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完全無欠と噂の幼馴染が生徒会長になったら、ポンコツ過ぎて泣きついてきた  作者: なぐもん


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29話 庶務先輩

 職員会議を終えた俺――黒瀬智也は聖羅に制服のネクタイを引っ張られ、屋上に連行されていた。


「アホー! バカー! なんで来てくれたんだー!」


 アホ? バカ? 来てくれた?

けなしてんのか、感謝してるのか、よくわからんやつめ。


「心外だ聖羅。それが生徒会を救ったスーパーヒーロー、黒瀬智也に対する扱いなのか?」


「うぐぅっ!」


 顔をしかめて、どうやらなにも言い返せないようだ。


「く、来るならもっと早くして欲しかったぞ!」


「ヒーローは遅れて登場するもんだろ? それに俺が行かなくて済むならそれでよかったんだ」


「どういう意味だ?」


 俺は聖羅を正面から見据える。


「これは聖羅の勝負だ。俺のようなスーパーヒーローが登場すると主役を喰っちゃうんだよ」


「智也……ごめん」


 茶化すように言ったつもりだったのだが、聖羅は謝ってきた。


「なんだよ?」


「私が勝手に名前を入れたこと……怒ってるだろ? それに、そのせいで職員会議にも出るハメになってしまったし……」


「なんだ。そんなことか……」


「そんなことではない……私は昨日からずっと眠れなかった……」


 ふむ。そんなに気にしていたのか。

可愛いとこあるじゃないか。聖羅のくせに。


「あのパンフレットも修正しないとな……また先生に怒られるかもしれないが……」


「なぁ、そう言えば約束は覚えてるか?」


「文化祭が決まったら、なんでも言うことを聞くってやつだろう……わかっている。約束は守るぞ……」


 聖羅は屋上の扉にバタンともたれて両手を広げる。

頬が薄くピンクに染まったような気がした。


「さあ! 私の身体を好きにするがいい!」


 なに言ってんだこいつ……。


「そんなものはいらん」


「そ、そんなものとはなんだ!? けっこう自信あるんだぞ! 張りのあるDカップだぞ!?」


「へぇー、それはなかなかいいものをお持ちで……」


「っ! なにを言わせる!!」


「勝手に言ったんだろうが!」


 途端に聖羅は膝から崩れ落ちてしまう。


「うぅ……じゃあ、なにが望みなんだ?」


 俺はポケットから一枚の紙切れを取り出した。


「これ……受け取って欲しい」


「なんだ? 恋文か? 智也もなかなか古典的なんだな」


 ニヤニヤしながら受け取るな。すっげぇ腹立つ。


 聖羅は紙を見ながらぎょっと目を見開いていた。

ワナワナと震え出し、勢いよく立ち上がる。


「智也……これ……」


「承認してくれるか?」


 俺が渡したのは、“生徒会入会申込書”だ。

役職は庶務。


「あ……えっ……いいのか? 本当に入ってくれるのか?」


 聖羅は信じられないと言った顔で俺を見つめている。


「職員会議でさ、一人で立っただろ? 中学の生徒会もお前はいつも俺の隣にいてくれた」


「それは……私がそうしたかったからだ」


「今度は俺の番だ」


「へっ?」


 俺は跪いている聖羅に手を差し伸べる。


「お礼ってわけじゃないんだけど、任期までは隣で支えてやるよ」


 照れ臭くて、ついぶっきらぼうな言い方になってしまったが、本心である。

聖羅はそっと俺の手を握って立ち上がる。


「智也! 早く生徒会室に行こう!」


 ググッとすごい力で引っ張られた。

相変わらずの馬鹿力め。


「なんだよ急に!?」


「ふふん。逃げられないように今すぐ承認印を押してやるんだ」


「わかったから引っ張るなって!」






 生徒会室に戻った俺たちを待ち受けていたのは優乃、紺野、千景の手荒い歓迎だった。


「もう! 二人とも遅いよ! 急に消えちゃうからビックリしたんだから!」


 優乃が頬を膨らませてプンスカ怒っている。

だが、聖羅が持ってきた入会申込書を見ると目の色を変えた。


「優乃見てくれ! 智也が生徒会に入ってくれるって」


「えっ! ほんと!?」


 優乃がパタパタと聖羅に駆け寄り、入会申込書を確認すると、パァッと花が咲いたみたいに表情が明るくなる。


 それ俺に言わせてくれないんだな……。

まぁいいかと思っていたら、左右から一年コンビに挟まれた。


 紺野が下衆な笑みをしながら口を開く。


「よろしくお願いしますね“庶務先輩”」


「庶務先輩言うな」


「だって役職としては僕の方が上ですよね?」


 なにこいつ。なんでそんな上からなの。


「……私たちは、生徒会では智兄の先輩。敬うべき」


 千景も相変わらず無表情にきつい言葉を浴びせてくる。


 ――あぁ、やめたい。やっぱり辞退したい。


 でも、


「智也! よろしく頼んだぞ」


 聖羅がこんなに喜んでいるんだ。

そんなこと言うのは野暮……だな。


「精一杯、ご奉仕いたしますよ……」


「よし! みんな今日は打ち上げだ! 忙しくて歓迎会もできなかったからな。ファミレス行こう」


「おい待て。これからが本番だぞ」


 俺がそう言っても、こいつらは聞く耳を持たなかった。


 優乃が俺の腕を掴んでひっついてくる。


「まぁまぁ智也くん。今日くらいは大丈夫だよ」


「優乃、近いって」


 優乃の頭をポンと押す。


「あっ……」


 妙に色っぽい声を出すのはやめろ! 頭だぞ!?

こいつも浮かれてんなぁ、と思う。


 大きなため息をついて、俺はみんなに聞こえるように言った。


「しょうがない。行くか――」


「「「「おぉー!」」」」


 こうして俺は、生徒会庶務として正式にこき使われることになった。


 文化祭まで、あまり時間はない。


 ……まあ、こいつらと一緒ならどうにかなるだろ。

大丈夫だ。今の生徒会は強いから。

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