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FLOOAT(フロート)  作者: Jake
第1章 去年、予選で負けてから

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第2話(5/8)


 明星夜雨(あかほしやう)選手は、生粋の射撃型(シューター)である。


 グローブを軌道上で回転させ、そして円軌道の直径、角度を操ることで攻防を行うことができる。


 接近戦に臨む私たちの対極にいる存在だ。運動機能にはまったくリソースを割かず、知覚と軌道・オブジェクトの制御を強化している。


 だから、射撃型と戦うときのポイントはたったひとつ。


 いかに近づくか、という点である。


(分かっちゃいるけど……)


 現在、私たちの距離は5メートルほど。


 右側頭部を打ちつける右手①を頭を低くして回避する。


 左足をすくい上げるような左手①をすり足で、後ろに下げて避ける。


 ぎりぎりステージにぶつからない、ほとんど垂直軌道の右手②が目の前を通り抜けた。


(さっき踏み込んでたらコア直撃だったな)


 相手は、文字通り手数が多い。


 大縄跳びに飛び込むイメージだ。それも1本や2本じゃない。6本の大繩がわざとひっかけようとテンポをずらして回ってる。


 直接的な攻撃に加え、次につながる崩しや距離を詰めさせない牽制、あらゆる回転に意味を持たせている。6つのこぶしが入れ代わり立ち代わり役割を果たし、主人に近づくことを許してくれない。


(──強いっ)


 まったくもってあたり前である。


 世界トップの射撃型が、弱いはずがない。公式戦で当たったのは一度だけだが、動画で何度も見てきた選手だ。自分が一歩も動かないだけじゃない。対戦相手も早々に釘付けになり、一歩も動けなくなる。


 例えば、今、物理的な距離はほんの5メートルで、最高速度なら1秒もかからない距離だ。だが、この距離を詰めることができない。直線ルートは牽制されているし、足を狙った攻撃も多く、全力で踏み込むことができない。


(でも行くしかない)


 台風の目に、行くしかない。


 なるべく身を低く、牽制の右手③を、右フックで弾く。正面から踏み込み、今度は上体を大きく仰け反らせる。二つのこぶしが宙を切った。


 頭を前に戻す勢いのままに、大きく地面を蹴り、射程に相手を収める。


 と、左足が何かを踏んだ。


(しまっ──!)


 互いのオブジェクト(当たり判定があるやつ。オレンジ色)が触れ合うと、衝撃破(インパルス)が発生する。ほとんど速度がない状態でも発生するから、グローブ越しに握手することもできない。パワーとスピードが乗ったパンチ同士だとお互いの体が持っていかれるほどだ。


 だが、素早く踏み込んだ足が、グローブを力強く踏んづけた場合は違う。


 通常なら、私のシューズも、相手のグローブも大きく弾かれる。


 しかし、相手のグローブの後方180度にはステージという固定された地面がある。私の靴底と、ステージの間でグローブは瞬間的に何度もバウンドする。


(やべ、やられた)


 バナナの皮を踏んですってんころりん。漫画みたいに左足を天に掲げ、私はその場で宙に浮きながらひっくり返る。


 頭が地面に叩きつけられる。痛みはないが、悔しい。


 頭蓋骨の中で、脳の中で、コアが破壊される音がした。


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