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完全無欠の幼馴染、実はポンコツで甘えてくるので、全部俺が支えてました  作者: なぐもん


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4話 ゆるふわ優乃さん

 放課後の体育館裏。


 ここは青春の聖地にして、失恋の名所でもある。

そして今、儚くも純粋な想いが無惨にも消えようとしていた。


「桃井さん、好きです。付き合って下さい」


 優乃のやつ、やっぱり告白されている。

俺と聖羅は体育館の柱から、そっとその様子を伺っていた。

告白しているのは、今どき珍しく純粋そうな好青年……。

とりあえず『モブ』と呼ぶこととする。


「ごめんなさい。気持ちは嬉しいけど、私、好きな人がいるんです」


 優乃の声色は優しく、モブが傷つかないように最大限配慮している。

さすがに俺が見込んだだけはある。


「ゆ、優乃に好きな人!? 誰だ!?」


 その一方で、聖羅は興奮しながら俺の頭をバシバシと叩いてきた。


「知らん、あと痛い」


 モブは数秒固まったあと、まるで満足したように笑った。


「……そっか。やっぱりな。ありがとう、言ってくれて」


「うん。ごめんね」


「いや、むしろ嬉しかったよ。ちゃんと振ってくれて」


 いいやつかよ。


 モブは頭をかくと、そのまま去っていった。

……青春だな。


 そして、優乃は振り返り、まっすぐこちらを向いた。


「聖羅ちゃん、お待たせ〜」


 バレてた。


「な、なぜわかった!?」


 聖羅は潜んでいることがバレたくノ一のように柱の陰から飛び跳ねる。


 優乃はそんな聖羅を見てくすっと笑った。


「だってさっきから、聖羅ちゃんの声、丸聞こえだったよ?」


「すまない優乃! 盗み聞きするつもりはなかったんだ!」


「ううん、大丈夫だよ」


 優乃はいつもの穏やかな笑顔だ。

その母性の塊のような全身が俺の存在に気付いてブルンと跳ねる。


「あー! 智也くんだ〜♪」


「や、やあ優乃、お取り込み中なのに悪かったな」


 優乃は首を横に振ると、ニコニコしながら俺に近づいた。


「ぜんぜんだよ〜。それより智也くん、これ」


「……ん?」


 優乃は両手を伸ばすと、細くて柔らかそうな指先が俺のネクタイに触れた。

慣れた手つきで、キュッと結び目を整えてくれる。

距離が近くて、シャンプーだか香水のふんわりした甘い香りが俺の鼻をくすぐった。


「自分でやるよ」


「だめだよ。智也くんのネクタイ直し係は私だよ〜」


 これが優乃の苦手なところだ。


 一年生の頃は、聖羅の隣にいるおとなしい女の子というイメージだったのだが、二年で一緒のクラスになってからはやたら馴れ馴れしくて、距離が近い。


 嫌というわけではないが、優乃の距離の詰め方はどうにも落ち着かない。


 遠慮はないし、俺が逃げる道を与えてくれない。拒めない善意ほど扱いに困るものはないのだ。


「そんなものを決めた覚えはない」


「いま決めたもん」


 優乃の手がそっとネクタイから離れ、首を傾げながら満足そうに微笑んでいる。


「はい、終わり」


 ……そりゃあモテるわけだ。


「……ありがとな」


「どういたしまして」


 そんな俺と優乃の様子を見ていた聖羅が、ボソリと不満気に呟いた。


「……ずるい」


「なんだよ聖羅。なに怒ってるんだ?」


「なんでもない!」


 優乃が聖羅の顔を覗き込んで、背中をトントンと叩いた。


「聖羅ちゃんはヤキモチ妬いてるだけだよね」


「っなぁ!? そ、そんなことはないぞ! 私なんか昨日、智也の家に行っていたからな!?」


 おいおいおい!? それ言っちゃうのか!?


「なにそれ詳しく……」


 優乃の顔から生気が失われていく。いつも笑顔を絶やさない優乃もあんな顔をするのか……。

って、こいつらなにを張り合っているんだ。


「聖羅、お前なにをしにきたのか忘れたのか?」


「そ、そうだ! あの……優乃……」


「なにか御用だった?」


「あの……生徒会に副会長として入ってくれないか?」


 聖羅の声は、消え入りそうなくらい小さかった。

無理もない。

今まで断られた経験がトラウマのようになっているのだろう。


 だから俺は補足するように聖羅の後ろから声を出した。


「優乃、聞いてほしい。生徒会は今、役員がいなくて実質的に活動できなくなっている。このままじゃ文化祭がなくなるかもしれないんだ」


「え?」


 優乃は少し驚いたように目を丸くした。


「どうしてそうなったの?」


「役員が集まらないのは、聖羅のせいだが、前の生徒会の引き継ぎが杜撰で予算や申請が通ってないんだ」


 聖羅は一瞬、「それ言う必要あるか?」というように睨んできた。しかし、事実なので諦めたのか、そのまま深く頭を下げた。


「優乃、どうか頼む。優乃しかいないんだ。力を貸して欲しい」


 優乃は少し考えるように顎に手を置いた。

そして、なにか決心したように首を縦に振る。


「聖羅ちゃん……。私、生徒会に入るよ」


「ほ、ほんとうか!?」


 俺も口を挟む。


「やけにあっさりだな」


「聖羅ちゃんが大変そうなのは分かってたんだ……生徒会長になっちゃったから、最近忙しそうにしてたし、あんまりお話しもできなくて……」


「優乃……」


「生徒会がそんなことになってるなんて知らなくて……聖羅ちゃんもそんなに苦しんでたんだね。気付いてあげられなくて、ごめんね」


 優乃の言葉が聞こえた瞬間、聖羅はもう勢いよく抱きついていた。

 

「優乃ぉぉぉ!!」


「よしよし」


 優乃が聖羅の頭を優しくなでる。

男子生徒が見ればこの絵面に、誰もが心を奪われるだろう。


 そして優乃はそのまま俺を見た。


「なんだ?」


「智也くんも生徒会なの?」


「いや、俺は聖羅を手伝ってるだけだ。生徒会に所属してるわけじゃないよ」


「そっか……違うのか」


 優乃はほんの少し肩を落として、残念そうに苦笑いした。


「ただ、生徒会が安定するまでは手伝うつもりでいる」


「二人は幼馴染だもんね。……いいな」


 優乃はほんの少しだけ、寂しそうに笑った。


「よしよしってしたら、智也くんも入ってくれる?」


「断る」


「ちょっとは悩んでよ〜甲斐性なし〜」


「面倒だからな」


「むぅ……」


 優乃は少しだけ目を細めた。


「入ってくれたら……嬉しいな」


「俺が入ってもたいして力になれないぞ?」


「智也くん、陰で聖羅ちゃんの生徒会選挙サポートしてたでしょ……」


「っ!! なんで知ってるんだ!?」


「智也くんのことは、ずっと見てたからね。わかるよ……」


「どういう意味だよ……」


「ふふ、内緒だよ。智也くんのことは諦めないからね」


 蒼山高校生徒会、副会長が決まった。


 そして俺を生徒会に入れようとする者が、また一人増えてしまった。

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私は趣味で小説を書いてる、幼い子どもが二人いる父親です。


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