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第7話 2人目の犠牲者

「ぐぅっ、貴様……! 一晩中ずっと、身体をまさぐりよって……! しかも、お腹ばっかり……! この、ド変態野郎め……!」


「何を言っている。俺は『客にカラダを許したことなどない』という貴様の言葉を信じて、無難なところを触ってやったのだぞ。それとも、もっとスケベな場所をいじくられるのが好みだったか? すまんすまん」


「ゲスめ、いまに覚えていろ……!」


 昨晩、上層のアタックを終えた俺たちは冒険者ギルドに立ちより、報告をすませた。2人パーティでのB3Fクリアというのは結構珍しいようで、ギルドの受付嬢が、目を丸くして驚いていた。


 そのあと宿にもどり、食事と湯浴みを済ませて、ゼラと同衾(どうきん)したのだが――本当は何もしないつもりだったが、彼女の鍛えあげられた腹筋を見て、ついムラムラっとしてしまった。


 ああ、バキバキのシックスパック、たまんねぇ……! そのまま腹筋の割れめをなぞったり、盛りあがりをつまんだりしてるうちに……チュンチュン。夜が明けたというわけだ。


「そんなことより、昨日の宿題だ。残りの2人のメンバーの目星は、ついたのだろうな? 中層へのアタックまで、あと2日しかないぞ」


 宿の1Fで、朝食を食べながらの作戦会議。ゼラはルナベールトラウトの西京焼き定食、俺はバシリコ鳥の親子丼をセレクト。うーん、ダシがきいててうんまい。


 モンスターのドロップ目当てで、ダンジョン上層を回すパーティはそこそこいる。しかし、死亡のリスクが跳ねあがる中層に挑むパーティは、かなり少ない。


 なので優先的にアタックが割り当てられるようになっており、すぐに順番が回ってくるというわけだ。


(ゆうべは、お楽しみじゃったのう……して、なんで4人なのじゃ? 敵が強いなら、数の暴力で攻めればよかろうに)


(ああ、ダンジョンの転移ポータルの定員が、4人だからだよ。いっかい転移装置を起動させたら、しばらく使えないからね。5人以上だと、誰が残るかで争いになる。迷宮探索者ダンジョン・クロウラーの、慣習ってヤツさ)


 アモンに念話で返事しながら、ゼラの返答を待つ。


「……っ、私の知り合いで、思いあたるのが2人……いい子なので、気が進まないが……姫さまのためだ。まずは、これを見てくれ」


 そう言うと彼女は、手持ちのクリスタルをこすって映像を呼びだした。


 画面の中に映っているのは、黒ずくめのコスチュームをまとった少女。場所は迷宮内ではなく、おそらく近隣の森の中だ。


 手に持っているのは、細い湾曲刀。それで、ゴブリンたちをばったばったとなぎ倒している。フードの隙間から、金髪と尖った耳が見えていた。


「……エルフか」


 エルフであれば、俺の見立てよりも、年齢は上かもしれない。


「そうだ。名をエレシダという。クラスはローグ系の上位職……ニンジャだ。彼女も、上層は突破済み。腕前のほうも、申し分ない。しかし……」


 言いよどむゼラ。そのまま映像を見ていると、あることに気付いた。彼女が宙を舞うたびに、忍装束のお尻の部分が、ぺろっとめくれ――くまさんパンツだ。……あっ、また見えた。


「……おい、なんか、不自然に見上げるアングルが多くないか?」


「……うむ。じつは、彼女はもともと人気上昇中のダンジョン配信者だった、のだが……」


「だが?」


「無謀なアタックで、パーティメンバーを全滅させてしまってな。しかも、超売れっ子とのコラボ配信でだ。それが原因でパーティの受け入れ先がなくなってしまい……今は、パンチラメインのソロ配信で細々とやっているみたいなのだ」


「ふむ、それで、ダンジョンにも潜れず、そのへんの狩り場で……しかし、故郷に帰ればいいではないか」


 彼女は、ちょっと声をひそめ――


「それが……じつを言うと、彼女はハーフエルフだ」


「なるほど。では、厳しいな」


 いまだ、混血への偏見が強い昨今。ヒューマンはそんなに気にしていないが、純血エルフからの扱いはひどいらしい。エルフの里に戻ったとしても、彼女を待っているのは冷たい視線だけだろう。


「ああ、もともと迷宮街(ノエガンド)に出てきたのも、配信でひと旗あげて、混血児の地位向上につなげるためだったと聞いている。今さら、おいそれと逃げ帰るわけには、いかんのだろうな」


 夢やぶれた、ハーフエルフのオワコン配信者。確かに、申し分ないコンプレックスだ。これは、とんでもない逸材が現れたぞ……!


「ク、ク、ク……貴様も、なかなか使えるじゃあないか。さっそく、勧誘の準備に取りかかるとするか……!」


 椅子をガタっと鳴らして、立ちあがる俺。


「ちょっと待て! もう一人の話は――」


「それは後だ。そいつの生配信が終わるまえに、仕掛けねばな……! では行くぞ」


 勢いよく歩きだす。


「あんまり酷いことはしないであげてくれ」と言いながら支払いを済ませるゼラ。それを横目で見つつ、食堂を出た。


 さあ、ユーウツだが、脅迫タイムだ。エレシダさん、本当に申しわけない……!

ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

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