第16話 <回想>鷲獅子の骨と美しき聖女
俺がはじめて彼女と出会ったのは、魔術学校“鷲獅子の骨”で研鑽を積んでいたとき。魔術師協会と聖職者協会の交流のいっかんで、近くの修道院から成績優秀者が見学にきていたのだ。
ちょうど魔術戦の模擬試合で、俺が勝利をおさめたところだった。庭園で汗をふいていると、ひとりのシスターが、修道士たちの列をはなれ――
「ごきげんよう。わたくし、マリエラ・ブレンガーネ・フォン=ローゼベルクと申しますわ……先ほどの魔術戦、感動いたしました! 火と水の魔力を組みあわせて、大爆発を起こすなんて……!」
上気した顔をほころばせて、話しかけてきた。年のころは、俺と同じぐらいだろうか。背筋が伸びた優美な姿勢と、細くしなやかな肢体。雪のように白い肌。バストは……大変けっこうだ。
プラチナブロンドの髪が、春の風にゆれる。澄んだラベンダーの瞳に、さくら色の唇……“歩く聖女像”といわんばかりのその姿に、俺の心臓が落雷の魔術を食らったようにしびれた。
「は、はぁ……ありがとうございます。今までなかなか、うまくいかなかったんですけどね。たまたま、キレイに決まりました」
どぎまぎしながら、スカした返事をする俺。
「うふふ、わたくし、もとは貴族の生まれでしたの。なのでいろんな魔術師のかたを、見る機会があったのですが……貴方からはものすごく、才能を感じますわ! よろしければ、こんどの安息日に、お茶でもいかがですか?」
「え、ええ……マリエラさんさえ良ければ、喜んで……。でも、戒律とかは、大丈夫なんですか? 俺のせいで、ご迷惑がかかっては……」
とまどう俺に、彼女は――
「あら、“鷲獅子の骨”のウィザードさんは、紳士的ですのね……でも、心配ご無用ですわ。お日さまの下でお会いするぐらいなら、とやかく言われることもないですし……ここだけの話、わたくし、落ちこぼれですの。ちょっと殿方とお話したぐらいで、評価はこれ以上さがりませんから。うふふ」
恥ずかしそうに笑って――その姿もまた可憐だった――俺に日時と場所を書いたメモを渡して、走っていった。
つぎの日曜日、彼女と待ち合わせした俺は、いろんな話をした。
反逆の疑いをかけられ、没落した家のこと。3人の姉を、つぎつぎと失ったこと。食い扶持を減らすために、やむなく修道院――“鷲獅子の骨”から10キロメートルぐらいの場所――に預けられたこと。
あとは、先輩や同期のシスターから、いじめられていること……など。彼女は気にしていないと言っていたが、ときおり見せる寂しそうな顔に、俺は心を動かされずにはいられなかった。
それから、週末のたびに彼女と逢瀬をかさねた。カラダ的なアレは、何もなかったが……俺も孤児で学院の寮に入っていたから、時間はたっぷりあったのだ。
半年ほどたった、ある日。なんと彼女から、夜のデートのお誘いを受けた。場所は、正式名称は知らないが、夜咲き丘――1年のうち数日だけ咲く、月華草の群生地だ。
地元では知る人ぞ知る、恋人たちの聖地――彼女はいつもの黒の修道服ではなく、町娘ふうの簡素なドレスをまとって現れた。夜露にぬれた裾が、透けるように揺れている。
「わたくし、あまりヤンチャはしない性分なんですけど……きょうは、特別な日ですから。ほら、御覧になって」
彼女が指さす先で、たくさんの月華草が、いっせいに花弁を開きはじめていた。星屑を閉じこめたような淡い光が、広がっていく。
しばらく無言で立ち尽くしていた彼女が、俺の腕にそっと触れる。その指先は、震えていた。
「じつはわたくし、今度、聖都に行くことに、なりましたの。修道院から1人だけ選ばれる、聖女見習いとして……」
