手が気づくとは──』
『あほか。あいつめっちゃキミの試合見とるで』
なんと。いや、冗談なのでは? ……嘘をつく意味がない。じゃあ本当だとして、なんでだろう。対策が必要なレベルのプレイヤーじゃない。大会でたまたま当たる可能性はあるけど、上位を争うようなことはない。
私の試合を見るメリットがわからない。
『なんで、私なんかの……』
『ファンなんちゃう? 知らんけど』
『ファンなわけないでしょう。そもそも私にいると思います?』
『ほんま悲しいこと言うやっちゃな。いうて人気商売やと思うねんけど』
『だっておかしくないですか? 強くないし、勝ってないし、かっこよくないし、愛想もないし……近所でたまに見かける野良猫とかのほうが断然よくないですか!?』
『そこまで言わんでも。どしたん、話聞こか?』
あの晩鐘さんがちょっと引いてた。すごいぞ私。
『ありえない話は置いといて。……次はどうすればいいですか?』
現実を見よう。
小手先のテクニックは通用しない。付け焼刃の戦術とどっちがマシなのか分からないほどだ。このままやっても勝てないどころか、1点だって取れやしない。
『ほんでも、なんでも試すしかないなぁ』
『……ですよね』
『次は──』
今あるもので試行錯誤するしかない。
勝てると、錯覚するしかない。




