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第13話 そんなマップで大丈夫か?

 ★迷宮地下第五層 魂持たぬ者たちの楽園★


 階段を下りるとそこは、鉄の棺桶だった。天井には、張り巡らされた無数のパイプ。ときおり、魔力を帯びたスチームが、漏れだしている。


 そこかしこには、金属製のアームや自動で動くベルト。壁には燐光を放つクリスタルが備えつけられ、闇を照らしている。ゴウンゴウンとかすかな地響きとともに、鉱物油のにおいが鼻をついた。


「うわっ、うーむ……面妖な……これほど大量の機械、はじめて見たぞ」


 素が出そうになり、あわてて言い直す俺。ダンジョン内で常識は通用しないと頭では分かっているのだが、思わず圧倒されてしまった。


「ううっ、またここに来てまうとは、最悪やぁ……! でも、今回は、パーティもめっちゃ強いし……ゼラ、エレ、カス、頼りにしてるでぇ……。えっと、階段は……あっちやな」


 そう言うと、地図を広げてスタスタと歩きだすネロディ。だが、そのマップは――


「貴様、誰がカスだ。しかも、その地図……ほぼ空白ではないか。そんなふざけたマップで、大丈夫なのか?」


 入り口から、B6Fへの階段に通じるルート。あと数か所の危険マークのほかは……驚きの白さだ。この有り様では、正解ルートをはずれた瞬間に、迷子確定である。


「うっさいわね。これが市販のなかでは、一番いい地図なのよ。5層以降は生還者が少なすぎて、ろくな情報がないんだから。文句あるなら、自分でマッピングしなさいよね」


 エレシダが吐きすてて、後につづいた。ゼラも彼女たちを守るように、周囲を警戒しながら進軍開始。


<ここのモンスターは凶悪なゴーレム軍団、気をつけるでござるぅ……>

<ウィザードの兄ちゃん、中層は初めてか? 力抜けよ>


 エレの腰にぶら下がっているBCC――ブロードキャスト・クリスタル――が、コメントを吐きだして煽る。心なしか彼女の足どりが、ふらついている様に見えた。


(今回の嫌がらせプランは、ちゃんと考えておるかの?)と、ニヤニヤ笑うアモンを横目で見ながら、俺も歩みを進めた……



 ◇◆◇◆◇



(……おい、召喚者よ。また少し聞いてよいか?)


 鋼鉄で覆われたトンネルを、パーティがゆく。敵の姿は、まだ見えない。俺たちの周囲をふわふわと飛びまわっているアモンが、念話で話しかけてきた。


(どうしたんだよ、急に)


(いや、ふと思ったのじゃが……この大迷宮(ノエガンド)は、誰もクリアしたことがないんじゃろ? なんで、最深部のお宝がディスペル系だと分かるんじゃ)


(ああ、いい質問だね。えっと……この世界にときどき自然発生する、ダンジョンなんだけど……迷宮のコアになっているアーティファクトには、地域ごとの傾向があるんだ)


(ほほう、傾向とな)


(うん、たとえば……ルドレイン地方では水属性に関連したアミュレットしか出ないとか、パルドドラ山岳地帯では竜特攻の武器しか出ないとかだね。とうぜん、ダンジョンのランクが上がると遺物も強力になるよ)


(うーむ、そいつは驚きじゃ……なんか、名産品みたいじゃの)


(で、今までノエガンド周辺の下級ダンジョンから発掘されたのは、ディスペル系の遺物だけ。ってことは……)


(解呪アーティファクトの王様が、この下に眠っておるにちがいない……というわけじゃな。……おっと、先頭のケモノっ子が、エンカウントしたようじゃぞ)


 がらがらがら! がららん!


 ネロの前方のガレキの中から、突如として2体のゴーレムが立ちあがった。3メートルを超える鋼の巨体に、それを支える膨れあがった四肢。クソッ、今までそこには、何の反応もなかったのに……


 俺の後方でも、迷宮の壁がガタンと開いて、2つの鋼鉄球がまろび来る! それが丸まったボディをほどいて、みるみる人の形をなしていく。どうやら迷宮製ゴーレムの、高速移動形態だったようだ。


 続いて天井の開口部から、人の頭ぐらいの大きさの水晶球が落下! 中空に浮かんだそいつの周囲に、あたりのパーツが引き寄せられていき――


「にゃあっ、獣人拳法、爆蹴獅子吼――!」


 どぎゃん! 両足にオーラを集中させたネロが、前方に高速突進!


 そのまま獣の(あぎと)を模した両の手で、水晶球――ゴーレムコア――を挟み砕く。浮かんでいたパーツが制御を失い、ガラガラと地面に落ちて、派手な音を響かせた。


「くうっ、扉が……! おい、閉じ込められたぞ! 馬鹿な、こんなギミックの情報は、今まで――」


 ゼラが指さす方を見ると、ちょうど前方のゲートが、閉まるところだった。俺の後方でも、プシュンと音をたてて隔壁が封鎖。


 どうやら残りのゴーレム4体を倒すまで、解放する気はないらしい。モンスターハウスならぬ、ゴーレムハウスというわけだ。


「ダンジョンも、ちょっとずつ進化してるってわけ……!? ええい、もう! やるしか、ないわね……!」


 エレシダも、両手にクナイを構えて臨戦態勢。ががががが! ぐぽん! 機兵の目に光がともり、駆動開始。俺たちはそれぞれ、最寄りのゴーレムと戦闘状態に入った……

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