風に散ってしまいそうに弱々しい、彼女の声。
「だから、あの、よかったら、今夜、だけでも――」
月あかりに照らされた頬は紅潮し、うるんだ瞳が、切実に何かを求めていた。
「マリエラさん、い、いけません」
俺はそう言うと、彼女の手をそっと押しもどした。
とうぜん、あんな事やこんな事、ア~ンな事をしちゃうつもり満々で訪れた俺。だが聖女候補生に選ばれたとあっては、これまで以上に清廉さが大事になる。
一時の勢いで、彼女のキャリアに影を落とすわけにはいかない。苦渋の決断、というわけだ。
「……そうですわよね。わたくし、愚かなことを致しました。うふ、こんな落ちこぼれ、聖女失格の女を呼びつけるなんて、聖都も見る目がない、ですわね……」
マリエラはそう言うと、身をひるがえして俺の正面に立つ。月華草の光が、彼女の輪郭を幻想的にふちどっていた。
「でも、いつか必ず、聖都に来てくださいましね……わたくし、ずっと待っていますから」
彼女がほほえみ、ぎゅっと俺を抱きしめる。つぎの瞬間にはもう、遠ざかる後ろ姿しか、見えなくなっていた。
丘に残された俺と、夜風にゆれる月華草。“鷲獅子の骨”を卒業するまで、俺はその記憶を、思い出さない日はなかった……
おまけ
主人公の初期ステータス
【名前】ヨハン=シュード
【種族】ヒューマン・男性
【職業】ウィザード
【称号】至高の暗黒魔導(?)
【Lv】13
【MaxHP】572
【MaxMP】103(チートスキル不使用時)
【STR(筋力)】14
【DEF(防御)】13
【AGI(敏捷)】15
【DEX(器用さ)】11
【INT(知力)】48(チートスキル不使用時)
【PIE(信仰)】19
【LUK(幸運)】30
【スキル】
火属性魔術 B
水属性魔術 B
風属性魔術 B
土属性魔術 B
光属性魔術 E
闇属性魔術 D
複合属性呪文 B
高速詠唱 D
MP節約 D
反信頼 EX
ゼラのステータス
【名前】ゼラトリス=フェステ
【種族】ヒューマン・女性
【職業】パラディン
【称号】ザリアの不沈要塞
【Lv】15
【MaxHP】1485
【MaxMP】29
【STR】35
【DEF】49
【AGI】18
【DEX】23
【INT】8
【PIE】22
【LUK】5
【スキル】
片手剣マスタリー B
盾マスタリー A
光属性魔術(エンチャントのみ) C
毒耐性 C
出血耐性 B
呪い耐性 D
エレのステータス
【名前】エレシダ=エルクレイン
【種族】ハーフエルフ・女性
【職業】ニンジャ(クノイチ)
【称号】森のプリティーフェイタル
【Lv】14
【MaxHP】645
【MaxMP】59
【STR】20
【DEF】8
【AGI】52
【DEX】40
【INT】18
【PIE】5
【LUK】12
【スキル】
刀マスタリー B
投擲マスタリー B
隠密 C
自然感応 E
通常攻撃即死付与 D
水属性魔術(忍術) C
風属性魔術(忍術) C
闇属性魔術(忍術) D
ネロのステータス
【名前】ネロディ=ピスカ
【種族】獣人(ネコ科)・女性
【職業】バトルモンク
【称号】獣人の隠れ里、力石コンテスト女子の部2連覇
【Lv】14
【MaxHP】964
【MaxMP】55
【STR】43
【DEF】22
【AGI】28
【DEX】23
【INT】5
【PIE】28
【LUK】6
【スキル】
体術マスタリー A
自然回復 B
会心率上昇 C
光属性魔術 C
土属性魔術 E
お買いもの上手 E
交渉術 E
鑑定術 D




